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第2章 公爵令嬢、料理人になりました
15. 【閑話】抜かれないために
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テオドールがマリエットを呼び止めるより少し前。
カミラは危機感を募らせていた。
「昨日入ったばかりの料理人、かなり優秀みたいね」
「作法が完璧って噂のマリエットさんのこと?」
「ええ、そのマリエットさんのことよ。さっきの賄いもマリエットさんの発案と聞いたわ」
「王家の方々の残りよりも美味しくて驚いたけれど、そういう事だったのね」
カミラはあと少しで侍女長になれるという立場まで上り詰めているが、マリエットが優秀だという噂を聞いていると、そう遠くないうちに追い抜かれると思えてしまう。
料理人と侍女では仕事の範囲が違うものの、侍女長が取りまとめる範囲に料理人も含まれる。逆に、料理人であっても侍女長の地位に就くことも出来るため、カミラの危機感は増すばかりだ。
(あの芽は早めに摘まないと、後悔しそうだわ……)
初日から強く当たることで新人から向上心を奪う事を欠かさないカミラだが、その作戦が失敗している現実に焦りを感じている。
だから、カミラはマリエットを追い詰めようと考えた。
(皆を利用して、追い詰める方が楽かしら?)
今はマリエットの良い噂ばかりが流れているが、良くない噂を流せばマリエットの居場所は無くなるはずだ。
幸いにも、カミラの周りにはマリエットを快く思っていない者も居るため、難しいとは感じられない。
そこまで考え、カミラは早速行動に移そうと足を踏み出した。
けれども、マリエットがテオドール王太子に声をかけられているところを目の当たりにし、動きを止める。
王族が使用人に興味を持つのは不興を買った時だというのは、使用人達の間では常識だ。
きっとマリエットも何か問題を起し、咎められているのだろう。
しかし、マリエットは笑顔を浮かべ、危機感の欠片も感じられない。
「……マリエットさん、明日には居ないかもしれないわね」
「カミラさんもそう思いますか? あの状況で笑っているなんて、解雇では済まないかもしれないわ」
「もしそうなれば、面白いことになりそうね」
カミラ達はマリエットから視線を外さず、悦に浸る。
一方のマリエットは相変わらず笑顔を崩さず、テオドールと言葉を交わし続けていた。
そこで違和感を覚えたカミラは場所を移動し、テオドールの表情を観察する。
すると、どういうわけか彼も笑顔を浮かべていたのだ。
「あり得ない……殿下がマリエットなんかを気に入ったというの……?」
「カミラさん。まずはマリエットさんに忠告をして、弱みになりそうなことを徹底的に探しましょう」
「ええ、そうしましょう」
少ししてマリエットとテオドールの会話が終わると、カミラはマリエットに忠告をしに足を向ける。
幸いにもテオドールとの接触を報告させる約束は出来たものの、危機感は消えないまま。
だから、カミラ達はマリエットの居場所を奪うため行動を始めるのだった。
カミラは危機感を募らせていた。
「昨日入ったばかりの料理人、かなり優秀みたいね」
「作法が完璧って噂のマリエットさんのこと?」
「ええ、そのマリエットさんのことよ。さっきの賄いもマリエットさんの発案と聞いたわ」
「王家の方々の残りよりも美味しくて驚いたけれど、そういう事だったのね」
カミラはあと少しで侍女長になれるという立場まで上り詰めているが、マリエットが優秀だという噂を聞いていると、そう遠くないうちに追い抜かれると思えてしまう。
料理人と侍女では仕事の範囲が違うものの、侍女長が取りまとめる範囲に料理人も含まれる。逆に、料理人であっても侍女長の地位に就くことも出来るため、カミラの危機感は増すばかりだ。
(あの芽は早めに摘まないと、後悔しそうだわ……)
初日から強く当たることで新人から向上心を奪う事を欠かさないカミラだが、その作戦が失敗している現実に焦りを感じている。
だから、カミラはマリエットを追い詰めようと考えた。
(皆を利用して、追い詰める方が楽かしら?)
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幸いにも、カミラの周りにはマリエットを快く思っていない者も居るため、難しいとは感じられない。
そこまで考え、カミラは早速行動に移そうと足を踏み出した。
けれども、マリエットがテオドール王太子に声をかけられているところを目の当たりにし、動きを止める。
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きっとマリエットも何か問題を起し、咎められているのだろう。
しかし、マリエットは笑顔を浮かべ、危機感の欠片も感じられない。
「……マリエットさん、明日には居ないかもしれないわね」
「カミラさんもそう思いますか? あの状況で笑っているなんて、解雇では済まないかもしれないわ」
「もしそうなれば、面白いことになりそうね」
カミラ達はマリエットから視線を外さず、悦に浸る。
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「ええ、そうしましょう」
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だから、カミラ達はマリエットの居場所を奪うため行動を始めるのだった。
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