25 / 46
第3章 公爵令嬢、みんなの胃袋を掴みます
25. 美味しさの秘訣④
しおりを挟む
盾を構えながら見守るテオドールのことは気にせず、マリエットは肉の下ごしらえをしていく。
もうすぐ昼食の時間だから、それまでに時間のかかることは終えておきたかった。
「……準備が出来たので、休憩にしましょう。続きは夕食の一時間前から始めますわ」
「分かった。しかし、かなりギリギリに作るのだな。じっくり炒めたり、煮込んだりするものだと思っていた」
「その方が柔らかくなるお肉もありますけれど、今回は火を通しすぎると硬くなってしまいますの」
「なるほど。料理は難しいな。
続きも楽しみにしているよ」
「ありがとうございます」
言葉を交わすと、テオドールはダイニングへと姿を消す。
それと入れ替わりで配膳担当の侍女が姿を見せ、料理長が作っていた昼食を運んでいく。
すると、昼の賄いを作っていたマイクから声をかけられた。
「アンナさんとマリエットさんの賄い、ここに置いておくよ」
「「ありがとうございます」」
料理人は厨房内の端にあるテーブルで食事をとることになっているため、マリエットもそこへ向かう。
侍女に比べると休憩時間の自由は効くものの、王族の食事が終わると洗い物がやってくるため、落ち着いて食べられる時間は今しかない。
「殿下の目があるから、今日は疲れますね……」
「普段通りにお作りするだけだ。マイクはまだまだ修行が必要だな」
「げっ……なんでもないです」
「マリエットさんを見習いなさい。殿下にずっと見られていても、緊張すらしていない。もっと自信を持つんだ」
「マリエットさん、どうすれば自信を保てるんですか?」
「相手を自分と同じ人間だと思うと、少しは気が楽になるのです」
……昼食中も質問攻めに遭う気配がするが、社交界で似たようなことを何度も経験してきたマリエットは慣れているため、特に恐れることはない。
幸いにも質問が繰り返されることはなく、残りの休憩時間は雑談で終わった。
それからは昼食の後片付けに王家に出す夕食の準備の手伝いをこなし、あっという間にテオドールと約束した時間になった。
時間通りに姿を見せたテオドールは盾に身を隠しており、マリエットは苦笑する。
(料理が危険だと言ったから、勘違いされているのね……)
とはいえ、料理を進めていけば誤解は解けるだろう。
そう考えて手を動かしていると、テオドールが口を開いた。
「これは何をしているのだ……?」
「これから煮込んでいくので、その準備ですわ」
さっそくテオドールの前で牛肉とオニオンを軽く炒めていく。
本来は煮込むだけでも十分だが、こうすることで味が引き締まるのだ。
それが済むと、今度はショウユから作ったタレに食材を入れていき、火加減を見ながら煮込み始めた。
「これが煮込むということか?」
「ええ、その通りですわ」
「なるほど。これなら、油跳ねの心配は無さそうだな」
そう口にするテオドールだが、やはり心配しているのは油跳ねではないようで、盾は構えたままだ。
「そんなに心配しなくても、手を出さなければ怪我をすることはありませんわ」
「分かった。しかし、こうして見ているだけでも面白いな」
「ええ。ここからは煮込むだけなので、面白いものも無くなりますわ」
「そうだろうか? 手を加える以上は見るところがあると思う」
(流石の殿下でも、飽きると思うのだけど……)
ここからは、手を使ってすることが殆どないため、テオドールでも退屈な時間になるだろう。
マリエットはそう考えたが、テオドールの視線はフライパンの中に向けられたままだ。
「……焦げたりしないのか?」
「焦げないようにスキルで調整しているので、大丈夫ですわ」
「そうだったのか。君はレシピスキルと料理スキルしか使えないと聞いていたが、火のスキルを隠していたのだな」
「いいえ、隠しておりませんわ。この炎も料理スキルの力ですもの」
「君の料理スキルは特別なのかもしれないな。俺が知っている料理スキルは、包丁が上手くなったり、味を良くすることしか出来ない」
テオドールがそう口にすると、アンナが深々と頷く。
彼女のスキルのことは聞いたことが無いものの、マリエットのスキルとは大きく違うらしい。
とはいえ、アンナが作る料理もとても美味しいため、力の差は無いとマリエットは思っている。
「……私のスキルは手抜きをし易くなっているだけですわ」
「その分、色々なところに拘れているように見える。あの氷も君のスキルで作ったのだろう?」
「ええ。気付いていらしたのですね」
「あれだけ派手に使われたら、誰が見てもスキルだと分かる。氷のスキルを使えるとは思わなかったから、驚いたよ」
「氷も料理スキルの力ですわ」
「何だって……?」
テオドールは相当驚いているのか、間抜けにも口を開けたまま固まってしまった。
公の場では殆ど表情を変えない彼が驚愕する様はとても珍しく、マリエットはそのことに驚く。
(殿下もこんな顔をするのね……)
テオドールの今の表情はとても貴重だから、つい視線を向けてしまう。
けれど記憶に焼き付ける前に、彼はすぐに普段の表情に戻った。
「マリエット嬢、君の料理スキルで他に何が出来るのか教えてもらえないか?」
「フライパンの中の水を操ってかき混ぜたり、汚れを綺麗に落としたり……食中りを防いだり出来ますわ。あとは食材や調味料の量を正確に把握することも出来ます」
「神様が考えている料理とは、とても奥が深いのだろう。俺が知っている料理とは大違いだ」
言葉を交わしている間にもマリエットは火力を調整したり、蓋を開けずに中身を混ぜたりして、味が染み込むように手を加える。
(そろそろお肉の出番ね)
そしてタイミングを見て蓋を開けると、今度は牛肉を入れていく。
肉を煮込むと灰汁が出るものだが、マリエットはスキル全て取り除いているため、目に見えることはない。
マリエットが来てからずっと一緒に料理をしているアンナも、この光景を見るのは初めてで、用意していた灰汁取りをさり気なく片付けた。
「ここまで完璧だと、皆が絶賛するのも納得だ。他に何か工夫していることはあるか?」
「特別なことはしていませんけれど、美味しくなるように心を込めて作っていますわ」
「それが一番効果があるのかもしれないな」
「もし本当にそうなら、すごく嬉しいですわ」
言葉を交わしている間に、レシピに書かれていた時間が迫ってしまう。
だから、味見をしてから火を消し、盛り付けのために食器を並べた。
「完成か?」
「ええ。味見しますか?」
マリエットが一口分スプーンにすくって差し出すと、テオドールは満面の笑みで受取り口に運ぶ。
そして満足そうに何度もうなずくと、こんなことを口にした。
「一食分もらえたりしないか?」
「そうすると、私の分が無くなってしまいますわ」
「……分かった。我慢しよう」
さっきの笑顔は何だったのか、今のテオドールはとても残念そうにしている。
それでも、マリエットは笑顔を崩さずに口を開いた。
「冗談です。少し多めに作ってあるので、半分なら出せますわ」
「ありがとう! マリエット嬢、この恩は一生忘れない」
「大袈裟ですわ」
テオドールの言葉が冗談に聞こえず、つい声を上げてしまう。
気に入ってもらえていることは嬉しいものの、侍女達から向けられる嫉妬の視線を思い出すと素直に喜べない。
けれども、とても美味しそうに今夜の賄い――牛丼を口にするテオドールや使用人達の姿を見ると、不安はどこかへ飛んで行った。
もうすぐ昼食の時間だから、それまでに時間のかかることは終えておきたかった。
「……準備が出来たので、休憩にしましょう。続きは夕食の一時間前から始めますわ」
「分かった。しかし、かなりギリギリに作るのだな。じっくり炒めたり、煮込んだりするものだと思っていた」
「その方が柔らかくなるお肉もありますけれど、今回は火を通しすぎると硬くなってしまいますの」
「なるほど。料理は難しいな。
続きも楽しみにしているよ」
「ありがとうございます」
言葉を交わすと、テオドールはダイニングへと姿を消す。
それと入れ替わりで配膳担当の侍女が姿を見せ、料理長が作っていた昼食を運んでいく。
すると、昼の賄いを作っていたマイクから声をかけられた。
「アンナさんとマリエットさんの賄い、ここに置いておくよ」
「「ありがとうございます」」
料理人は厨房内の端にあるテーブルで食事をとることになっているため、マリエットもそこへ向かう。
侍女に比べると休憩時間の自由は効くものの、王族の食事が終わると洗い物がやってくるため、落ち着いて食べられる時間は今しかない。
「殿下の目があるから、今日は疲れますね……」
「普段通りにお作りするだけだ。マイクはまだまだ修行が必要だな」
「げっ……なんでもないです」
「マリエットさんを見習いなさい。殿下にずっと見られていても、緊張すらしていない。もっと自信を持つんだ」
「マリエットさん、どうすれば自信を保てるんですか?」
「相手を自分と同じ人間だと思うと、少しは気が楽になるのです」
……昼食中も質問攻めに遭う気配がするが、社交界で似たようなことを何度も経験してきたマリエットは慣れているため、特に恐れることはない。
幸いにも質問が繰り返されることはなく、残りの休憩時間は雑談で終わった。
それからは昼食の後片付けに王家に出す夕食の準備の手伝いをこなし、あっという間にテオドールと約束した時間になった。
時間通りに姿を見せたテオドールは盾に身を隠しており、マリエットは苦笑する。
(料理が危険だと言ったから、勘違いされているのね……)
とはいえ、料理を進めていけば誤解は解けるだろう。
そう考えて手を動かしていると、テオドールが口を開いた。
「これは何をしているのだ……?」
「これから煮込んでいくので、その準備ですわ」
さっそくテオドールの前で牛肉とオニオンを軽く炒めていく。
本来は煮込むだけでも十分だが、こうすることで味が引き締まるのだ。
それが済むと、今度はショウユから作ったタレに食材を入れていき、火加減を見ながら煮込み始めた。
「これが煮込むということか?」
「ええ、その通りですわ」
「なるほど。これなら、油跳ねの心配は無さそうだな」
そう口にするテオドールだが、やはり心配しているのは油跳ねではないようで、盾は構えたままだ。
「そんなに心配しなくても、手を出さなければ怪我をすることはありませんわ」
「分かった。しかし、こうして見ているだけでも面白いな」
「ええ。ここからは煮込むだけなので、面白いものも無くなりますわ」
「そうだろうか? 手を加える以上は見るところがあると思う」
(流石の殿下でも、飽きると思うのだけど……)
ここからは、手を使ってすることが殆どないため、テオドールでも退屈な時間になるだろう。
マリエットはそう考えたが、テオドールの視線はフライパンの中に向けられたままだ。
「……焦げたりしないのか?」
「焦げないようにスキルで調整しているので、大丈夫ですわ」
「そうだったのか。君はレシピスキルと料理スキルしか使えないと聞いていたが、火のスキルを隠していたのだな」
「いいえ、隠しておりませんわ。この炎も料理スキルの力ですもの」
「君の料理スキルは特別なのかもしれないな。俺が知っている料理スキルは、包丁が上手くなったり、味を良くすることしか出来ない」
テオドールがそう口にすると、アンナが深々と頷く。
彼女のスキルのことは聞いたことが無いものの、マリエットのスキルとは大きく違うらしい。
とはいえ、アンナが作る料理もとても美味しいため、力の差は無いとマリエットは思っている。
「……私のスキルは手抜きをし易くなっているだけですわ」
「その分、色々なところに拘れているように見える。あの氷も君のスキルで作ったのだろう?」
「ええ。気付いていらしたのですね」
「あれだけ派手に使われたら、誰が見てもスキルだと分かる。氷のスキルを使えるとは思わなかったから、驚いたよ」
「氷も料理スキルの力ですわ」
「何だって……?」
テオドールは相当驚いているのか、間抜けにも口を開けたまま固まってしまった。
公の場では殆ど表情を変えない彼が驚愕する様はとても珍しく、マリエットはそのことに驚く。
(殿下もこんな顔をするのね……)
テオドールの今の表情はとても貴重だから、つい視線を向けてしまう。
けれど記憶に焼き付ける前に、彼はすぐに普段の表情に戻った。
「マリエット嬢、君の料理スキルで他に何が出来るのか教えてもらえないか?」
「フライパンの中の水を操ってかき混ぜたり、汚れを綺麗に落としたり……食中りを防いだり出来ますわ。あとは食材や調味料の量を正確に把握することも出来ます」
「神様が考えている料理とは、とても奥が深いのだろう。俺が知っている料理とは大違いだ」
言葉を交わしている間にもマリエットは火力を調整したり、蓋を開けずに中身を混ぜたりして、味が染み込むように手を加える。
(そろそろお肉の出番ね)
そしてタイミングを見て蓋を開けると、今度は牛肉を入れていく。
肉を煮込むと灰汁が出るものだが、マリエットはスキル全て取り除いているため、目に見えることはない。
マリエットが来てからずっと一緒に料理をしているアンナも、この光景を見るのは初めてで、用意していた灰汁取りをさり気なく片付けた。
「ここまで完璧だと、皆が絶賛するのも納得だ。他に何か工夫していることはあるか?」
「特別なことはしていませんけれど、美味しくなるように心を込めて作っていますわ」
「それが一番効果があるのかもしれないな」
「もし本当にそうなら、すごく嬉しいですわ」
言葉を交わしている間に、レシピに書かれていた時間が迫ってしまう。
だから、味見をしてから火を消し、盛り付けのために食器を並べた。
「完成か?」
「ええ。味見しますか?」
マリエットが一口分スプーンにすくって差し出すと、テオドールは満面の笑みで受取り口に運ぶ。
そして満足そうに何度もうなずくと、こんなことを口にした。
「一食分もらえたりしないか?」
「そうすると、私の分が無くなってしまいますわ」
「……分かった。我慢しよう」
さっきの笑顔は何だったのか、今のテオドールはとても残念そうにしている。
それでも、マリエットは笑顔を崩さずに口を開いた。
「冗談です。少し多めに作ってあるので、半分なら出せますわ」
「ありがとう! マリエット嬢、この恩は一生忘れない」
「大袈裟ですわ」
テオドールの言葉が冗談に聞こえず、つい声を上げてしまう。
気に入ってもらえていることは嬉しいものの、侍女達から向けられる嫉妬の視線を思い出すと素直に喜べない。
けれども、とても美味しそうに今夜の賄い――牛丼を口にするテオドールや使用人達の姿を見ると、不安はどこかへ飛んで行った。
495
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
妹を選んで婚約破棄した婚約者は、平民になる現実を理解していなかったようです
藤原遊
恋愛
跡継ぎとして育てられた私には、将来を約束された婚約者がいた。
――けれど彼は、私ではなく「妹」を選んだ。
妹は父の愛人の子。
身分も立場も分かったうえでの選択だと思っていたのに、
彼はどうやら、何も理解していなかったらしい。
婚約を破棄し、妹と結ばれた彼は、
当然のように貴族の立場を失い、平民として生きることになる。
一方で、妹は覚悟を決めて現実に向き合っていく。
だが彼だけが、最後まで「元に戻れる」と信じ続けていた。
これは、誰かが罰した物語ではない。
ただ、選んだ道の先にあった現実の話。
覚悟のなかった婚約者が、
自分の選択と向き合うまでを描いた、静かなざまぁ物語。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる