天職を見つけたので毎日が幸せです!

水空 葵

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第4章 公爵令嬢、新しい役目を手にします

37. 料理の効果

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「お嬢様、休日はしっかり休んでください。このままだと身体が持ちません」
「料理が楽しくて、つい……。味が染み込むのを待っている間はしっかり休むわ」

 侍女に咎められ、マリエットはそう口にする。
 けれど侍女は満足していない様子だ。

「分かりました。では、明日はしっかり一日休んで頂きます」
「……そう、分かったわ」
「今日のところは、マッサージで和らげましょう。短時間ですので効果が出るかは分かりかねますが……」

 マリエットは明日も料理を作ろうと思っていたが、侍女は何としてでも止めたいらしい。
 とはいえ料理を嫌がられている様子は無く、ただマリエットの身体を心配しているように見える。

「しなくても私は大丈夫よ?」
「今は大丈夫でも、疲労をそのままにしていると後から不調が出るものです。私の回復スキルで治せる内に、しっかり疲れを取ってください」
「分かったわ」

 侍女の言葉に頷き、準備が整っているベッドに横になった。



 それからしばらくして。マッサージが終わり、侍女の手が離れた。
 マリエットは立ち上がると、身体が軽くなったように感じる。

 普通のマッサージは受けたことがないから分からないものの、きっと今のように身体が軽くなっているのは回復スキルのお陰だろう。

「――これで終わりです。お身体、軽くなりましたか?」
「ええ。本当に疲れていたのね……」

 ちなみに、回復スキルと言っても、中身は人によって異なる。
 彼女の回復スキルは疲れを取り除くタイプだが、人によっては怪我を治す回復スキルや解毒する回復スキルの使い手の存在もマリエットは知っていた。

「左様でございます。私の回復スキルでは疲れ具合も分かるので、次のお休みの時も戻ってきていただけますと幸いです」
「ありがとう。予定が入らなければ、そうするわ」

 そんな言葉を交わすと、マリエットは厨房に足を向ける。
 すると侍女たちも後を追ってきて、厨房の外からマリエットの様子を伺い始めた。

「……何かあったのかしら?」
「お嬢様が何を作られているのか気になっているだけですので、お気になさらないでください」
「そう、分かったわ」

 この光景はいつものことだから、マリエットは気にせず料理の続きを始める。
 すると、回復スキルを使える侍女がこんな言葉を口にした。

「お嬢様の料理スキルからは私の回復スキルに似たものを感じます。一体どうなっているのでしょうか?」
「そうかしら? 私の料理を食べても疲れが和らぐという話は聞いたことが無いわ」
「もしかしたら……病を治すという効果かもしれません」

 隣の侍女は何か思い当たる節があるようで、恐る恐る口にする。
 すると、マリエットは納得するように頷いた。

「そういえば、私が料理を始めてから誰も風邪をひかなくなった気がするわ」
「言われてみれば、我々も体調を崩さなくなりました。まさか、本当にお嬢様のスキルに回復の効果が……?」
「あると考えた方が良さそうね」
「お嬢様が王宮仕えになられた今、油断すればすぐに風邪をひきそうです」

 料理人の言葉に、マリエットは不安そうな表情を浮かべる。
 ずっと一緒に暮らしてきた家族はもちろん、使用人達だって家族のような存在だ。そんな彼らにも、ずっと元気でいて欲しいと思っているため、不安を感じずにはいられない。

「毎週、何かしら作ることにするわ」
「ですが、それではお嬢様が身体を壊されてしまいます」
「少しでも手を加えれば料理だと思うの。だから、食材を温めるだけでも効果が出るはずよ」
「……なるほど。つまり、味付けだけお嬢様にお任せしても、回復の効果が出るかもしれないということですね」
「あくまでも私の予想だから、あまり期待しないで欲しいわ」
「畏まりました」

 言葉を交わしながら、マリエットは味付けを終えた肉を油の中に入れていく。
 すると独特な音が響き、少し遅れてだれかのお腹が鳴った。
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