16 / 39
本編
16. どちらを選んでも
しおりを挟む
会談が終わり、参加していた公爵様達が部屋を後にしていく。
けれど、私はレオン殿下とアルト様からお願いされてここに残っていた。
「私に直接したいお話について、お願いしてもよろしいですか?」
少し穏やかな空気が流れ出した時を見計らって、質問を投げかける私。
すると、アルト様が「他言はしないで欲しい」と前置きしてから、こんなことを口にした。
「聞いた話から推測しただけだが……アリス嬢は貴女がレオン殿下との関係を得ようとしていると思わされているらしい。
殿下以外の誰かと貴女が仲を深めれば、多少は気持ちが楽になるだろうと思うのだが、どうだ?」
「もちろん強制するつもりはないから、よく考えてから答えを出して欲しい」
アルト様の言葉に続けて、レオン様がそんなことを付け加える。
真意はわからないけれど、会談の場で提案されなかったのは、私に対して圧力がかからないようにという配慮の結果に思えた。
アルト様の提案した方法は確かに有効かもしれないけれど、私自身の評判のことを考えると飲み込みたくはなかった。
けれど、セレスティア様に目をつけられている今の状況を考えると、早いうちにアリスと共に行動できた方が良いというのも分かっている。
私一人なら家格の問題で抵抗もできないけれど、アリスがいれば立場が逆転する。
正直に言って、すごく難しい提案なのよね……。
「確かにアルト様のおっしゃる通りだとは思います。ですが、私は婚約破棄されたばかりの身です。
これでは良くない噂を立てられてしまいますわ」
「そのことだが、政略によるものだと偽れば噂は抑え込めるはずだ。
常識の持ち主なら、グレン殿がソフィアに次の婚約者を宛てがわない方がおかしいと考えるからな」
私が不安を口にすると、殿下からそんな言葉が返された。
確かに、お父様が私に次の婚約者を……と考えていても不思議ではない。
このまま何もしなかったら、私が行き遅れになってしまうから。
そのリスクを避けるのは、貴族なら当然の行いだ。
「そうですわね……。ですが、学院の中での居場所が無くなってしまいますわ」
「例外はあるが、あの大馬鹿者達……いや、学院に通う者達からの評価を気にしているのか?」
そんな失礼なことを口にするとアルト様。
彼からの問いかけに、私は少しだけ目を伏せながら口を開いた。
「学院の方々からの評価など社交界では意味を成さないことは存じておりますわ。
ですが……好奇の視線に晒されるのは避けたいのです」
それに、他の問題もある。
私の知る限り、婚約者役をしてくれそうな方はいない。
だから、そもそもが無理な話なのよね。
「それに、婚約者役になってくれるような方はいませんから……」
「目の前にいると思うんだけど……アルトとは関わりたくないかな?」
無理です……と続けようとしたのだけど、殿下に遮られてしまった。
「いえ、そういう訳では……。
アルト様は女性がお嫌いと聞いていたのですけど……」
「ああ、確かに嫌いだよ」
はっきりと口にするとアルト様。
噂は本当だったのね……。
私がそう思ったていると、彼はこんな言葉を続けた。
「宰相の息子の婚約者という立場欲しさに色仕掛けしてくるような女性はね。
顔が良いからって理由で迫ってこられたこともあったな。
あとは……」
そこで語られたのは、耳を塞ぎたくなるような酷い状況ばかりだった。
殿下が頷いているから、どれも事実に違いないわね……。
アルト様が女性嫌いになるのも理解できた。
「そんなことがありましたのね….。
それでは、私の婚約者役もお辛いと思うのですけれど……」
「貴女なら適度な距離を置いてくれると信じているから、大丈夫だ。それに、多少の接触くらいは問題ない。
一応これでも宰相の息子だ。演技には自信があるぞ?」
そこまで言われれば、私に断るという選択肢は無かった。
悪意は籠もってないはずなのに、アルト様の笑顔が怖かった。
けれど、私はレオン殿下とアルト様からお願いされてここに残っていた。
「私に直接したいお話について、お願いしてもよろしいですか?」
少し穏やかな空気が流れ出した時を見計らって、質問を投げかける私。
すると、アルト様が「他言はしないで欲しい」と前置きしてから、こんなことを口にした。
「聞いた話から推測しただけだが……アリス嬢は貴女がレオン殿下との関係を得ようとしていると思わされているらしい。
殿下以外の誰かと貴女が仲を深めれば、多少は気持ちが楽になるだろうと思うのだが、どうだ?」
「もちろん強制するつもりはないから、よく考えてから答えを出して欲しい」
アルト様の言葉に続けて、レオン様がそんなことを付け加える。
真意はわからないけれど、会談の場で提案されなかったのは、私に対して圧力がかからないようにという配慮の結果に思えた。
アルト様の提案した方法は確かに有効かもしれないけれど、私自身の評判のことを考えると飲み込みたくはなかった。
けれど、セレスティア様に目をつけられている今の状況を考えると、早いうちにアリスと共に行動できた方が良いというのも分かっている。
私一人なら家格の問題で抵抗もできないけれど、アリスがいれば立場が逆転する。
正直に言って、すごく難しい提案なのよね……。
「確かにアルト様のおっしゃる通りだとは思います。ですが、私は婚約破棄されたばかりの身です。
これでは良くない噂を立てられてしまいますわ」
「そのことだが、政略によるものだと偽れば噂は抑え込めるはずだ。
常識の持ち主なら、グレン殿がソフィアに次の婚約者を宛てがわない方がおかしいと考えるからな」
私が不安を口にすると、殿下からそんな言葉が返された。
確かに、お父様が私に次の婚約者を……と考えていても不思議ではない。
このまま何もしなかったら、私が行き遅れになってしまうから。
そのリスクを避けるのは、貴族なら当然の行いだ。
「そうですわね……。ですが、学院の中での居場所が無くなってしまいますわ」
「例外はあるが、あの大馬鹿者達……いや、学院に通う者達からの評価を気にしているのか?」
そんな失礼なことを口にするとアルト様。
彼からの問いかけに、私は少しだけ目を伏せながら口を開いた。
「学院の方々からの評価など社交界では意味を成さないことは存じておりますわ。
ですが……好奇の視線に晒されるのは避けたいのです」
それに、他の問題もある。
私の知る限り、婚約者役をしてくれそうな方はいない。
だから、そもそもが無理な話なのよね。
「それに、婚約者役になってくれるような方はいませんから……」
「目の前にいると思うんだけど……アルトとは関わりたくないかな?」
無理です……と続けようとしたのだけど、殿下に遮られてしまった。
「いえ、そういう訳では……。
アルト様は女性がお嫌いと聞いていたのですけど……」
「ああ、確かに嫌いだよ」
はっきりと口にするとアルト様。
噂は本当だったのね……。
私がそう思ったていると、彼はこんな言葉を続けた。
「宰相の息子の婚約者という立場欲しさに色仕掛けしてくるような女性はね。
顔が良いからって理由で迫ってこられたこともあったな。
あとは……」
そこで語られたのは、耳を塞ぎたくなるような酷い状況ばかりだった。
殿下が頷いているから、どれも事実に違いないわね……。
アルト様が女性嫌いになるのも理解できた。
「そんなことがありましたのね….。
それでは、私の婚約者役もお辛いと思うのですけれど……」
「貴女なら適度な距離を置いてくれると信じているから、大丈夫だ。それに、多少の接触くらいは問題ない。
一応これでも宰相の息子だ。演技には自信があるぞ?」
そこまで言われれば、私に断るという選択肢は無かった。
悪意は籠もってないはずなのに、アルト様の笑顔が怖かった。
225
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された令嬢ですが、王国は私抜きでは立てなかったようですね』
鷹 綾
恋愛
「愛しているのは彼女だ」
王太子ロネスにそう告げられ、婚約を破棄された侯爵令嬢エルゼリア・クローヴェル。
感情をぶつけることも、復讐を誓うこともなく、
彼女はただ――王宮を去った。
しかしその直後から、王国は静かに崩れ始める。
外交は滞り、判断は遅れ、市場は揺れ、
かつて「問題なく回っていた」はずの政務が、次々と行き詰まっていった。
一方、エルゼリアは帝国で新たな立場を得ていた。
帝国宰相ハインリヒ・ヴォルフの隣で、
彼女は再び“判断する側”として歩み始める。
やがて明らかになるのは、
王国が失ったのは「婚約者」ではなく、
判断を引き継ぐ仕組みそのものだったという事実。
謝罪も、復縁も、感情的なざまあもない。
それでも――
選ばれ、認められ、引き継がれていくのは、誰なのか。
これは、
捨てられた令嬢が声を荒げることなく、
世界のほうが彼女を必要としてしまった物語。
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
あなたの絶望のカウントダウン
nanahi
恋愛
親同士の密約によりローラン王国の王太子に嫁いだクラウディア。
王太子は密約の内容を知らされないまま、妃のクラウディアを冷遇する。
しかも男爵令嬢ダイアナをそばに置き、面倒な公務はいつもクラウディアに押しつけていた。
ついにダイアナにそそのかされた王太子は、ある日クラウディアに離縁を突きつける。
「本当にいいのですね?」
クラウディアは暗い目で王太子に告げる。
「これからあなたの絶望のカウントダウンが始まりますわ」
君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。
みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。
マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。
そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。
※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓
嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」
セラフィーヌの幸せ結婚 ~結婚したら池に入ることになりました~
れもんぴーる
恋愛
貧乏子爵家のセラフィーヌは侯爵家嫡男のガエルに望まれて結婚した。
しかしその結婚生活は幸せなものではなかった。
ガエルは父に反対されている恋人の隠れ蓑としてセラフィーヌと結婚したのだ。
ある日ガエルの愛人に大切にしていたブローチを池に投げ込まれてしまうが、見ていた使用人たちは笑うだけで拾おうとしなかった。
セラフィーヌは、覚悟を決めて池に足を踏み入れた。
それをガエルの父が目撃していたのをきっかけに、セラフィーヌの人生は変わっていく。
*前半シリアス、後半コミカルっぽいです。
*感想欄で所々ネタバレしてしまいました。
感想欄からご覧になる方はご注意くださいませm(__)m
*他サイトでも投稿予定です
次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛
Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。
全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる