10年もあなたに尽くしたのに婚約破棄ですか?

水空 葵

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本編

17. 後ろ盾があるから

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 翌日。
 お昼休みに入ってから計画は始まった。

 午前中の講義を終えてアルト様との待ち合わせ場所に向かう私。
 誰かに後をつけられている気がするけれど、気にしないで足を進める。

 そして待ち合わせ場所が見えるようになると、視線の先には既にアルト様の姿があった。

「お待たせしてしまって申し訳ないですわ」
「俺も今来たところだから気にしなくて良い」

 当たり障りの無い会話を交わし、食堂へと向かう私。
 一瞬だけ後ろを振り返ってみると、炎のような赤い色の髪が遅れて角に隠れるのが見えた。

 私の後をつけているのはアリスだったのね……。

 私が殿下を奪おうとしていると、本当に思い込まされている影響かしら?

「何かあったか?」
「いえ、気のせいでしたわ」

 アリスが見ているならと、私は笑顔を浮かべながら言葉を交わす。

 楽しそうにしているとアピールするのにはちょうど良いから。

「楽しそうだな?」
「これも演技ですわ」
「なるほど、天才令嬢の二つ名は伊達では無いということか。俺も負けていられないな」

 どうやら、私の笑顔はアルト様の競争心に火をつけてしまったらしい。
 彼は眩しい笑顔を浮かべ、それでいて楽しそうにしている雰囲気を纏い始めた。

 これが次期宰相様の力なのね。恐ろしいわ……。
 


 私が関心していると、計画を考えている時から心配していたことが早速起きてしまった。

「ソフィア様、婚約破棄されたばかりなのにもうアルト様を狙っているのね」
「アルト様って、男色の噂があるお方よね? そんな方に気に入られようだなんて、余程頭が足りないとしか思えないわ」

 ……私たちに向けられる好奇の視線の数々。
 わざとらしく私たちに聞こえるように、陰口も言われている。

 けれど、ほとんどは私を非難するものばかり。

「まったく、揃いも揃って……」
「同感ですわ……」

 アルト様の言葉に頷く私。
 今はアルト様が味方として隣にいるから、怯えたりはしない。

「ですが、聞いていて気分の良いものではありませんわ……」
「そうだろうな。この俺ですら怒りを感じているくらいだ」

 すっかり笑顔を浮かべる気分ではなくなって、表情を消す私。
 アルト様は笑顔を崩してはいないけれど、目は全く笑っていなかった。


 そんな状況でカフェテリアに入り、いつもの席から離れている壁際の席に座る私達。
 今日は向かい合ったりはせず、私もアルト様も壁に背中を向ける形で席についている。

「この方が誰かが手を出そうとしてきても、すぐに対応出来るからな。
 それに、視線を向けていれば陰口も言いにくくなる」
「背中を向けていても視線は感じますものね……」

 アルト様の言っていた通り、耳に入る陰口の数はかなり減っている。
 けれど、そんな状況が気に入らない人がいた。

「貴女、婚約破棄されたばかりの身で、今度はアルト様を我が物にしようとしますのね? 立場をわきまえた方が良いですわよ?」

 また、セレスティア様だった。
 私なら何も言い返さないと思っての行動だと思うけれど、今は違うわ。

「ええ、私だけの考えでしたら、このような状況は避けるべきだと思っていますわ。
 ですが、アルト様からのお誘いは断れませんの。私のような家格の低い立場では、断れば無礼になってしまいますから。
 セレスティア様ならご存じだとは思いますけれど……」

 今の私には王家とカーヴレイ家の後ろ盾がある。
 だから、セレスティア様の言いなりになんてならないのよ。

「そ、そういう事情でしたのね。念のため忠告しておきますわ。
 適度に距離を置かなかったら、最初からアルト様を狙っていたと思われますわよ」

 私の反撃が気に入らなかったのか、口調は穏やかに、けれども怒りのこもった視線を私に向けながら。
 セレスティア様はそんなことを口にしてから去っていった。

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