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第三章 樹海攻略 建国編

19 樹海村の戦い

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 ついに敵との戦闘が始まり、敵軍の兵士とこちら側の戦士がぶつかり合った。

 それと同時に敵軍の隊長ジャックがこちらへ突っ込んでくる。

「ぶははっ! 死ねぇ!」

 ジャックは僕に接近すると手にした大剣をブンと振り下ろした。

 以前リッチ戦で拾った鉄の剣でその攻撃を防ぐ。ミスリルの剣が割れちゃったからこれしか手元にないのだ。

 続けてジャックは「おらおらぁ!」と剣を振り回し攻撃を仕掛けてくる。

 僕はそれを【剣術】スキルで冷静に受け流しながら、少し心配な仲間達の戦いを横目で見る。

 サスケの方は相手と剣で撃ち合っているにもかかわらずなぜか僕と目が合い、にっこり微笑んでくる。いつも通りだからスルーでよし。

 デメテルや従者達はずいぶん強くなったらしい。
 デメテルはレイピアで軽々と複数の敵の攻撃を捌き、連続突きをお見舞いしている。マリナとソフィアは【身体強化】を発動して敵の攻撃を回避し、エヴァは後方から風魔法を繰り出して敵兵を切り刻む。

 小鬼族ゴブリン森狼族フォレストウルフは機敏さでヒットエンドランを繰り返し、大鬼族オーガ豚人族オークは力で盾を構える敵を吹き飛ばす。

 妖精族フェアリー樹人族トレントは樹海という環境を最大限に利用し、スキルで植物を操作して相手を捕縛したり吊し上げたりしている。

 青竜ブルードラゴンは自分が狙われていると知り初めは怯えた様子だったが、「えいっ!」とか言って口から火炎のブレスを吐き出し、敵を丸焦げにしていた。

 ふむ、圧倒的だ。

 相手には神官がいて必死で回復魔法を掛けているが追いつかないぐらい負傷者が出ている。ほぼ半数が戦闘不能ではないだろうか。

 だがこちら側も無傷というわけではない。小鬼族ゴブリンで言えば、剛小鬼ホブゴブリンに進化している個体は問題ないようだが、そうでない者は傷ついているものもいる。

 そんな怪我も最近妖精族フェアリーのイルモが開発を進めている回復薬ポーションを使用し治療できてはいるが、味方がダメージを受けるのは心穏やかでない。

「おいてめぇ、俺様との戦闘中にキョロキョロしやがってずいぶん余裕じゃねえか? 舐めんじゃねぇ!」

 そう怒鳴ると、ジャックは逆上した様子でさらに力の篭った攻撃を繰り出し始めた。僕はその攻撃を集中して見極め捌いていく。

「……そうかぁ。なんでこんなに俺の攻撃が当たらねぇんだと思ったがその剣、実は業物だな?」
「えっこれ? いや、この前拾ったただの鉄の剣だけど?」
「嘘つくんじゃねぇ! タネが分かっちまえばお前はもう終わりだ! 【窃盗スティール】!」

 ジャックがそう叫ぶと、突然僕の手から剣が消えジャックの手に現れた。

「なに!?」

 僕の驚きにジャックはニヤリと笑い、奪ったその剣を振り下ろす。それを防ごうと咄嗟に腕を出した。

 ドサッ。

 僕の腕は剣の威力に耐えきれず、スパッと綺麗に斬られて地面に落ちた。

「ぶははははっ、やっぱりなぁ! ざまぁみろ! 俺を舐めてるからこうなるんだ! これでお前は手も足も出せねぇだろ。屍人騎士ゾンビナイトみてぇにじっくりいたぶってやる!」

 そう言えばこいつ、僕の配下の屍人騎士ゾンビナイトからも武器を奪ってバラバラにしたらしいな。

 消滅されてさえいなければ屍人騎士ゾンビナイトは復活できるから我慢してたけど、思い出したら腹が立ってきた。仲間は大丈夫そうだしそろそろ反撃するか。

 僕は落ちていた腕を拾い、

「【死者修復リペアアンデッド】!」

 とスキルを発動する。瞬く間に傷口が修復され腕が元通りくっついた。またスキルの効果は戦場全体に及び、僕の眷属となった者達の傷も修復される。

「続けて仲間全体に【小回復ヒール】!」

 【気配察知】で仲間の位置を把握し、それをめがけて魔法を発動させる。酷い怪我の者はいないので皆すぐに全快した。

「な、なんだと!? アンデッドが回復魔法!?」
「珍しいか? 驚いているところ悪いがお返しだ」

 僕は【収納】から再び鉄の剣を出すと、地面を蹴って相手に接近。剣を上から振り下ろしてジャックの腕を斬り落とした。

「は? ……ぎゃああああ!? 俺の腕がぁ!?」

 ジャックは驚愕して叫ぶと、必死で僕から距離を取り仲間の神官を呼びつける。

「か、回復魔法だぁ! 早く治せぇえ!」
「「は、はい!」」

 神官がジャックの元に集まり回復魔法を掛ける。

 どうやら傷口はふさいだらしく血は止まっている。でも僕みたいにもう一回くっつけるとかはできないらしい。

「おいお前、それじゃあもう戦えないだろ? 今なら見逃してやるから早く帰ってその腕を治せ」

 僕がそう言うとジャックは、

「てめぇ!? 調子に乗るんじゃねぇよ! まさか業物の剣をもう一本持っているとは汚ねえ野郎だ。 だが俺にはスキルがある。今度こそぶっ殺してやらぁ!」

 と叫び僕に突進してきた。

 先ほどと同様に剣を構えて相手の攻撃を受けようとすると、

「【窃盗スティール】!」

 とジャックは再び僕の剣を奪い斬りつけてくる。

 今度は【物理障壁】を掛けた腕でその攻撃を受けると、ガギィンという金属音が鳴り響き剣を弾き返した。

「げぇ!?」
「もう面倒だから武器は良いや」

 指をパチンと鳴らして【重力球グラビティボール】を発動する。

 ジャックの頭上に巨大な暗黒の球が生じ、地面に向けて彼を押しつぶす。

 バキッ! ボキッ!

「ぎゃああああああ!?」

 地面と重力球グラビティボールに挟まれたジャックは身動きが出来ない。

「さて、これからどうしようかな」
「わ、分かったぁ! 降参だ! 降参する!」
「え、降参?」
「降参だ! 手を引くから許してくれぇ!」
「いやいや、許さないよ?」
「ひぃ!? 頼む! もう二度とこんなことはしない! 一生のお願いだぁ!」
「ほんとに?」
「本当だ!」

 えー、どうしよう。

 こいつはどう考えても悪人だしここで始末した方が良い気がする。

 ただそうするとネアポレスに警告を伝える人間が一人減っちゃうんだよな。それなりの地位の人物が、僕達に手を出すのは危険だとネアポレスに伝えると説得力があると思う。

 他の兵士達にも同じように僕達の強さを伝えさせれば、さらにその効果が上がるはずだ。すでに兵士の半分以上は息がないみたいだけど、これだけ残ってれば十分だろ。

 逆に全員を始末しちゃったらネアポレスに何も伝わらないからまた軍を派遣される可能性の方が高い。

 それに、そもそも命乞いをする相手を殺すのはどうかと思うしな。

 僕は指をパチンと弾いて魔法を解除し、

「良いだろう。お前は必ずネアポレスにこう伝えろ。僕達に手を出すな。これ以上手を出すなら次はないぞ。とな」

 と警告を伝える。

「わ、分かった! 必ず伝える! 恩にきる!」

 ジャックはそう言うと急いで後退り、

「野郎ども! 撤退だぁ!」

 と叫ぶと先陣を切って逃げ出した。

「隊長!? 待ってくださいよ!?」

 兵士達もそれに続き、全力でその場から逃げていく。


「みんな、お疲れ様! 良く頑張ったね!」
「「「はっ!」」」

 仲間達は完全な勝利に満足し、お互いの健闘を称え合っている。

 みんな無事で良かった。

 そんなことを思っていると、先ほどジャックに殴られ怪我を負っていたアラスターがおもむろに立ち上がり、僕に向かって歩き出した。
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