ネオン街の牛乳屋さん

ハリネズミ

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おまけのモリアさん

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『牛乳屋さん』が摘発される前の話になります。
*****


ある日、道端で死にそうになっている地球人を拾った。
見ると外傷もなく病気という訳でもなさそうで、疲労と空腹のせいだと分かった。
あの日の僕と同じ―――。


*****
僕は地球人から見たら宇宙人だ。
遠い遠いところに僕の星はある。地球では存在すら知られていない星だ。
母星では地球は人気で、地球について書かれた本も沢山あった。
僕は地球に憧れて勉強をしていくうちに実際に地球へ行ってみたいと思うようになったんだ。
それで幸運にも地球へ降りるチャンスを得る事ができて、単身地球へ乗り込んだんだけど―――。
地球に着陸する際、エンジントラブルで宇宙船は使い物にならなくなってしまった。
しばらくは食料の備蓄もあったので困らなかったけど、食料を補給する事ができなくて僕は空腹に襲われた。
ミルク食べる物を探しにいかなくては…。

空腹で朦朧とする中、ふらふらと彷徨い偶然あの店にたどり着いた。
ギラギラと光りが溢れる街に一際目立つ看板。『牛乳屋さん』
オーナーに「ミルクを飲ませて欲しい」と頼んだから、「じゃあここで働いてみるか?」と言われた。そんな感じで僕は『牛乳屋さん』で働き始めた。


地球については母星で勉強していたので少しは知識があった。
地球では何をするにもお金が必要で、この『牛乳屋さん』はやってくるお客からミルクを貰えて、その上お金まで貰えるという素晴らしい店だという。
なんて地球人は気前がいいんだ。


僕はパートナーを持っていなかったからうまくしゃべる事もできないし、表情も作れない。この星の人たちとは人体的構造が違うのだ。この星の人とパートナーになれば感情が繋がりもっと表情豊かになれる。
憧れた地球人のようになれるのだ。

だけど、この星で僕がパートナーを持つという事は相手にとってとてもリスキーな事を強いる事になるのが分かっていたから、パートナーを持つ事は諦めていた。
パートナーを持たなくてもこうやってミルクを飲んで生きていける。
それでいいって僕は思っていたんだ。人形のままの自分でも。

―――――彼に会うまでは。



*****
彼の名前は里見さとみみかさ、というらしい。
表情がくるくる変わる可愛らしい存在だ。
時々じーっと僕の事を見る瞳がキラキラとしていて抱きしめたくなる。
だけど僕は人形だから僕のそんな気持ちはみかさには少しも伝わっていない。
それに伝えてはいけないと思っている。

だけどみかさの『乳しぼり』をマジックミラー越しに見ると、どうしようもなく嫌な気分になるんだ。

みかさを独り占めしたい――――。
他のミルクを飲まないで欲しい…!

『牛乳屋さん』に連れてきたのは僕なのに、誘ったのは僕なのに僕じゃない誰かのミルクを飲む姿に感情が波立つ。

僕のこの想いはみかさには伝えてはいけない。
大好きだからこそみかさをこちら側に引っ張り込む事なんてできないんだ。

そうして僕はみかさへの想いを忘れたフリをしていたのに『摘発』の日、みかさの思いもよらない提案告白に僕は乗ってしまった。
僕のみかさへの想いを再び思い出してしまったんだ。


*****
僕たちは無事『結婚』をしてみかさは僕の腕の中で静かに寝息をたてて眠っている。
諦めていた存在が今、僕の手の中にいる。

僕だけの愛おしい存在にそっとキスを贈った。



-終-
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