迷惑なΩ

ハリネズミ

文字の大きさ
6 / 7

俺は愛されるΩ

しおりを挟む
俺たちは獣のように激しく求めあい絡み合った。
ずっとずっと求めていたたっくんの温もり。優しい香り。
初めて嗅ぐたっくんのフェロモン。αは生涯のうちただ一度だけ、番う時だけフェロモンを出す。たっくんが本気なんだと分かる。
嬉しくてうれしくてたまらない。

執拗に攻められ何度もイかされて俺は幸せの絶頂の中にいた。
激しく揺さぶられ脳は甘く痺れて難しい事は考えられなくて、ただたっくんが欲しくてほしくてたまらなかった。
強請るように足を絡めて腰を揺らす。
待ち望んだたっくんの精を最奥に受け、すぐさまがぶりと項を噛まれた。
牙が食い込む痛みさえも甘く感じた。

その瞬間、俺たちの香りがかけ合わさっていく。螺旋状の光の糸が絡み合って別の形を作り出し、弾けた。
降り注ぐ光の粒子と共にふわりと広がるのは甘く爽やかな香り。
これが二人だけの香り。

俺は胸いっぱいに香りを吸い込み多幸感に包まれた。

好き。
幸せ。

そんな気持ちがぽこぽこと生れて、心がどんどんどんどん温かいもので満たされていく。

番とは相手を好きだと思う事に理由なんかなくて、ただただ相手を求め一緒にいられる事にこの上ない幸せを感じるもの。


*****
無事に大好きなたっくんと番になれて幸せだけど、心に残る小さな棘。

「ねぇ…何で嘘ついた…?」

ごくりと息を飲む音がした。
そして意を決したように真剣な顔になって、話し始めた。
頭がぽやぽやしていて今の状態の俺には難しい事は分からない。だけどちゃんと伝わるようにゆっくりと。

「俺たち……相性が良すぎたんだ…。まだ二次性も分からないようなちびの頃から朱の香りを嗅ぎ取ってた…。それに普通発情期がきてもさっきみたいに性的に興奮状態には絶対にならないはずなんだ。なのに俺はちびだった朱の傍にいるだけでおかしくなっちゃって…両親が心配して子どものうちは朱に会う事を禁じたんだ。まだ幼かった俺には親に従うしかなくて、だから海外に行くなんて嘘言って朱の前から姿を消した。大きくなったら約束通り迎えに行くつもりだったけど、俺と離れてる間に誰かに取られたらと思うと気が気じゃなくて、朱と絶対に接触しないって約束で同じ学校で遠くから見守る事を許してもらったんだ。遠くにいても香ってくる朱の香りに身も心も震えた。すぐにでも番ってしまいたかった…。だけど朱を壊してしまいそうで怖くて―――必死に我慢したんだ。―――あと、芦崎からもそれとなく様子訊いたりしてた。ただ、あいつ隠し事できるタイプじゃないから俺たちの事は内緒だったけどな。勝手な話だけど――――いつも朱の傍にいられるあいつの事が―――羨ましかった」

たっくんの話は俺の事が好きですきでたまらないって聞こえる。
本当に?
だって俺のフェロモンは――――ラフレシア。
興奮だとか他のαに奪われるとか――。

この香りのせいでずっとたっくんの事を信じ切る事ができなかった。
番になった今でも……。

「俺のフェロモン…ラフレシア……だったんだよ?」

「俺には甘く誘う愛しい香りだ。あんなそそられる香り朱以外に感じた事なんてない。大好きだったよ。これからは二人の新しい香りになって嗅ぐことはできないけれど、俺は覚えてる。ずっとずっと死ぬまで覚えてるから。―――海外に行くだなんて嘘ついてごめん。寂しい思いをさせてごめん。これからはずっと一緒にいる。朱緒、心から愛してるよ」

たっくんは愛おしそうに微笑んで優しいキスをくれた。

全部ぜんぶたっくんのせいじゃないのに。
たっくんだって両親に言われてどうしようもなかったんだ。
たっくんも俺と同じように辛かったんだ。
俺たちの絆は本物だった。

胸が熱い。
あんなに嫌だったラフレシアの香りもたっくんは好きだって言ってくれた。
死ぬまで覚えててくれるって……。
不安で不安でたまらなかったのに、たっくんの言葉で心に刺さったままだった棘がポロリと取れて消えて行った。

今なら好きだって胸をはって言える。ラフレシア、俺のフェロモン香り
もう二度と香る事のないフェロモン香りに愛しさと少しの寂しさを覚えた。


たっくんの胸に顔を埋めすりすりと頬ずりをするとたっくんはくすぐったそうに笑いながら抱きしめる腕に力を込めた。
二人だけの香りが優しく俺たちを包み込む。

これからはずーっと一緒だよ。

『迷惑なΩ』だった俺はこの日からたっくんだけの『愛されるΩ』になった。



-終-
※おまけ あります。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

処理中です...