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俺のかわいい婚約者さま
10 @楓 2(1)
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長い長い空白の時を経て、めでたく番になった愛しい人は俺の腕の中でとても静かな寝息を立てて眠っている。
項に残るぼこぼこになってしまった番の印である噛み跡さえ可愛く見える。
そっと噛み跡を撫でてみる。その刺激で身じろぐあなたに笑みが零れる。
あなたを作るすべてが愛おしい。
傍にあなたがいない寂しさを抱きながら必死で頑張った8年間。
あなたはどうしていましたか……?
大学を卒業した日、それは待ちに待った日。
8年ぶりに見るあなたは桜の花びらが舞う中、大きな身体を少しでも小さく見せるために背中を丸めベンチにちょこんと座っていた。
その姿を瞳が捉えた瞬間、俺の灰色だった世界が鮮やかに色づきキラキラと輝きだしたんだ。
かわいい僕のクマしゃん。
かわいい俺の―――――。
すぐに捕まえて番って、誰の目からも見えないように隠してしまいたかった。
もう一刻も離れている事なんかできやしない。
俺の愛しい人―――。
愛しい人に吸い寄せられるように近づいて行ったが、ふとある考えが頭を過ぎり立ち止まった。
この8年間ずっと考えていた事だった。
俺はあなたに会えないでいる間もあなたの事だけをずっとずっと想い続けて来た。
――――だけど薫さんは……?
伸ばした手を振り払われてしまうかもしれない。
ぎゅっと心臓が締め付けられたかのように痛い。
まだ薫さんが誰のモノにもなっていない事は知っていた。
社会的にトップクラスの家の動向は良くも悪くもニュースになりやすく、把握しやすかった。
どんなに小さな記事も全て集めてスクラップブックに貼ってある。だからこの8年もの間、会わなくても堪えられた。
でもそれは薫さんの外側で、薫さんの内側、気持ちまでは分からなかった。
ここまできて怖気づいてしまい一歩も動けなくなってしまった。
時間だけが無駄に過ぎていく。そうしているうちに突然現れたαが俺の薫さんの両手を握ったのが見えた。
もう後先の事なんて考えられなかった。
気づいた時にはそのαの手を叩いていた。
「この人は俺のだから。勝手にくどいてんじゃねーよ」
そして聞こえて来た薫さんの震える声。
「――――かえで……君?」
8年ぶりの突然の俺の出現に、驚き見開かれた薫さんの瞳に俺はどう映ったのか。
不安で押しつぶされそうになりながら、それでも必死に言葉を紡ぐ。
「薫さん、遅くなってすみません」
薫さんは立ち上がり俺に手を伸ばそうとして止まった。
迷っているような戸惑っているようなそんな様子だけど、あなたも俺と同じ気持ちでいてくれたのだと分かり安堵と共に愛しさが募ってくすりと笑った。
おいでと両手を広げると薫さんは蕩けた表情のまま俺の腕の中にぽすんとその身体を預けた。
ぎゅっと抱きしめる。
やっと……やっとだ。
幸せを噛みしめていると途端にぶわりと甘い香りが辺りに広がった。
ああ、薫さんの香りだ。俺だけの――。
目の前のαなんかに嗅がせたくなくて、俺のフェロモンで薫さんを包み込む。
「あ……、あ、あぁ……っ」
俺のフェロモンで薫さんの発情が進んでしまったようで、その表情は蕩けきっていて焦点は合わず、開きっぱなしの口からは光る物が垂れて来ていた。
ああ、いけない。俺のフェロモンにあてられて薫さんの発情が進んでしまった。
二人きりの時ならいいがこんな他のαがいる場所でなんて……。薫さんの色っぽい顔を見ていいのは俺だけだ。
フェロモンを抑えなくては、そう思うのに自分のフェロモンに反応する薫さんが愛おしくて嬉しくて抑える事ができない。
「大丈夫。ちょっとだけ我慢して下さいね」
そう言うと自分の着ていた上着を脱ぎ薫さんを他のαの目から隠すように包み込むとお姫様のように大事に抱きかかえた。
そして未だ呆けたままになっていたαに向って威圧を使う。
びくりと震え俺を窺うようにするα。
「そこの人、薫さんのヒート休暇と番休暇代わりに出しておいて」
名も知らぬαはこくこくと必死に頷いていた。
項に残るぼこぼこになってしまった番の印である噛み跡さえ可愛く見える。
そっと噛み跡を撫でてみる。その刺激で身じろぐあなたに笑みが零れる。
あなたを作るすべてが愛おしい。
傍にあなたがいない寂しさを抱きながら必死で頑張った8年間。
あなたはどうしていましたか……?
大学を卒業した日、それは待ちに待った日。
8年ぶりに見るあなたは桜の花びらが舞う中、大きな身体を少しでも小さく見せるために背中を丸めベンチにちょこんと座っていた。
その姿を瞳が捉えた瞬間、俺の灰色だった世界が鮮やかに色づきキラキラと輝きだしたんだ。
かわいい僕のクマしゃん。
かわいい俺の―――――。
すぐに捕まえて番って、誰の目からも見えないように隠してしまいたかった。
もう一刻も離れている事なんかできやしない。
俺の愛しい人―――。
愛しい人に吸い寄せられるように近づいて行ったが、ふとある考えが頭を過ぎり立ち止まった。
この8年間ずっと考えていた事だった。
俺はあなたに会えないでいる間もあなたの事だけをずっとずっと想い続けて来た。
――――だけど薫さんは……?
伸ばした手を振り払われてしまうかもしれない。
ぎゅっと心臓が締め付けられたかのように痛い。
まだ薫さんが誰のモノにもなっていない事は知っていた。
社会的にトップクラスの家の動向は良くも悪くもニュースになりやすく、把握しやすかった。
どんなに小さな記事も全て集めてスクラップブックに貼ってある。だからこの8年もの間、会わなくても堪えられた。
でもそれは薫さんの外側で、薫さんの内側、気持ちまでは分からなかった。
ここまできて怖気づいてしまい一歩も動けなくなってしまった。
時間だけが無駄に過ぎていく。そうしているうちに突然現れたαが俺の薫さんの両手を握ったのが見えた。
もう後先の事なんて考えられなかった。
気づいた時にはそのαの手を叩いていた。
「この人は俺のだから。勝手にくどいてんじゃねーよ」
そして聞こえて来た薫さんの震える声。
「――――かえで……君?」
8年ぶりの突然の俺の出現に、驚き見開かれた薫さんの瞳に俺はどう映ったのか。
不安で押しつぶされそうになりながら、それでも必死に言葉を紡ぐ。
「薫さん、遅くなってすみません」
薫さんは立ち上がり俺に手を伸ばそうとして止まった。
迷っているような戸惑っているようなそんな様子だけど、あなたも俺と同じ気持ちでいてくれたのだと分かり安堵と共に愛しさが募ってくすりと笑った。
おいでと両手を広げると薫さんは蕩けた表情のまま俺の腕の中にぽすんとその身体を預けた。
ぎゅっと抱きしめる。
やっと……やっとだ。
幸せを噛みしめていると途端にぶわりと甘い香りが辺りに広がった。
ああ、薫さんの香りだ。俺だけの――。
目の前のαなんかに嗅がせたくなくて、俺のフェロモンで薫さんを包み込む。
「あ……、あ、あぁ……っ」
俺のフェロモンで薫さんの発情が進んでしまったようで、その表情は蕩けきっていて焦点は合わず、開きっぱなしの口からは光る物が垂れて来ていた。
ああ、いけない。俺のフェロモンにあてられて薫さんの発情が進んでしまった。
二人きりの時ならいいがこんな他のαがいる場所でなんて……。薫さんの色っぽい顔を見ていいのは俺だけだ。
フェロモンを抑えなくては、そう思うのに自分のフェロモンに反応する薫さんが愛おしくて嬉しくて抑える事ができない。
「大丈夫。ちょっとだけ我慢して下さいね」
そう言うと自分の着ていた上着を脱ぎ薫さんを他のαの目から隠すように包み込むとお姫様のように大事に抱きかかえた。
そして未だ呆けたままになっていたαに向って威圧を使う。
びくりと震え俺を窺うようにするα。
「そこの人、薫さんのヒート休暇と番休暇代わりに出しておいて」
名も知らぬαはこくこくと必死に頷いていた。
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