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もう少しだけ待っていて
9 もう少しだけ待っていて(1)
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「カケ、もう何も心配はいらないんだよ。僕がαでカケはΩで、僕たちは運命なんだ。だから年上Ωなんかに縛られてやる事なんてないんだ。大人たちにはまだ早いって言われるかもしれないけど、もう充分待ったんだし今すぐ僕とツガイに――」
「――――――は?」
自分でもびっくりするくらい低い声が出た。
昨夜から寝る間も惜しんで父さんたちが真相を解明する事に尽力してくれている。本当は俺だって自分の事なんだし、できる事を何かしたいと思ったけど「学生の本分は勉強だ」と言われてしまえば素直に従うしかなかった。
子どものようにダダをこねるのは止めたんだ。
そう思っていても授業中もそわそわと落ち着かないし叫び出してしまいたくなった。だけど、そんなんじゃダメなんだ。俺は信じて待つ事が今の俺にできる唯一の事なんだから。できる事をやって少しずつでも大人にならなきゃ。
そう思ってなんとか授業を受け、帰る前に父さんからの連絡がないかスマホをチェックしていると老川が声をかけてきたのだ。
――こいつ、今何て言った……?
俺がΩ?
俺とこいつが運命??
――――は?
俺は自分の二次性を誰にも言ってはいないし、俺と付き合いの長い進だって俺の事をαだと思ってる。
なのにこいつは俺の事をΩだと言った。確信を持った言い方だった。
俺の事をΩだと知っている人間は両親と兄ちゃんと……彼方、だけ。
――――という事は……。
「やっぱりお前かっ!!!」
俺は咆哮を上げ、老川の胸倉を掴んで締め上げた。
締め上げられて苦しそうに老川の顔は歪み、呻き声をあげた。
温度のない目で老川の苦しむ姿を見ていたが、ふいに愛しい人の悲しむ顔が浮かんだ。
はっとして老川を解放する。
このままだと殺してしまいそうだった。この衝動を必死に抑えようとするが身体は怒りに震えたままだ。フーフーと荒い息だけが教室に響く。
解放された老川は何度か苦しそうに咳込むと、涙目で俺の事を見つめ縋りつこうとした。
「ひどいよ……。やっと僕たちひとつになれるのに……。あのΩから僕が守ってあげるから安心して?ねぇこっちを向いてよ。僕の運め――」
「俺の運命は彼方だっ!!お前なんか知らないっ!」
「何を言ってるの……?そんなわけないよ。僕とカケは運命の番なんだ。ねぇ、僕の香りを嗅いでみて?ほら、そしたら分かるはずだよ?」
と老川はシャツのボタンを外し項を見せてくる。
目の前に曝け出された真っ白な項と、俺を見つめる老川の瞳。
その瞳は仄暗く濁り、だけどランランと輝いて見えて『狂気』そのものだった。
ぶわりと広がる老川の香り。
その香りはアレにべっとりと纏わりつくようについていた匂いと同じものだった。
――――――っ!!
俺は本能的にすぐにこの場から、こいつから離れなくてはいけないと思った。
伸びてくる白い腕を振り払い俺は無我夢中で走って逃げた。
「――――――は?」
自分でもびっくりするくらい低い声が出た。
昨夜から寝る間も惜しんで父さんたちが真相を解明する事に尽力してくれている。本当は俺だって自分の事なんだし、できる事を何かしたいと思ったけど「学生の本分は勉強だ」と言われてしまえば素直に従うしかなかった。
子どものようにダダをこねるのは止めたんだ。
そう思っていても授業中もそわそわと落ち着かないし叫び出してしまいたくなった。だけど、そんなんじゃダメなんだ。俺は信じて待つ事が今の俺にできる唯一の事なんだから。できる事をやって少しずつでも大人にならなきゃ。
そう思ってなんとか授業を受け、帰る前に父さんからの連絡がないかスマホをチェックしていると老川が声をかけてきたのだ。
――こいつ、今何て言った……?
俺がΩ?
俺とこいつが運命??
――――は?
俺は自分の二次性を誰にも言ってはいないし、俺と付き合いの長い進だって俺の事をαだと思ってる。
なのにこいつは俺の事をΩだと言った。確信を持った言い方だった。
俺の事をΩだと知っている人間は両親と兄ちゃんと……彼方、だけ。
――――という事は……。
「やっぱりお前かっ!!!」
俺は咆哮を上げ、老川の胸倉を掴んで締め上げた。
締め上げられて苦しそうに老川の顔は歪み、呻き声をあげた。
温度のない目で老川の苦しむ姿を見ていたが、ふいに愛しい人の悲しむ顔が浮かんだ。
はっとして老川を解放する。
このままだと殺してしまいそうだった。この衝動を必死に抑えようとするが身体は怒りに震えたままだ。フーフーと荒い息だけが教室に響く。
解放された老川は何度か苦しそうに咳込むと、涙目で俺の事を見つめ縋りつこうとした。
「ひどいよ……。やっと僕たちひとつになれるのに……。あのΩから僕が守ってあげるから安心して?ねぇこっちを向いてよ。僕の運め――」
「俺の運命は彼方だっ!!お前なんか知らないっ!」
「何を言ってるの……?そんなわけないよ。僕とカケは運命の番なんだ。ねぇ、僕の香りを嗅いでみて?ほら、そしたら分かるはずだよ?」
と老川はシャツのボタンを外し項を見せてくる。
目の前に曝け出された真っ白な項と、俺を見つめる老川の瞳。
その瞳は仄暗く濁り、だけどランランと輝いて見えて『狂気』そのものだった。
ぶわりと広がる老川の香り。
その香りはアレにべっとりと纏わりつくようについていた匂いと同じものだった。
――――――っ!!
俺は本能的にすぐにこの場から、こいつから離れなくてはいけないと思った。
伸びてくる白い腕を振り払い俺は無我夢中で走って逃げた。
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