俺のかわいい婚約者さま リメイク版

ハリネズミ

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俺のかわいい後輩さま どこかの世界線で

1 顔も知らない婚約者(1)

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この世には沢山の世界線が存在する。
同じ名前同じ顔――全てが同じように見えてどこかしら違っていたり、まったくどれも同じ物がなかったり、そんな無数に存在する世界線の中の――とあるひとつの世界のお話。



*****
俺の名前は北山 楓きたやま かえで17歳。高校3年生だ。
小さい頃は女の子に間違えられる事が多く、周りから二次性はΩに違いないと言われていた。中学に入る頃には将来を見越して何人かのαから求愛されたりもしていた。みんな俺より年上で優しい人ばかりだった。
俺はというとそのどれにもピンとくるものはなく、だからといって明確に拒絶する理由もなくてなんとなくみんなと平等に付き合っていた。
付き合っていたといっても所謂恋人の付き合いというのではなく、時々みんなで会って話をしたりお茶を飲んだりする程度だ。友だち関係の延長線上にあるような、兄と弟のような――そんなゆるい感じだった。俺がまだ中学生だという事もあり、その辺は配慮してくれていた。
そんな付き合いしかできなかった俺は、けじめとしてプレゼントの類は誰からも一切受け取らなかった。
好きだと言ってくれている相手にこれ以上不誠実でいたくなかったからだ。

そんな付き合いが一年も続くと、自然とこの中から番を選ばなくては気持ちになってくるもので、番うのは先だとしてもそろそろ相手を決めなくてはと思い始めていた。
ちょうどその頃二次性判定の結果が出た。
大方おおかたの予想に反して、俺は『Ω』ではなく『α』だった。
その事を告げた時のみんなの顔が……今も忘れられない。

俺の何が変わったというわけじゃなかった。北山 楓という名前の横に『α』という記号が付いただけだ。
前日まで「好きだ」「可愛い」「俺を選んで?」なんて言っていたのに俺がαだと分かった途端、あんなに優しくて甘く蕩けるように俺を見つめていた熱かった瞳が、急速に熱を失いライバルに対する冷たく尖ったものに変わった。
それを受けて俺は傷ついたという事はなかったけれど、裏切られたとは感じていた。
普通はαが求め番いたいと思うのはΩだ。αはαを選ばない。
それでも正直この中のひとりくらいは変わらないでいてくれると思っていたのだ。
どうしてそう思ったかというと、うちの両親はαとαの夫婦だ。だからって特別な事は何もない。よそのαとΩの夫婦にも負けない愛情で繋がっている。だからαがαを選ぶ事をあり得ない事だとは思わないし、俺の中ではそれはおかしな事ではなく、性別に囚われる事の方がナンセンスだと思っていた。

――なのに……俺はひとり取り残されて思う。
そんなに急に人の心って変わるもの?
あの愛の言葉は何だったの?
俺のが好きだった――?『Ω』という記号が。

一日や二日の付き合いじゃなかった。最近では殆ど毎日のように会って、話して笑い合って――。
俺の性格や人となりは分かっていたはずだ。
それなのに受け入れてはもらえなかった。



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