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優しい嘘の見分け方
14 幸せだよ
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俺と美幸が番になってしばらくして、美幸の母親から俺だけが呼び出されていた。
本当は優しい人だと分かっているけど、ふたりっきりはまだ少し緊張する。
緊張で硬くなっている俺を見て、少しだけ息を吐かれた。それは決して呆れでもバカにしたわけでもなく、「しょうがない子ね」とでもいうような温かな想い。
「首飾りはΩとしてのあなたの事を守るという役目は終えたけれど、近い将来一宮家の当主となる美幸の妻としてのあなたを守る役目は残っています。首飾りの宝石はあなたの気高さを示しているの。Ωである事は何の恥でもないし誰かに見下される謂れもない、胸を張って強く生きなさい」
番になってからはこんな大層な物を常につけている必要はないのでは? と思っていたけど、そう言われてなるほどと思った。
美幸の母親はΩでありながら女帝として財界に君臨し続けた。
ただでさえΩというだけで見下されてしまう世界で番がいない事を隠し、ひとりで女帝としてあり続ける事はきっと俺なんかじゃ到底分からない苦労があったに違いない。そこをうまく立ち回り、決して折れなかったのだから、その豪胆さに惚れる。さすがは美幸の母親だ。
そしてそれを支えたのがあの首飾りというわけなのか。
最近になって気づいた事がある。俺のこれの宝石は美幸の瞳の色、という事はあの赤いルビーは――。
*****
「白兎、用事は何だった?」
美幸の母親――お義母さんとの話が終わり、美幸の元へ戻ると複雑そうな顔でそんな事を言われた。
この表情は心配半分焼きもち半分ってとこかな。
大人の美幸も意外と子どもっぽい面もあり、子どものフリをしていた時と変わらず甘えてくるけど、そんなところが堪らなく愛おしいと思う。
「んーお義母さんは『女帝』だろ? じゃあ俺は何だろうな? 『帝王』? でも『帝王』は美幸だよなー。うーん?」
「変な事話す仲なんだな……」
「なんだよ、妬いてるのか? ふふっ」
「そりゃ……。んー、まぁ白兎は俺の愛する『兎ちゃん』でいいんじゃないか?」
「ま、ま……またそんな事言って――っ」
揶揄うはずが反対に揶揄われて顔が真っ赤になって言い淀む。
「あはは。兎ちゃん、ほらこっちにおいで? 抱きしめさせて?」
「うぅぅ……」
渋面を作りながらも素直にとことこと歩いていき、美幸の腕の中に収まる。
美幸の温もりと香りに包まれて「はふ」っと声を漏らした。
「これが幸せってやつかな?」
「幸せってやつだな」
「愛ってやつかな?」
「愛ってやつだな」
俺たちはくすくすと笑い合って、そしてふたりきりの甘い時間を過ごした。
*****
こんな日がずっとずーっと続けばいい。
お父さんお母さん、おじいちゃんお義母さん、みんながいて。
勿論美幸がいる事が絶対条件。
俺は本当にほんとうに幸せだよ。
-おわり-
本当は優しい人だと分かっているけど、ふたりっきりはまだ少し緊張する。
緊張で硬くなっている俺を見て、少しだけ息を吐かれた。それは決して呆れでもバカにしたわけでもなく、「しょうがない子ね」とでもいうような温かな想い。
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番になってからはこんな大層な物を常につけている必要はないのでは? と思っていたけど、そう言われてなるほどと思った。
美幸の母親はΩでありながら女帝として財界に君臨し続けた。
ただでさえΩというだけで見下されてしまう世界で番がいない事を隠し、ひとりで女帝としてあり続ける事はきっと俺なんかじゃ到底分からない苦労があったに違いない。そこをうまく立ち回り、決して折れなかったのだから、その豪胆さに惚れる。さすがは美幸の母親だ。
そしてそれを支えたのがあの首飾りというわけなのか。
最近になって気づいた事がある。俺のこれの宝石は美幸の瞳の色、という事はあの赤いルビーは――。
*****
「白兎、用事は何だった?」
美幸の母親――お義母さんとの話が終わり、美幸の元へ戻ると複雑そうな顔でそんな事を言われた。
この表情は心配半分焼きもち半分ってとこかな。
大人の美幸も意外と子どもっぽい面もあり、子どものフリをしていた時と変わらず甘えてくるけど、そんなところが堪らなく愛おしいと思う。
「んーお義母さんは『女帝』だろ? じゃあ俺は何だろうな? 『帝王』? でも『帝王』は美幸だよなー。うーん?」
「変な事話す仲なんだな……」
「なんだよ、妬いてるのか? ふふっ」
「そりゃ……。んー、まぁ白兎は俺の愛する『兎ちゃん』でいいんじゃないか?」
「ま、ま……またそんな事言って――っ」
揶揄うはずが反対に揶揄われて顔が真っ赤になって言い淀む。
「あはは。兎ちゃん、ほらこっちにおいで? 抱きしめさせて?」
「うぅぅ……」
渋面を作りながらも素直にとことこと歩いていき、美幸の腕の中に収まる。
美幸の温もりと香りに包まれて「はふ」っと声を漏らした。
「これが幸せってやつかな?」
「幸せってやつだな」
「愛ってやつかな?」
「愛ってやつだな」
俺たちはくすくすと笑い合って、そしてふたりきりの甘い時間を過ごした。
*****
こんな日がずっとずーっと続けばいい。
お父さんお母さん、おじいちゃんお義母さん、みんながいて。
勿論美幸がいる事が絶対条件。
俺は本当にほんとうに幸せだよ。
-おわり-
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