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オレの別れた恋人、──元カレであるアキラとは高校の同級生だった。高二から付き合いだして大学、社会人になってもそれは続いていた。ただ、社会人になってからはお互いに忙しく、慣れない仕事や環境に学生の頃のようにはいかず、なにもかもが変わってしまった。
学生のころもオレたちが付き合っていることは誰にも言わなかったし、人目のある場所では『友人』という体を崩さなかったけれど、二人きりのときはちゃんと『恋人』だったからオレに不満はなかった。
それが、社会人になってからは『友人』という関係性すら怪しくなってしまっていた。まずお互いの部屋への行き来がなくなった。=恋人の時間がなくなったということだ。
オレ自身もとにかく一人前になれるように仕事も勉強も頑張っていたし、アキラも同じだと思っていた。だから直接会えないのはもちろん通話ができなくても、たまに送るメッセージを既読スルーされても、アキラは今頑張ってるんだから邪魔しないようにしないとって思っていた。
その状態のまま一年近くが過ぎても、オレは不平や不満を口にすることはなかった。つらいのはアキラも同じ。もう少しだけ我慢すれば、またいつか元通りになれると思っていたのだ。
いや、そのころにはお互い親元を離れた自立した大人なのだし、もう一歩先に進んでみてもいいのではないか、そうなったら機会をみて同棲を提案するのもいい。今までのことを考えるなら色々と難しいのかもしれないけれど、一緒の部屋がダメなら同じアパートの隣の部屋、それでもダメなら同じ階、それならいけるだろうか──、なんて。
一体いつからオレは起きながら夢を見ていたのだろうか。現実は、六年という長い時間をかけて育んでいたはずの『愛情』は、いつの間にか水をやり忘れた花のように枯れてしまっていたのに──。
あの日、入社以来だったから実に一年ぶりのアキラからの連絡だった。それは外で会おうというもので、人目があるから『恋人』のようにイチャつくのは無理だと分かっていたけれど、たとえ『友人』のようであっても会えることが嬉しかった。
友人でも恋人でも、どちらにしてもオレの中では実質デートだから、久しぶりのデートに浮かれて待ち合わせ場所に向かった。
だけどそこにはアキラともう一人、オレの知らない人物がいた。せっかくのデートなのに、と思わなくもなかったけれど、二人より三人でいる方がより恋人だとは思われにくいのも確かだし、結局はオレたちの為なのだと無理矢理自分を納得させた。
だけどすぐにオレは自分がバカなのだと知ることになる。オレはアキラのことを信じすぎていたのだ。
合流して適当なファミレスに場所を移す中、アキラのすぐ隣を歩いていたのはオレではなかったし、ファミレスで隣の席に座るのもオレではなかった。
これの意味することなんて考えればすぐに分かるのに、オレはアキラを信じていたから疑うことをしなかった。いや、不安はあったと思う。だから変なテンションでくだらない話をしてバカみたいに笑ったり、アキラが連れてきた人物に積極的に話しかけたりして、とにかくオレは一人で話し続けた。
そうすればするほど胸のザワザワは大きくなって、自分で自分を追い詰めているようだったけれど、オレは止まれなかった。
どのくらい時間が経っただろうか、オレの飲み物だけがなくなって、次を頼むかどうか悩んでいると、なぜオレの胸がざわつくのかの答えをアキラがくれた。
実はこれはデートではなく別れ話をする為で、連れてきていた人物はアキラの新しい恋人だったのだ。アキラの口からは何度も『運命の人』がでてきていたような気がするけれど、内容はあまり頭に入ってこなかった。突然の別れ話に、オレの頭が理解することを拒否したからだ。それでもこれは相談ではなく、もう決定していることなのだということは分かった。アキラはオレを捨て、新しい恋人を作ったのだ。
分かったからといって、いや分かったからこそオレはなにも言わず、その場から逃げ出した。
あのときのオレにできたのはそれだけだったから。
学生のころもオレたちが付き合っていることは誰にも言わなかったし、人目のある場所では『友人』という体を崩さなかったけれど、二人きりのときはちゃんと『恋人』だったからオレに不満はなかった。
それが、社会人になってからは『友人』という関係性すら怪しくなってしまっていた。まずお互いの部屋への行き来がなくなった。=恋人の時間がなくなったということだ。
オレ自身もとにかく一人前になれるように仕事も勉強も頑張っていたし、アキラも同じだと思っていた。だから直接会えないのはもちろん通話ができなくても、たまに送るメッセージを既読スルーされても、アキラは今頑張ってるんだから邪魔しないようにしないとって思っていた。
その状態のまま一年近くが過ぎても、オレは不平や不満を口にすることはなかった。つらいのはアキラも同じ。もう少しだけ我慢すれば、またいつか元通りになれると思っていたのだ。
いや、そのころにはお互い親元を離れた自立した大人なのだし、もう一歩先に進んでみてもいいのではないか、そうなったら機会をみて同棲を提案するのもいい。今までのことを考えるなら色々と難しいのかもしれないけれど、一緒の部屋がダメなら同じアパートの隣の部屋、それでもダメなら同じ階、それならいけるだろうか──、なんて。
一体いつからオレは起きながら夢を見ていたのだろうか。現実は、六年という長い時間をかけて育んでいたはずの『愛情』は、いつの間にか水をやり忘れた花のように枯れてしまっていたのに──。
あの日、入社以来だったから実に一年ぶりのアキラからの連絡だった。それは外で会おうというもので、人目があるから『恋人』のようにイチャつくのは無理だと分かっていたけれど、たとえ『友人』のようであっても会えることが嬉しかった。
友人でも恋人でも、どちらにしてもオレの中では実質デートだから、久しぶりのデートに浮かれて待ち合わせ場所に向かった。
だけどそこにはアキラともう一人、オレの知らない人物がいた。せっかくのデートなのに、と思わなくもなかったけれど、二人より三人でいる方がより恋人だとは思われにくいのも確かだし、結局はオレたちの為なのだと無理矢理自分を納得させた。
だけどすぐにオレは自分がバカなのだと知ることになる。オレはアキラのことを信じすぎていたのだ。
合流して適当なファミレスに場所を移す中、アキラのすぐ隣を歩いていたのはオレではなかったし、ファミレスで隣の席に座るのもオレではなかった。
これの意味することなんて考えればすぐに分かるのに、オレはアキラを信じていたから疑うことをしなかった。いや、不安はあったと思う。だから変なテンションでくだらない話をしてバカみたいに笑ったり、アキラが連れてきた人物に積極的に話しかけたりして、とにかくオレは一人で話し続けた。
そうすればするほど胸のザワザワは大きくなって、自分で自分を追い詰めているようだったけれど、オレは止まれなかった。
どのくらい時間が経っただろうか、オレの飲み物だけがなくなって、次を頼むかどうか悩んでいると、なぜオレの胸がざわつくのかの答えをアキラがくれた。
実はこれはデートではなく別れ話をする為で、連れてきていた人物はアキラの新しい恋人だったのだ。アキラの口からは何度も『運命の人』がでてきていたような気がするけれど、内容はあまり頭に入ってこなかった。突然の別れ話に、オレの頭が理解することを拒否したからだ。それでもこれは相談ではなく、もう決定していることなのだということは分かった。アキラはオレを捨て、新しい恋人を作ったのだ。
分かったからといって、いや分かったからこそオレはなにも言わず、その場から逃げ出した。
あのときのオレにできたのはそれだけだったから。
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