【完結】 『運命』なんてクソ喰らえ!

ハリネズミ

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 オレは『運命の人』という言葉が苦手だ。特にそれを別れる為の言い訳・・・にされるのは、オレにとっての地雷だと言ってもいい。
 そりゃあ人間なんだから心変わりもあるだろうし、それは仕方のないことだと思っている。一方通行になってしまった愛情は、一緒にいても結局はどちらも不幸にする。だから別れること自体を否定するつもりはない。
 だけどその理由に『運命・・の人』という曖昧で不確かなものをわざわざ使うのは話が違うと思うのだ。
 言葉自体は耳障りはいいし、そのワードにときめく人もいるだろう。映画やドラマで使われる『運命』や『運命の人』といえば、純愛、悲恋に関わらず総じてロマンティックで、まるで物語の主人公にでもなったかのような気分になることもあるのかもしれない。
 だけど、フラれる側からしたらどうだ。どんなに美しく言葉を飾ってみても事実は変わらない。この世界では『運命』というものになんの強制力・・・もありはしないのだから、それはただの『心変わり』であり『浮気』や『裏切り』なのだ。
 おまけに『運命』なのだから仕方がない、と自らの裏切りを正当化し、それを相手にも受け入れるよう強要するのだから、いかに最悪かが分かるだろう。
 オレが納得いかないのはそこなのだ。付き合った期間の長さに関わらず、一度は愛した相手に対して誠実さの欠片もありはしない。
 言われた側は嘘か本当かも分からないものを理由にされて、仕方がないなんて思えるはずがない。納得なんかできないから他の明確な理由を探して、その場に立ち止まって俯くことしかできなくなるのだ。
 そして提示された理由である『運命の人』を手放しで信じるなら、自分が『運命の人』だったなら別れることはなかったのか、なんで自分は『運命の人』ではなかったのか、なんでなれなかったのか──と、まるでぜんぶが自分のせい・・みたいに自分のことを責めてしまう。
 もしもこれが「嫌いになった」「他に好きな人ができた」などが理由であれば、分かり易い分受け入れ易い。傷つかないわけではないし色々な感情は抱くだろうけれど、早々に気持ちを切り替えて前を向けたかもしれない。反省するところは反省して、相手のことも少しくらいは文句を言ったりして、次こそはいい恋をしようと思えたかもしれない。
 だけど『運命』なんて自分ではどうにもならないものを理由にされたら、次なんて思えるはずがない。次が怖いのだ──。
 ──と、苦手なワードを使っていたとはいえ所詮しょせんは他人事なのになぜこんなにも熱く語ってしまったかというと、実はまったくの他人事というわけではないからだ。と言っても、もちろん現在進行形で別れ話をしている二人とオレはまったく関係はない。
 実はオレ『運命の人』を理由に一方的にフラれてしまった過去があるのだ。そこの二人と違うのは、オレの性嗜好が同性、つまりは『ゲイ』で、オレの元恋人が男だったということだ。男女の違いはあるけれど、そこはあまり関係ないとオレは思っていて、理不尽な別れを押し付けられた者同士、とても他人事とは思えないのだ。
 オレがフラれたのは三年も前のことで、さすがにもう未練はない。だけど相変わらず同じ場所から動けないでいるのだ。
 実はこの旅行を、オレは密かに新しい一歩を踏み出すいいきっかけになればいいと思っていた。だけどこんなことになるなんて──本当、人生はままならない。




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