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4 ③ ※少しだけ
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オレは特別セッ○スが好きというわけではない。するなら恋人とがいいし、気持ちの伴わない行為だけのワンナイトなんてものも好まない。
初めての恋人はアキラで、アキラと別れてから誰とも付き合ってこなかったから、オレの経験は元カレであるアキラ一人ということになる。
そのアキラとも高二から付き合って、学生時代はそれなりにはあったものの社会人になってからはまったくそういうことはしなかった。しなかった、というか会っていないのだからするもしないもないわけだけれど。
だからほぼ四年くらいはブランクがある。とはいえ熊野は誰とも経験がなくまっさらのはずで、絶対に『上手い』なんてことはないと思うのに、キスだけでこんなにも気持ちがよくてもっともっととなるのはどうしてだろう。
オレみたいなただの男に熊野が深いキスをしてくれるのはどうしてだろう。
オレを包み込むように抱きしめる大きく太い腕に安心するのに逃げたくなる。優しく触れる熊野の温かで少しカサついた指先に、感じ過ぎてしまって身を捩る。だけど熊野はオレを決して逃さなかった。
力で押さえつけられているわけではなかったけれど、怖いくらいにオレのことを捕らえて離さない。それこそ獲物を捕らえた獰猛な熊のように。だけどオレに触れるその手は優しくて、まるで本物の恋人に触れているようだった。
それがなぜか苦しくて、涙が溢れた。それを見られたくなくて、オレの首の辺りに唇を寄せる熊野の頭を抱きしめた。
それによって熊野の唇が肌に触れたままで、熱い息がゼロ距離で広がる。それすらも快感を拾うのだから、オレは自分が淫乱にでもなったのかと顔が羞恥に染まる。
それでもオレの太ももに押し付けられるようにされている熊野のアレが、しっかりと反応して太く熱い杭のようになっているのを感じ、淫乱でもいいかと思ってしまう。
熊野の熱にもうずっと下腹部がキュンキュン疼きっぱなしだ。熊野のアレをここに、この奥の奥まで欲しいと願ってしまうのだ──。
「熊、野さ……、ん、んあ……っあぁぁ──」
翌朝、目を覚ますと熊野の姿は既になかった。熊野と寝ていたはずの布団はオレ一人分の温もりしかない。まだ深夜とも早朝とも言えるような時間なのに、熊野は一体いつ出ていったのだろうか。
熊野は元々とっていた旅館にいって荷物を回収し、用事があるとかでそのまま帰るとは言っていた。聞いていたこととはいえ、一人残されたことを少しだけ寂しく思う。
恋人ではなくても、熊野ならオレが目が覚めるまでは傍にいてくれると思っていた。時間がなかったのならせめて起こしてくれればよかったのに。そう思うけれど、それは普通の恋人であればの話で、オレたちは違う。だから気にする必要もなく、傷つく理由もないのだと思い直した。
「はぁ……」と無意識に小さくため息が漏れた。
オレは重い身体を引きずるようにのそりと立ち上がり、部屋付きの温泉へと向かう。昨夜はあの後すぐに寝てしまい、温泉を楽しむ余裕はなかった。
チェックアウトまではまだ時間はある。せっかくの露天風呂だから、と入ることにしたわけだけれど、晒された自分の身体に残る赤い痕に苦笑する。
これに意味なんてないし、意味をもたせてはいけない。
痕を隠すように白く濁ったお湯に身体を沈め、湯面を見つめた。
「熊野さんはこの温泉入ったのかなぁ……」
決して答えの返らない呟きに、ぽちゃりと湯の音がするだけだった。
だからオレが次に言う言葉もなんの意味もない、ただの戯言。
今感じている寂しさも、久しぶりに触れた人肌がもたらした錯覚。
「──最後まで……、してくれてもよかったのに……」
昨夜オレたちは抜き合いまではしたものの、結局挿入まではしなかったのだ──。
女でもなく、女っぽくも可愛くもないオレ。
「まぁ……当たり前か」
初めての恋人はアキラで、アキラと別れてから誰とも付き合ってこなかったから、オレの経験は元カレであるアキラ一人ということになる。
そのアキラとも高二から付き合って、学生時代はそれなりにはあったものの社会人になってからはまったくそういうことはしなかった。しなかった、というか会っていないのだからするもしないもないわけだけれど。
だからほぼ四年くらいはブランクがある。とはいえ熊野は誰とも経験がなくまっさらのはずで、絶対に『上手い』なんてことはないと思うのに、キスだけでこんなにも気持ちがよくてもっともっととなるのはどうしてだろう。
オレみたいなただの男に熊野が深いキスをしてくれるのはどうしてだろう。
オレを包み込むように抱きしめる大きく太い腕に安心するのに逃げたくなる。優しく触れる熊野の温かで少しカサついた指先に、感じ過ぎてしまって身を捩る。だけど熊野はオレを決して逃さなかった。
力で押さえつけられているわけではなかったけれど、怖いくらいにオレのことを捕らえて離さない。それこそ獲物を捕らえた獰猛な熊のように。だけどオレに触れるその手は優しくて、まるで本物の恋人に触れているようだった。
それがなぜか苦しくて、涙が溢れた。それを見られたくなくて、オレの首の辺りに唇を寄せる熊野の頭を抱きしめた。
それによって熊野の唇が肌に触れたままで、熱い息がゼロ距離で広がる。それすらも快感を拾うのだから、オレは自分が淫乱にでもなったのかと顔が羞恥に染まる。
それでもオレの太ももに押し付けられるようにされている熊野のアレが、しっかりと反応して太く熱い杭のようになっているのを感じ、淫乱でもいいかと思ってしまう。
熊野の熱にもうずっと下腹部がキュンキュン疼きっぱなしだ。熊野のアレをここに、この奥の奥まで欲しいと願ってしまうのだ──。
「熊、野さ……、ん、んあ……っあぁぁ──」
翌朝、目を覚ますと熊野の姿は既になかった。熊野と寝ていたはずの布団はオレ一人分の温もりしかない。まだ深夜とも早朝とも言えるような時間なのに、熊野は一体いつ出ていったのだろうか。
熊野は元々とっていた旅館にいって荷物を回収し、用事があるとかでそのまま帰るとは言っていた。聞いていたこととはいえ、一人残されたことを少しだけ寂しく思う。
恋人ではなくても、熊野ならオレが目が覚めるまでは傍にいてくれると思っていた。時間がなかったのならせめて起こしてくれればよかったのに。そう思うけれど、それは普通の恋人であればの話で、オレたちは違う。だから気にする必要もなく、傷つく理由もないのだと思い直した。
「はぁ……」と無意識に小さくため息が漏れた。
オレは重い身体を引きずるようにのそりと立ち上がり、部屋付きの温泉へと向かう。昨夜はあの後すぐに寝てしまい、温泉を楽しむ余裕はなかった。
チェックアウトまではまだ時間はある。せっかくの露天風呂だから、と入ることにしたわけだけれど、晒された自分の身体に残る赤い痕に苦笑する。
これに意味なんてないし、意味をもたせてはいけない。
痕を隠すように白く濁ったお湯に身体を沈め、湯面を見つめた。
「熊野さんはこの温泉入ったのかなぁ……」
決して答えの返らない呟きに、ぽちゃりと湯の音がするだけだった。
だからオレが次に言う言葉もなんの意味もない、ただの戯言。
今感じている寂しさも、久しぶりに触れた人肌がもたらした錯覚。
「──最後まで……、してくれてもよかったのに……」
昨夜オレたちは抜き合いまではしたものの、結局挿入まではしなかったのだ──。
女でもなく、女っぽくも可愛くもないオレ。
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