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オレの答えは決まっていたけれど、なかなか言葉にできないでいた。そんなオレの様子を見て、アキラは眉尻をへにょりと下げて苦笑した。
「──なんだか……変わったな」
「どんな、とこが?」
「ん~、あのころは俺がなにか言えばぜんぶ受け入れてくれてたからさ。だから正直本当のことを話せば夕は許してくれると思ってた」
「あのころは……アキラはオレのすべてだったから」
オレの答えにアキラの顔がくしゃりと歪み、そして力なく笑った。
「そっか……。俺も誰よりも愛していたよ」
オレが過去形にしたことでアキラも過去形で返してくれた。あんな風に言っていたけれど、本当はアキラもオレが頷くとは思っていなかったのだろう。
アキラにとってもこの三年は決して短いものじゃなかったはずだし、それだけひどい別れ方をしたということも分かっているのだ。
実際そうだとは思うけれど、断る理由はそれじゃない。
本当は気づいていた。自分自身からも隠した自分の気持ち。あの夜、熊野の熱を知ってしまってもまだ認めたくなかった。
熊野を宿に誘ったのも、あんな提案をしてしまったのも、熊野が裏切られた相手にすら優しさをみせるのが悲しかったのも、腹が立ったのも、ぜんぶ、ぜんぶ、熊野を好きだから。オレが、熊野のことを好きだからだ。
このままなにも言わず別れる方がいいのかもしれない。だけどオレは本当の気持ちを伝えることにした。
熊野とうまくいく未来なんてないけれど、オレの恋心を嘘にはしたくなかったから、アキラには伝えたいと思った。
「オレ、今好きな人がいるんだ。それがアキラと一緒にいけない理由。だから怒ってとか傷つけられたからとかで断ったわけじゃない」
そう告げると、アキラは一拍おいてフッと短く息を吐いた。
「そっか……。分かった。──はぁ、俺も向こうでいい人見つけないとなー」
「うん。応援してる」
「応援、か。夕、最後に一つだけいいか?」
「うん。なに?」
「人のことばっか応援するんじゃなくて、自分のことも大事にしろよ?」
すべてお見通しみたいなアキラの言葉にギクリとなった。
「──うん。分かったよ」
「マジで幸せになってくれよ? じゃないとお前を手放した意味がないんだからな?」
「分かってる。幸せになるよ」
「俺も夕が惜しいことしたって悔しがるくらいいい男になって、幸せになってやるよ」
そう言って「にしし」と笑うから、「アキラは今もいい男だよ」って笑って言えば、アキラは「だろ?」とドヤ顔で応えた。オレたちは同時に「ぷっ」と吹き出して、ふたりで声を上げて笑い合った。そして拳を作ってコツンと合わせる。恋人になる前の友人だったころのような気安い感じだ。
こんな感じの軽いやり取りをするのが好きだった。恋人になって、恋人特有の甘さも加わって、本当に、本当に大好きだったよ。
アキラ、友情をありがとう。恋心をありがとう。
これから遠い地へと旅立つアキラ、友人としてお前の幸せを心から願っているよ。
この別れで、アキラとの恋の甘さも苦さも混ざり合って溶け合って、思い出となって昇華された。
「──なんだか……変わったな」
「どんな、とこが?」
「ん~、あのころは俺がなにか言えばぜんぶ受け入れてくれてたからさ。だから正直本当のことを話せば夕は許してくれると思ってた」
「あのころは……アキラはオレのすべてだったから」
オレの答えにアキラの顔がくしゃりと歪み、そして力なく笑った。
「そっか……。俺も誰よりも愛していたよ」
オレが過去形にしたことでアキラも過去形で返してくれた。あんな風に言っていたけれど、本当はアキラもオレが頷くとは思っていなかったのだろう。
アキラにとってもこの三年は決して短いものじゃなかったはずだし、それだけひどい別れ方をしたということも分かっているのだ。
実際そうだとは思うけれど、断る理由はそれじゃない。
本当は気づいていた。自分自身からも隠した自分の気持ち。あの夜、熊野の熱を知ってしまってもまだ認めたくなかった。
熊野を宿に誘ったのも、あんな提案をしてしまったのも、熊野が裏切られた相手にすら優しさをみせるのが悲しかったのも、腹が立ったのも、ぜんぶ、ぜんぶ、熊野を好きだから。オレが、熊野のことを好きだからだ。
このままなにも言わず別れる方がいいのかもしれない。だけどオレは本当の気持ちを伝えることにした。
熊野とうまくいく未来なんてないけれど、オレの恋心を嘘にはしたくなかったから、アキラには伝えたいと思った。
「オレ、今好きな人がいるんだ。それがアキラと一緒にいけない理由。だから怒ってとか傷つけられたからとかで断ったわけじゃない」
そう告げると、アキラは一拍おいてフッと短く息を吐いた。
「そっか……。分かった。──はぁ、俺も向こうでいい人見つけないとなー」
「うん。応援してる」
「応援、か。夕、最後に一つだけいいか?」
「うん。なに?」
「人のことばっか応援するんじゃなくて、自分のことも大事にしろよ?」
すべてお見通しみたいなアキラの言葉にギクリとなった。
「──うん。分かったよ」
「マジで幸せになってくれよ? じゃないとお前を手放した意味がないんだからな?」
「分かってる。幸せになるよ」
「俺も夕が惜しいことしたって悔しがるくらいいい男になって、幸せになってやるよ」
そう言って「にしし」と笑うから、「アキラは今もいい男だよ」って笑って言えば、アキラは「だろ?」とドヤ顔で応えた。オレたちは同時に「ぷっ」と吹き出して、ふたりで声を上げて笑い合った。そして拳を作ってコツンと合わせる。恋人になる前の友人だったころのような気安い感じだ。
こんな感じの軽いやり取りをするのが好きだった。恋人になって、恋人特有の甘さも加わって、本当に、本当に大好きだったよ。
アキラ、友情をありがとう。恋心をありがとう。
これから遠い地へと旅立つアキラ、友人としてお前の幸せを心から願っているよ。
この別れで、アキラとの恋の甘さも苦さも混ざり合って溶け合って、思い出となって昇華された。
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