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声を聴かせて
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ヒント1、空がきれい。
ヒント2、壁には大きな赤い靴。
ヒント3、イルミネーションが綺麗。
『通話はそのままでお願いします。俺がたどり着く前にあなたに何かあったらと思うと…心配でどうにかなりそうなんです!』
「――分かった。でもこれ以上ヒントは出さないからな?」
『分かってます』
時刻は22時半。タイムリミットまであと1時間半。
たどり着けるはずはないんだ。
あんなヒント。
あってないようなヒント。
でも、尚は文句も言わず必死に探しているようだ。
尚のはぁはぁという荒い息遣いが聞こえる。
何も話さないまま1時間半が過ぎようとしている。もうすぐタイムリミットだ。
『梶本さん、あなたが兄からどういう風に話を訊いて、どう思ったのか分かりませんが、俺はあなたと話せて楽しかったです。最初はあなたにまたいい絵本を描いてもらいたくて、どうにか元気づけようって間違い電話を装って電話をしました。俺の声で、話であなたが楽しそうに笑ったり、俺の電話をコールを待たずに取ってくれたり、俺のどんな話でも馬鹿にする事なく真剣に聞いてくれたり…。あなたと電話ででも繋がっていると思うだけで…、嬉しかった。俺は―――』
「あなたが好きです」
突然耳に飛び込んできたその声は機械を通した物じゃなくて、直接の声。
「え?」
驚き顔を上げると、オレの前に若い男が立っていた。
丈の長いダウンジャケットを着て、耳にはイヤホン、手にはスマホを持っている。
どことなく横山に似ている。
―――尚だ。
『pppppppppp』と0時に鳴るようにセットしたタイマーが鳴った。
「よかったぁ…間に合ったぁ……」
はぁ…とその場にしゃがみこむ尚。
「もう梶本さんてばヒント鬼すぎ…っ」
「どうして…」
ここを見つけたんだ。
どうして。
信じられないものを見る目で尚を見ていると、尚は苦笑し頬をかいた。
「あーすみません。ずるしました」
「ずる…?」
しゃがんだままですっとオレのスマホを指さす。
「あなたのスマホから聞こえてくる音をたよりにここまで来ました」
「………」
尚はすっと立ち上がりオレのすぐ目の前に来た。
「お願いですから反則負けにしないで下さい。どんな手を使っても俺はあなたを捕まえたかった」
「―――なん…で?もうオレ絵本なんて……描けな…ぃ」
「梶本さんっ」
突然尚に抱きしめられた。
「すみません…俺、俺、本当にあなたの事が好きなんです…。途中から絵本を描いてもらう事よりあなたの声が聴きたくて…。ただ、あなたの声が聴きたくて電話していました」
――本当に…?
「俺はいつしかあなたに恋してたんです」
あぁ……!
オレたちは同じ想いだったのか…!
嬉しくて涙が零れる。
「オレも……オレも尚の事が…好き。さっきはごめん。尚の声が……聴きたい…」
そっと耳元に口を寄せ囁かれる言葉。
「好きです。大好きです。――愛してます」
あの時、間違い電話を取ってよかった。
キミが諦めずに探してくれてよかった。
キミと出会えてよかった。
クリスマスの日、電話だけだったオレたちが実際に会う事ができた。
こんなに素敵なクリスマスは初めてだ。
オレたちは抱き合ったまま色々な話をして、くすくすと笑い合った。
それからもオレたちは毎日暇を見つけては電話をしたり実際会ったり。
一日中遊んでさっき別れたばかりなのに、もうキミの声が聴きたい。
これからはキミの傍で絵本を描こう。キミと一緒なら描ける気がする。
オレの小さな幸せはキミの傍にある。
-終-
ヒント2、壁には大きな赤い靴。
ヒント3、イルミネーションが綺麗。
『通話はそのままでお願いします。俺がたどり着く前にあなたに何かあったらと思うと…心配でどうにかなりそうなんです!』
「――分かった。でもこれ以上ヒントは出さないからな?」
『分かってます』
時刻は22時半。タイムリミットまであと1時間半。
たどり着けるはずはないんだ。
あんなヒント。
あってないようなヒント。
でも、尚は文句も言わず必死に探しているようだ。
尚のはぁはぁという荒い息遣いが聞こえる。
何も話さないまま1時間半が過ぎようとしている。もうすぐタイムリミットだ。
『梶本さん、あなたが兄からどういう風に話を訊いて、どう思ったのか分かりませんが、俺はあなたと話せて楽しかったです。最初はあなたにまたいい絵本を描いてもらいたくて、どうにか元気づけようって間違い電話を装って電話をしました。俺の声で、話であなたが楽しそうに笑ったり、俺の電話をコールを待たずに取ってくれたり、俺のどんな話でも馬鹿にする事なく真剣に聞いてくれたり…。あなたと電話ででも繋がっていると思うだけで…、嬉しかった。俺は―――』
「あなたが好きです」
突然耳に飛び込んできたその声は機械を通した物じゃなくて、直接の声。
「え?」
驚き顔を上げると、オレの前に若い男が立っていた。
丈の長いダウンジャケットを着て、耳にはイヤホン、手にはスマホを持っている。
どことなく横山に似ている。
―――尚だ。
『pppppppppp』と0時に鳴るようにセットしたタイマーが鳴った。
「よかったぁ…間に合ったぁ……」
はぁ…とその場にしゃがみこむ尚。
「もう梶本さんてばヒント鬼すぎ…っ」
「どうして…」
ここを見つけたんだ。
どうして。
信じられないものを見る目で尚を見ていると、尚は苦笑し頬をかいた。
「あーすみません。ずるしました」
「ずる…?」
しゃがんだままですっとオレのスマホを指さす。
「あなたのスマホから聞こえてくる音をたよりにここまで来ました」
「………」
尚はすっと立ち上がりオレのすぐ目の前に来た。
「お願いですから反則負けにしないで下さい。どんな手を使っても俺はあなたを捕まえたかった」
「―――なん…で?もうオレ絵本なんて……描けな…ぃ」
「梶本さんっ」
突然尚に抱きしめられた。
「すみません…俺、俺、本当にあなたの事が好きなんです…。途中から絵本を描いてもらう事よりあなたの声が聴きたくて…。ただ、あなたの声が聴きたくて電話していました」
――本当に…?
「俺はいつしかあなたに恋してたんです」
あぁ……!
オレたちは同じ想いだったのか…!
嬉しくて涙が零れる。
「オレも……オレも尚の事が…好き。さっきはごめん。尚の声が……聴きたい…」
そっと耳元に口を寄せ囁かれる言葉。
「好きです。大好きです。――愛してます」
あの時、間違い電話を取ってよかった。
キミが諦めずに探してくれてよかった。
キミと出会えてよかった。
クリスマスの日、電話だけだったオレたちが実際に会う事ができた。
こんなに素敵なクリスマスは初めてだ。
オレたちは抱き合ったまま色々な話をして、くすくすと笑い合った。
それからもオレたちは毎日暇を見つけては電話をしたり実際会ったり。
一日中遊んでさっき別れたばかりなのに、もうキミの声が聴きたい。
これからはキミの傍で絵本を描こう。キミと一緒なら描ける気がする。
オレの小さな幸せはキミの傍にある。
-終-
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