リナ・セレネーレの物語

桜井あこ

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一年生

ロビーにて

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二〇三、二〇四、二〇五・・・・・・。

「この部屋だ」

先生に渡された鍵で扉を開ける。
昔の建物を再利用しているのがわかる、年月を経た壁や家具だ。けれども落ち着く。
嵐や土砂崩れを乗り越えてきたというとても立派な建物だ。
部屋割りは自由に組んで良かったので、私たちは仲良しの子と一緒になった。基本みんなそうだろう。

「この部屋に泊まるのかー」
「夜になったら恋バナしましょうよ」
「えー私枕投げしたい」
「枕投げのあとに恋バナは?」
「もしかしてそれって僕らも含まれてる?」
「なんでそんな当たり前のこと聞くんですか? 当然でしょ!」
「王子の好みも聞きたいし~」
「俺か? 俺よりフィンの方に聞け」
「王子がフィンさんを売った」

自由に集まりを決めていいとのことだったので、私、リリー、リンダ、フランメ、フィンさん、ガイル王子となった。
部屋は五人~六人のもので、本当はゲイルも入れたかったが彼は自分とよくつるむ平民の男子と低い階級の貴族と組んでいたので、心配はなさそうだし、こちらも罪悪感を感じることはなかった。

「大きな部屋~!」
「ちゃんと六人寝れそう」 

部屋に着いたからには早速荷解きだ。早いに越したことはない。

持ってきたものにはだいぶ性格が現れると思う。
リンダとフランメは宝石のようなアクセサリーに色とりどりの服。
リリーは英雄の窟やメドゥーサに関する本。
フィンさんはなんかよくわからん貴族って感じのもの。王子も似たりよったりで、優雅さがあった。
私はカメラを持ってきた。

(え・・・・・・服多すぎない・・・・・・?)リナ
(床が抜けなきゃなんでもいいや)リリー
(ラズベリーは相変わらず本か。変わり映えしないが彼女らしいな)ガイル王子
(貴族みたいなのがいっぱい~)フランメ
(私も貴族になった感じがするわ)リンダ
(リナのカメラよく使い込まれてる。親のを借りたのかな)フィン
↑これが荷解き中のみんなが思ったことです。

そのあとは軽く雑談をして、ロビーへと集まった。

◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯

「明後日行く英雄の窟はここから少し奥にある場所だ。そこに行く近くに博物館ぎあるからそこも立ち寄る。昼は途中で食べるから用意忘れるなよ。ここからは案内を担当してくれるヴェズラ・サンバーグさんに説明をしてもらう」

よろしくお願いします。と先生が頭を下げ、先生より幾分か若い青年が私たちの前に立った。

「みなさんはじめまして、ご紹介いただきましたヴェズラです。僕の高祖父が伝説の羊飼いなんですよ」

あ、この人がそうなのか。
宿泊学習前日、先生にその英雄の窟伝説の子孫に会えると聞き、全員楽しみにしていたのだ。
やや小柄だが身体の作りはしっかりとしていて、サラサラストレイトゥ~みたいな本当にサラサラの髪が美しい。

「今からみなさんに魔除け鈴をお配りします」

ダメだダメだ。説明をちゃんと聞かなくては。
細い糸に繋がれた小さな鈴、耳の近くで鳴らせば水滴の反響音のような澄んだ優しい音がした。柔らかな余韻が心地いい。

「それは森に潜む魔物が嫌う音を出します。首にかけて外さないでください」
「ここに魔物は来ないんですか?」

平民の生徒が心配そうに手を上げて質問した。
ヴェズラさんはにっこりと微笑む。

「そのことについては心配ありません。この森には魔物が嫌う植物が自生しているので、ここらには現れません」
「じゃあ魔除けの鈴をつけなくてもいいんじゃないですか?」
「実は、その植物は建物を劣化させてしまうのです。英雄の窟が崩れたりしてしまうので森の奥には生えていません」

全員が不安そうな顔をした。
もしかしたら魔物に襲われてしまうかもしれない、その可能性を考えたのだろう。

「ですので、今からみなさんに香り袋を作ってもらいます」

香り袋? それは香りのする袋、だよね?

「香り袋に魔除け鈴。この二つを持っていたら最強装備ですよ」

彼の手にはそれに該当するものがあり、まるで安心しろ。と言うような顔だった。

「それでは今から、明日使用する香り袋を作ってみましょうか」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この宿泊学習、四泊五日らしいです。多い方なのかな?
明日は自由散策です、森といっても結構発展してますよ。
ちなみにフランメたちの持ってきた大量の服はリナとリリーを着せ替えまくるため、らしいです。
登山なんて小さい頃行ったきりだな~。
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