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第6話 異世界でもロリ婚はよくないです
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狼は身構えると、真弓めがけて一気に飛び掛か・・・
「きゃあああああああああ!」
ビクッ
真弓のあげた悲鳴に驚いたのか、狼は飛び掛かる事無く・・・少し後ずさった。
しかしすぐ立て直し、再び襲い掛かる態勢になる。
「いやっ!こっち来ないで!」
ビクビクッ
再び後ずさる狼・・・
「え・・・これって・・・きゃっ!」
真弓が大きな声を出すと、また身をすくませる狼・・・あきらかに真弓の声に反応している。
しかし怯えているというわけではないようで、すぐにまた襲い掛かろうとしてくる。
この反応に真弓は覚えがあった・・・
昔実家で飼っていた犬、毛の色からついた名前はトリュフである。
トリュフがいつ何をしている時でも、真弓が声をかけるとそれまでの動きをキャンセルするので、面白がって声をかけまくって遊んだ・・・今思えばそれが幼少時の真弓のボイストレーニングになっていたのだろう。
目の前の狼はその犬の反応と綺麗に一致した。
(まさかトリュフも生まれ変わって・・・さすがにないか・・・)
狼は相変わらず血走った目でこちらを睨んでくる・・・記憶にある愛犬とはあきらかに別物だ。
(まぁ同じイヌ科ってことで、似た習性でもあるのかな・・・でもこれなら・・・)
「この馬鹿!駄犬っ!雑種がぁ!」
狼が身構えた瞬間を狙って声を出す、そのタイミングが合えば、狼は止まる・・・
それはまるで絵に合わせて台詞を言う・・・アフレコによく似ていた。
真弓の喉の調子はすこぶる良かった、いくらでも声が出せそうだ。
元々真弓は大きな声を出すのは得意なのだ。
昔とあるベテラン声優が「最近の若い声優さんはみんなうまいけど声量が足りないから、自分と一緒に録ろうとすると声量に差がありすぎて厳しい」と言っていた。
それを聞いた真弓はこれだ、と思った。
声に幅のない自分は声量を武器にしよう・・・そしていつかこの人と同じくらいの声量で共演しよう、と・・・
あの「ロリ婚」のオーディションに勝てたのも、必死に鍛えた声量のおかげだと真弓は思っている。
・・・それがまさか異世界でこんな形で役に立とうとは・・・
真弓の声によって狼は完全に抑え込まれていた。
(はやく諦めてくれないかな・・・)
だが真弓の表情に余裕はない。
大きな音にはいずれ耳が慣れる・・・簡単には慣れないように変化をつけながら声を発している真弓だが、それがいつまで有効なのかはわからない。
何か他に攻撃手段でもあれば良いのだが、そんなものはどこにもない。
しかしそんな膠着状態は唐突に破られることになる・・・
ガサガサ・・・
森の中からの新たな気配に、真弓は絶望を感じた。
さすがに二匹同時には抑えられない・・・
「ええと、なんとか・・・なんとかしないと・・・きゃっ!」
唐突に反転する真弓の視界・・・地面に打ち付けられる痛みとともに、真弓は飛び掛かってきた狼に押し倒されたのだと気づく・・・
致命的なミス、森からの気配に気を取られて対応が遅れたのだ。
もはや二匹目の登場を待つまでもなかった、真弓の力では狼を振りほどく事はかなわない。
(せっかく生まれ変わったのに、私もう死んじゃうんだ・・・ってうわ、獣くさい・・・ちょっと、涎垂らさないでよ・・・)
死ぬのは二度目だからか、真弓は妙に冷静だった。
以前より細くなった真弓の手足は、見た目通りの筋力しか発揮できず、狼の脚の一つも動かせない。
そしてついに真弓を嚙み殺すべく狼の咢が迫る・・・その時。
「たあああっ!」
ギャンッ
気迫のこもった謎の声・・・狼に抑え込まれていた身体が解放されたのを感じる。
見ると、狼は数メートル先の木に身体を叩きつけられていた。
そして真弓の側には金属の鎧を纏った人物が剣を構え、狼を睨みつけていた。
かなりのダメージを受けたのか、狼はよろよろと立ち上がると、踵を返し森の中へと走り去っていった・・・
「助かった・・・のかな?・・・あはは・・・」
真弓は安堵すると供に、妙な笑いが込み上げてきた。
(生きてる・・・私、生きてるよ・・・)
それは現代人が忘れてしまった生の実感というやつだろうか。
さっきの鎧の男は、老貴族の元へと駆け寄っていた。
「おおゲオルグ、遅かったではないか!」
「お一人で勝手に城を飛び出されるからです、皆がどれ程お探ししたか・・・道楽もたいがいにしてください侯爵」
あの貴族の部下なのだろうか、がっしりとした筋肉が均整の取れた肉体を覆っている。
絵に描いたような戦士・・・いや騎士なのだろうか?
「道楽ではないわい、我が侯爵家代々の使命であるぞ」
「年端もいかない少女と森で逢引とは、ずいぶんと洒落た使命でございますな」
「いや、それはじゃな・・・」
(年端もいかない少女って私のことかな?私今いくつくらいなんだろう・・・)
どうやら主従関係と言ってもそんなに厳格なものではないらしい。
老貴族・・・侯爵と呼ばれた人物の方が劣勢のようだ。
やはり異世界でもロリ婚は、あまりよろしくないらしい。
「奥方様は他界なさったとはいえ、エレスナーデお嬢様はどう思うでしょうな?
若い娘・・・それも自分より年下の娘に手を出したと知れば・・・」
「いやだから違う、そうではないのだ・・・よいかゲオルグよ、この娘は・・・」
(あ、この流れは・・・)
嫌な予感がした真弓は、慌てて二人の会話に割り込んだ。
「ま、マユミと申します!騎士様、先程は危ないところを助けていただきありがとうございます」
「ああ、気にしなくていい、民を守るのは騎士の務めだからな」
やっぱり騎士だったようだ。
騎士の務めというあたりで誇らしそうな笑顔を見せる・・・騎士の誇りとかそういうものに拘りそうだ。
「狼は追い払ったがまだここは危険だ、家まで送ろう
侯爵に何と言ってたぶらかされたのか知らんが、今日の事は忘れてもらえると助かる」
「あっ・・・え、ええと・・・」
(家とか無いんですけど・・・どうしよう・・・)
「何を言っておるゲオルグよ、そのお方は大切な客人、我が屋敷にお招きするのだ」
「侯爵・・・まさか本気でこの娘を・・・」
心の底から蔑む目で侯爵を見つめる騎士ゲオルグ。
「だから違うわい、そのお方こそは伝説の・・・」
「あー!違うから!私は英雄じゃないから!」
「英・・・雄・・・?」
ゲオルグは訝しげにマユミの方を見た・・・
「きゃあああああああああ!」
ビクッ
真弓のあげた悲鳴に驚いたのか、狼は飛び掛かる事無く・・・少し後ずさった。
しかしすぐ立て直し、再び襲い掛かる態勢になる。
「いやっ!こっち来ないで!」
ビクビクッ
再び後ずさる狼・・・
「え・・・これって・・・きゃっ!」
真弓が大きな声を出すと、また身をすくませる狼・・・あきらかに真弓の声に反応している。
しかし怯えているというわけではないようで、すぐにまた襲い掛かろうとしてくる。
この反応に真弓は覚えがあった・・・
昔実家で飼っていた犬、毛の色からついた名前はトリュフである。
トリュフがいつ何をしている時でも、真弓が声をかけるとそれまでの動きをキャンセルするので、面白がって声をかけまくって遊んだ・・・今思えばそれが幼少時の真弓のボイストレーニングになっていたのだろう。
目の前の狼はその犬の反応と綺麗に一致した。
(まさかトリュフも生まれ変わって・・・さすがにないか・・・)
狼は相変わらず血走った目でこちらを睨んでくる・・・記憶にある愛犬とはあきらかに別物だ。
(まぁ同じイヌ科ってことで、似た習性でもあるのかな・・・でもこれなら・・・)
「この馬鹿!駄犬っ!雑種がぁ!」
狼が身構えた瞬間を狙って声を出す、そのタイミングが合えば、狼は止まる・・・
それはまるで絵に合わせて台詞を言う・・・アフレコによく似ていた。
真弓の喉の調子はすこぶる良かった、いくらでも声が出せそうだ。
元々真弓は大きな声を出すのは得意なのだ。
昔とあるベテラン声優が「最近の若い声優さんはみんなうまいけど声量が足りないから、自分と一緒に録ろうとすると声量に差がありすぎて厳しい」と言っていた。
それを聞いた真弓はこれだ、と思った。
声に幅のない自分は声量を武器にしよう・・・そしていつかこの人と同じくらいの声量で共演しよう、と・・・
あの「ロリ婚」のオーディションに勝てたのも、必死に鍛えた声量のおかげだと真弓は思っている。
・・・それがまさか異世界でこんな形で役に立とうとは・・・
真弓の声によって狼は完全に抑え込まれていた。
(はやく諦めてくれないかな・・・)
だが真弓の表情に余裕はない。
大きな音にはいずれ耳が慣れる・・・簡単には慣れないように変化をつけながら声を発している真弓だが、それがいつまで有効なのかはわからない。
何か他に攻撃手段でもあれば良いのだが、そんなものはどこにもない。
しかしそんな膠着状態は唐突に破られることになる・・・
ガサガサ・・・
森の中からの新たな気配に、真弓は絶望を感じた。
さすがに二匹同時には抑えられない・・・
「ええと、なんとか・・・なんとかしないと・・・きゃっ!」
唐突に反転する真弓の視界・・・地面に打ち付けられる痛みとともに、真弓は飛び掛かってきた狼に押し倒されたのだと気づく・・・
致命的なミス、森からの気配に気を取られて対応が遅れたのだ。
もはや二匹目の登場を待つまでもなかった、真弓の力では狼を振りほどく事はかなわない。
(せっかく生まれ変わったのに、私もう死んじゃうんだ・・・ってうわ、獣くさい・・・ちょっと、涎垂らさないでよ・・・)
死ぬのは二度目だからか、真弓は妙に冷静だった。
以前より細くなった真弓の手足は、見た目通りの筋力しか発揮できず、狼の脚の一つも動かせない。
そしてついに真弓を嚙み殺すべく狼の咢が迫る・・・その時。
「たあああっ!」
ギャンッ
気迫のこもった謎の声・・・狼に抑え込まれていた身体が解放されたのを感じる。
見ると、狼は数メートル先の木に身体を叩きつけられていた。
そして真弓の側には金属の鎧を纏った人物が剣を構え、狼を睨みつけていた。
かなりのダメージを受けたのか、狼はよろよろと立ち上がると、踵を返し森の中へと走り去っていった・・・
「助かった・・・のかな?・・・あはは・・・」
真弓は安堵すると供に、妙な笑いが込み上げてきた。
(生きてる・・・私、生きてるよ・・・)
それは現代人が忘れてしまった生の実感というやつだろうか。
さっきの鎧の男は、老貴族の元へと駆け寄っていた。
「おおゲオルグ、遅かったではないか!」
「お一人で勝手に城を飛び出されるからです、皆がどれ程お探ししたか・・・道楽もたいがいにしてください侯爵」
あの貴族の部下なのだろうか、がっしりとした筋肉が均整の取れた肉体を覆っている。
絵に描いたような戦士・・・いや騎士なのだろうか?
「道楽ではないわい、我が侯爵家代々の使命であるぞ」
「年端もいかない少女と森で逢引とは、ずいぶんと洒落た使命でございますな」
「いや、それはじゃな・・・」
(年端もいかない少女って私のことかな?私今いくつくらいなんだろう・・・)
どうやら主従関係と言ってもそんなに厳格なものではないらしい。
老貴族・・・侯爵と呼ばれた人物の方が劣勢のようだ。
やはり異世界でもロリ婚は、あまりよろしくないらしい。
「奥方様は他界なさったとはいえ、エレスナーデお嬢様はどう思うでしょうな?
若い娘・・・それも自分より年下の娘に手を出したと知れば・・・」
「いやだから違う、そうではないのだ・・・よいかゲオルグよ、この娘は・・・」
(あ、この流れは・・・)
嫌な予感がした真弓は、慌てて二人の会話に割り込んだ。
「ま、マユミと申します!騎士様、先程は危ないところを助けていただきありがとうございます」
「ああ、気にしなくていい、民を守るのは騎士の務めだからな」
やっぱり騎士だったようだ。
騎士の務めというあたりで誇らしそうな笑顔を見せる・・・騎士の誇りとかそういうものに拘りそうだ。
「狼は追い払ったがまだここは危険だ、家まで送ろう
侯爵に何と言ってたぶらかされたのか知らんが、今日の事は忘れてもらえると助かる」
「あっ・・・え、ええと・・・」
(家とか無いんですけど・・・どうしよう・・・)
「何を言っておるゲオルグよ、そのお方は大切な客人、我が屋敷にお招きするのだ」
「侯爵・・・まさか本気でこの娘を・・・」
心の底から蔑む目で侯爵を見つめる騎士ゲオルグ。
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