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第28話 もうすぐ雛が巣立つ時です
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「まさかあなたが女性だったなんて・・・」
「なんなら触ってくれても構わないよ?」
パンプル・ムゥスは女性である。
未だにその事実が信じがたいといった様子のエレスナーデ、この場にいる人間の中では彼女が最も付き合いが長いのだが、彼女を女性と思ったことは一度もなかったようだ。
パンプルはそんなエレスナーデの手に自らの胸元を押し付ける・・・女性独特の柔らかさがあった。
「たしかに、男のふりをした方が都合が良いってのはわかるが・・・」
一件奇抜なだけに思えたその服装も、女性としての体型をうまくごまかしてる・・・少し感心しながらヴィーゲルがつぶやいた・・・
彼はそのあたりの事情を察していた・・・女性であるというだけで不利になるような職業は存在するのだ。
美術界も女性が進出してくる事が快く思われない業界なのだろう。
「そうだね、男として振る舞うようになってからはだいぶやりやすくなったよ、それまでは絵に興味を持ってもボクが描いているのを見て去ってしまうような輩ばかりだった」
(店員さんが女の子だとえっちな本が買えないみたいなやつかな・・・)
話を聞いて二人が納得する中、一人そんな事を思い浮かべるマユミだった。
「事情はわかったけれど、さすがに何もなしってわけにはいかないわよ」
「だろうね・・・好きにするといい」
だがその罪は罪、として罰するつもりらしいエレスナーデ。
神妙な顔でうなずくパンプル、覚悟は出来ているようだ。
「ナーデ、処刑はしないよね?あと、絵が描けなくなるような事は・・・」
「わかってるわよ、でも彼女の身柄は拘束させてもらうわよ」
そう言ってパンプルを連行するエレスナーデ、部屋の中無造作に散らばっている絵も後で回収させよう・・・そう思いつつ部屋を出ようとした彼女の目に一枚の絵が映った。
(なにこれかわいい)
例の猫耳猫ポーズのマユミだった。
「こ、この絵は証拠物件として没収するわ!」
いっそ完成品を描かせようか・・・そんなことが脳裏をよぎったエレスナーデだった。
その後、無事に帰還を果たしたマユミはお騒がせしてごめんなさい、と関係各所に謝罪して回った。
被害者本人が無事をアピールし、事件は内々に処理するという事になったのだ。
門の封鎖も元々通行の少ない夜間だけで済んだので、たいした被害にはならなかった。
今回の件で迷惑をかけた者達の元には後日、美しい少女の絵が届けられたという・・・パンプルは罰としてその絵を描かされたのだ。
たまたま足止めを食らっていた商人などは、その絵一枚の方が積荷より高く売れると喜んでいた。
これにて、一件落着である。
・・・・・・
「おはようナーデ、今日は・・・って、そ、その絵は・・・」
「ええ、パンプルに描いてもらったわ・・・やはり彼女の才能は、本物ね」
やはりエレスナーデは自分用に一枚描かせたらしい。
・・・彼女の部屋に飾られたその美しい絵を見るたびに、少し複雑な気分になるマユミであった。
「ああそうだマユミ、近々一緒に出かけるわよ」
その日もいつものように、慣れた手付きでマユミの化粧と着替えをしながらエレスナーデが語りかける。
「そうなんだ、この街もまだ見てない所が多いもんね」
どこかに名所でもあるのだろうか・・・マユミがそんな風に考えていると・・・
「そうじゃないわ、街の外に出るのよ」
「えっ外って言うと・・・あの森とか?」
街に西側に広がる大森林、グリュモールの森・・・マユミがこの世界に現れた場所でもある。
そこでピクニックでもするのだろうか・・・それとも異世界についての調査?
だが、そのどちらでもなかった。
「いいえ、もっと遠くよ・・・港町オルトレマーナ・・・前に海を見たいって言ってたでしょう?」
「あ、侯爵様が行っても良いって?」
「ええ、それで色々と手配しているの、少し長旅になるからマユミも何か必要な物があれば遠慮なく言うのよ」
港町オルトレマーナまでは船で川を下って3日、往復となると10日は掛かる道程だ。
このところエレスナーデが一人であちこち行っていたのはその準備だったようだ。
「うーん、今は特に思いつかないな・・・後で思いつくかもしれないけど・・・」
長旅の経験がないマユミには必要な物と言われても、思いつくものがなかった。
あれが必要だった、と思った時にはもう手遅れになっていそうだ。
「出発はいつごろの予定なの?」
「そうね、手配した船が着くのが・・・早くてあと4、5日かしら」
結構近い・・・準備はともかく街の人達には挨拶をしておこう。
特にヴィーゲルはそのうちこの街を発つと言っていたので、その日でお別れになりそうだ。
「・・・というわけなので先生、私がんばりますので、全部詰め込むつもりでがっつりお願いします」
「いや、もうそんなに教える事も残ってないんだが・・・」
これでもかとやる気に溢れ、がっついてくるマユミに気圧されるヴィーゲルだった。
「しかしオルトレマーナか・・・あそこはここと比べても人が多いが、治安が悪いから気を付けろよ」
「は、はい・・・」
つい先日拉致られた身として本当に気を付けなければならない。
ヴィーゲルとしてもそこが不安だったので、楽器だけではなく護身術の類を教えることにする。
「非力なお前は掴まれたら終わりだからな、刃物の一つも携帯した方が良い」
マユミでも扱えそうな軽いナイフを見繕い、その扱いを叩き込む。
付け焼刃だが、捕まれた時に振りほどく役には立つだろう。
「馴染みの店もいくつか教えておくから、何かあったらそこで俺の名前を出すといいだろう」
「ありがとうございます」
出発までの数日、ヴィーゲルは本当にマユミに必要な事を出来る限り教えてくれた。
自分は良い師匠に恵まれたと、マユミは心から感謝した。
・・・そして、旅立ちの日がやって来る。
「なんなら触ってくれても構わないよ?」
パンプル・ムゥスは女性である。
未だにその事実が信じがたいといった様子のエレスナーデ、この場にいる人間の中では彼女が最も付き合いが長いのだが、彼女を女性と思ったことは一度もなかったようだ。
パンプルはそんなエレスナーデの手に自らの胸元を押し付ける・・・女性独特の柔らかさがあった。
「たしかに、男のふりをした方が都合が良いってのはわかるが・・・」
一件奇抜なだけに思えたその服装も、女性としての体型をうまくごまかしてる・・・少し感心しながらヴィーゲルがつぶやいた・・・
彼はそのあたりの事情を察していた・・・女性であるというだけで不利になるような職業は存在するのだ。
美術界も女性が進出してくる事が快く思われない業界なのだろう。
「そうだね、男として振る舞うようになってからはだいぶやりやすくなったよ、それまでは絵に興味を持ってもボクが描いているのを見て去ってしまうような輩ばかりだった」
(店員さんが女の子だとえっちな本が買えないみたいなやつかな・・・)
話を聞いて二人が納得する中、一人そんな事を思い浮かべるマユミだった。
「事情はわかったけれど、さすがに何もなしってわけにはいかないわよ」
「だろうね・・・好きにするといい」
だがその罪は罪、として罰するつもりらしいエレスナーデ。
神妙な顔でうなずくパンプル、覚悟は出来ているようだ。
「ナーデ、処刑はしないよね?あと、絵が描けなくなるような事は・・・」
「わかってるわよ、でも彼女の身柄は拘束させてもらうわよ」
そう言ってパンプルを連行するエレスナーデ、部屋の中無造作に散らばっている絵も後で回収させよう・・・そう思いつつ部屋を出ようとした彼女の目に一枚の絵が映った。
(なにこれかわいい)
例の猫耳猫ポーズのマユミだった。
「こ、この絵は証拠物件として没収するわ!」
いっそ完成品を描かせようか・・・そんなことが脳裏をよぎったエレスナーデだった。
その後、無事に帰還を果たしたマユミはお騒がせしてごめんなさい、と関係各所に謝罪して回った。
被害者本人が無事をアピールし、事件は内々に処理するという事になったのだ。
門の封鎖も元々通行の少ない夜間だけで済んだので、たいした被害にはならなかった。
今回の件で迷惑をかけた者達の元には後日、美しい少女の絵が届けられたという・・・パンプルは罰としてその絵を描かされたのだ。
たまたま足止めを食らっていた商人などは、その絵一枚の方が積荷より高く売れると喜んでいた。
これにて、一件落着である。
・・・・・・
「おはようナーデ、今日は・・・って、そ、その絵は・・・」
「ええ、パンプルに描いてもらったわ・・・やはり彼女の才能は、本物ね」
やはりエレスナーデは自分用に一枚描かせたらしい。
・・・彼女の部屋に飾られたその美しい絵を見るたびに、少し複雑な気分になるマユミであった。
「ああそうだマユミ、近々一緒に出かけるわよ」
その日もいつものように、慣れた手付きでマユミの化粧と着替えをしながらエレスナーデが語りかける。
「そうなんだ、この街もまだ見てない所が多いもんね」
どこかに名所でもあるのだろうか・・・マユミがそんな風に考えていると・・・
「そうじゃないわ、街の外に出るのよ」
「えっ外って言うと・・・あの森とか?」
街に西側に広がる大森林、グリュモールの森・・・マユミがこの世界に現れた場所でもある。
そこでピクニックでもするのだろうか・・・それとも異世界についての調査?
だが、そのどちらでもなかった。
「いいえ、もっと遠くよ・・・港町オルトレマーナ・・・前に海を見たいって言ってたでしょう?」
「あ、侯爵様が行っても良いって?」
「ええ、それで色々と手配しているの、少し長旅になるからマユミも何か必要な物があれば遠慮なく言うのよ」
港町オルトレマーナまでは船で川を下って3日、往復となると10日は掛かる道程だ。
このところエレスナーデが一人であちこち行っていたのはその準備だったようだ。
「うーん、今は特に思いつかないな・・・後で思いつくかもしれないけど・・・」
長旅の経験がないマユミには必要な物と言われても、思いつくものがなかった。
あれが必要だった、と思った時にはもう手遅れになっていそうだ。
「出発はいつごろの予定なの?」
「そうね、手配した船が着くのが・・・早くてあと4、5日かしら」
結構近い・・・準備はともかく街の人達には挨拶をしておこう。
特にヴィーゲルはそのうちこの街を発つと言っていたので、その日でお別れになりそうだ。
「・・・というわけなので先生、私がんばりますので、全部詰め込むつもりでがっつりお願いします」
「いや、もうそんなに教える事も残ってないんだが・・・」
これでもかとやる気に溢れ、がっついてくるマユミに気圧されるヴィーゲルだった。
「しかしオルトレマーナか・・・あそこはここと比べても人が多いが、治安が悪いから気を付けろよ」
「は、はい・・・」
つい先日拉致られた身として本当に気を付けなければならない。
ヴィーゲルとしてもそこが不安だったので、楽器だけではなく護身術の類を教えることにする。
「非力なお前は掴まれたら終わりだからな、刃物の一つも携帯した方が良い」
マユミでも扱えそうな軽いナイフを見繕い、その扱いを叩き込む。
付け焼刃だが、捕まれた時に振りほどく役には立つだろう。
「馴染みの店もいくつか教えておくから、何かあったらそこで俺の名前を出すといいだろう」
「ありがとうございます」
出発までの数日、ヴィーゲルは本当にマユミに必要な事を出来る限り教えてくれた。
自分は良い師匠に恵まれたと、マユミは心から感謝した。
・・・そして、旅立ちの日がやって来る。
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