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第53話 歌の妖精です
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朝靄に霞む野営地。
馬車の中に作られた簡易寝台でマユミは目を覚ました。
・・・普段は座席に収納されている折り畳み式の簡易寝台だが、その寝心地は悪くなかった。
一見して他と変わらない普通の見た目に反して、実は高級な馬車なのかもしれない。
マユミは起きて早々に竪琴を準備する・・・なにか新しい曲の一つも思いつかないものか。
とりあえず色々音を出してみよう・・・そう思ってマユミが弦に指を掛けたその時・・・
・・・ララ・・・ラ・・・ララ~・・・
(この声・・・誰かが歌ってる?)
どこからか声がする・・・歌声のような・・・靄の向こうで誰かが歌っているのだろうか?
(まさか・・・『海の乙女』みたいなのがこの辺りにも・・・)
たしか『海の乙女』では歌のする方へ行くのが正解だったはず。
マユミは歌声に誘われるままに歌のする方へと向かった・・・すると・・・
「ララララ~♪ララランララ~♪ラ~ララ~♪」
一本の木の根元に腰かけ、その少女は歌っていた。
(あれは歌の妖精・・・じゃない、ミーアちゃんだ)
その姿からは妖精の姫の役をやっていた舞台の事が思い出された。
木の下で歌う彼女の姿は、とても様になっていた。
そして、その歌声はとても・・・
(上手い・・・)
思わず聞き入ってしまうマユミだったが、ミーアはすぐに気付いたようだ。
「マユミ、おはよう」
「あ、うん・・・おはよう」
・・・出来ればもっと聞いていたかったが、仕方ない。
「ミーアちゃん、今の歌って・・・」
「歌姫だから、歌った方が良いと思って・・・」
「まさか・・・『二人の歌姫』の歌を・・・ミーアちゃんが考えたの?」
まさか即興の作曲・・・だとしたら音楽面でもミーアは天才だ。
しかし、ミーアはマユミのその質問に首を振った。
「お母さんが昔歌ってたのを思い出してた・・・この歌、どうかな?」
元々は妖精族に伝わる森の歌なのだが、当時のミーアは今よりも更に幼かったのでうろ覚え・・・まして歌詞など覚えていなかった。
それでも話の雰囲気に合うと思って、一生懸命思い出していたのだ。
「うん、いい曲だね・・・」
(ミーアちゃんのお母さんか・・・会ってみたかったな・・・)
きっと素敵な人だったんだろう・・・あれだけつらい目に合っても素直に育っていたミーアを見ていればわかる。
「じゃあ、マユミも歌おう?」
ミーアの母について思いを巡らしていたマユミには、一瞬何を言われたのかわからなかった。
「え・・・」
「一緒に、歌おう?ラ~ララ~♪」
そして当たり前のように歌いだすミーア。
慌ててマユミも歌おうとするが・・・
「ら、ら~ら~ら~♪」
「マユミ、違う!ラ~ララ~♪」
「ら~らら~♪」
・・・彼女のレッスンはなかなか厳しかった。
くたくたになって馬車に戻ってきたマユミ達をエレスナーデが待ち構える。
「ふふふっ、今日はどの服を着せようかしら・・・」
彼女は港町でマユミとミーアの服をたくさん買い込んでいたのだ。
・・・その中には二人で仕事することを見越したのか、お揃いのデザインの服もあった。
どの服にしようか、しばし考えた彼女は商人達に三姉妹だと思われていたのを思い出す。
「ちょうど色違いで三人分買った服があったわ、これにしましょう」
・・・エレスナーデは赤、マユミは青、ミーアには緑。
色とサイズは違うものの服のデザインは同じ。
この服で三人が並ぶと、より一層三姉妹という感じが出る。
「マユミ、ミーア、私をお姉様と呼んでもよろしくてよ?」
などと嘯くエレスナーデ・・・すっかりご満悦のようだ。
「や、さすがにそれは・・・ちょっと・・・」
「えっ・・・」
難色を示すマユミ、エレスナーデはどこか寂しげだ。
「あ、でもミーアちゃんにお姉ちゃんとか呼ばれてみたいかも・・・」
「お姉・・・ちゃん?」
((か、かわいい))
首をかしげながら、とりあえず言ってみたミーア。
それを見てまったく同じ反応を示すマユミとエレスナーデだった。
その後、商人達と一緒に朝食を食べる・・・そろそろ出発の時だ。
「ではお嬢様方、良い旅を・・・」
「ええ、皆さんもお元気で・・・」
お互いの来た方向へと馬車が進んでいく・・・
互いの馬車はどんどん遠ざかっていき・・・すぐに見えなくなった。
去りゆく商人達の馬車の中では・・・
「しかし、美しい姉妹だったな・・・」
「噂に聞いた異世界の少女とやらも、あれくらい綺麗なのかねぇ」
「いやいや、エレスナーデさん程の美女じゃないだろう」
「たしか黒髪の美少女って話だろ?マユミちゃんみたいな感じなんじゃないか?」
「それなら俺は断然マユミちゃんを選ぶな、声まで可愛いし」
「声ってならミーアちゃんの歌声聞いたか?あれは綺麗だった・・・」
「お前ミーアちゃん派かよ・・・」
「いいいや、あの子を見てると家に置いてきた娘を思い出すんだよ!」
「お前んとこの芋娘と比べちゃミーアちゃんに失礼だろ」
「誰が芋娘だ、うちの子だってなぁ・・・」
港町に着くまで、彼らはそんな会話に夢中になっていた・・・終始にぎやかな商人達だ。
一方、マユミ達はというと・・・
「ラ~ララ~♪ララ~ラララ~♪」
「ら~ららら~♪ら~ららら~♪」
「・・・マユミ、ぜんぜん違う」
「ふぇぇ・・・」
ミーアによる歌のレッスンが続いていた・・・
途中まで黙って聞いていたエレスナーデだが、ふいにその疑問を口にする。
「その歌だけど・・・歌詞はないの?」
その質問に、ミーアの表情が陰る。
「思い出せなくて・・・ごめんなさい」
「あ、いいのよ、ミーアちゃんは悪くないわ」
「昔の話だろうし・・・しょうがないよ」
泣き出すと思ったのか、慌ててフォローする二人だが・・・
「でも歌詞は、あった方が良いと思うから・・・」
ミーアはそのことで真面目に悩んでいるようだった。
・・・しかし、どうしても思い出せないのだ。
真剣に思い悩む彼女を見て、エレスナーデは決断する・・・
「・・・わかったわ、歌詞は私に任せなさい」
「ナーデ?」
「わ、私も何かしたいと思っていたのよ・・・だから二人は練習に専念なさい」
これまでマユミの仕事をただ見てるだけになっていて悔しい思いをしていたのは事実だ。
もう話の内容は頭に入っているし、歌詞を考えるくらいなら出来るのではないか・・・そう思ったのだ。
「ナーデ、ありがとう」
「うまく出来るかはわからないわよ、自信はないですからね」
「ナーデなら大丈夫だよ」
「うん、ナーデを信じてる・・・」
「しょ、しょうがないわね・・・なるべく早く仕上げるわ」
二人に真っ直ぐ見つめられて照れたのか、エレスナーデはそっぽを向いてしまった。
・・・色々と器用なエレスナーデの事だ、きっと良い歌詞を用意してくれるに違いない。
二人からそんなプレッシャーをひしひしと感じるエレスナーデだった。
「じゃあ私たちは練習がんばろう」
「うん、マユミ、歌はやく覚えて」
「ふぇぇ・・・」
涙目になるマユミ・・・その後も歌の練習は続いたのだった。
馬車の中に作られた簡易寝台でマユミは目を覚ました。
・・・普段は座席に収納されている折り畳み式の簡易寝台だが、その寝心地は悪くなかった。
一見して他と変わらない普通の見た目に反して、実は高級な馬車なのかもしれない。
マユミは起きて早々に竪琴を準備する・・・なにか新しい曲の一つも思いつかないものか。
とりあえず色々音を出してみよう・・・そう思ってマユミが弦に指を掛けたその時・・・
・・・ララ・・・ラ・・・ララ~・・・
(この声・・・誰かが歌ってる?)
どこからか声がする・・・歌声のような・・・靄の向こうで誰かが歌っているのだろうか?
(まさか・・・『海の乙女』みたいなのがこの辺りにも・・・)
たしか『海の乙女』では歌のする方へ行くのが正解だったはず。
マユミは歌声に誘われるままに歌のする方へと向かった・・・すると・・・
「ララララ~♪ララランララ~♪ラ~ララ~♪」
一本の木の根元に腰かけ、その少女は歌っていた。
(あれは歌の妖精・・・じゃない、ミーアちゃんだ)
その姿からは妖精の姫の役をやっていた舞台の事が思い出された。
木の下で歌う彼女の姿は、とても様になっていた。
そして、その歌声はとても・・・
(上手い・・・)
思わず聞き入ってしまうマユミだったが、ミーアはすぐに気付いたようだ。
「マユミ、おはよう」
「あ、うん・・・おはよう」
・・・出来ればもっと聞いていたかったが、仕方ない。
「ミーアちゃん、今の歌って・・・」
「歌姫だから、歌った方が良いと思って・・・」
「まさか・・・『二人の歌姫』の歌を・・・ミーアちゃんが考えたの?」
まさか即興の作曲・・・だとしたら音楽面でもミーアは天才だ。
しかし、ミーアはマユミのその質問に首を振った。
「お母さんが昔歌ってたのを思い出してた・・・この歌、どうかな?」
元々は妖精族に伝わる森の歌なのだが、当時のミーアは今よりも更に幼かったのでうろ覚え・・・まして歌詞など覚えていなかった。
それでも話の雰囲気に合うと思って、一生懸命思い出していたのだ。
「うん、いい曲だね・・・」
(ミーアちゃんのお母さんか・・・会ってみたかったな・・・)
きっと素敵な人だったんだろう・・・あれだけつらい目に合っても素直に育っていたミーアを見ていればわかる。
「じゃあ、マユミも歌おう?」
ミーアの母について思いを巡らしていたマユミには、一瞬何を言われたのかわからなかった。
「え・・・」
「一緒に、歌おう?ラ~ララ~♪」
そして当たり前のように歌いだすミーア。
慌ててマユミも歌おうとするが・・・
「ら、ら~ら~ら~♪」
「マユミ、違う!ラ~ララ~♪」
「ら~らら~♪」
・・・彼女のレッスンはなかなか厳しかった。
くたくたになって馬車に戻ってきたマユミ達をエレスナーデが待ち構える。
「ふふふっ、今日はどの服を着せようかしら・・・」
彼女は港町でマユミとミーアの服をたくさん買い込んでいたのだ。
・・・その中には二人で仕事することを見越したのか、お揃いのデザインの服もあった。
どの服にしようか、しばし考えた彼女は商人達に三姉妹だと思われていたのを思い出す。
「ちょうど色違いで三人分買った服があったわ、これにしましょう」
・・・エレスナーデは赤、マユミは青、ミーアには緑。
色とサイズは違うものの服のデザインは同じ。
この服で三人が並ぶと、より一層三姉妹という感じが出る。
「マユミ、ミーア、私をお姉様と呼んでもよろしくてよ?」
などと嘯くエレスナーデ・・・すっかりご満悦のようだ。
「や、さすがにそれは・・・ちょっと・・・」
「えっ・・・」
難色を示すマユミ、エレスナーデはどこか寂しげだ。
「あ、でもミーアちゃんにお姉ちゃんとか呼ばれてみたいかも・・・」
「お姉・・・ちゃん?」
((か、かわいい))
首をかしげながら、とりあえず言ってみたミーア。
それを見てまったく同じ反応を示すマユミとエレスナーデだった。
その後、商人達と一緒に朝食を食べる・・・そろそろ出発の時だ。
「ではお嬢様方、良い旅を・・・」
「ええ、皆さんもお元気で・・・」
お互いの来た方向へと馬車が進んでいく・・・
互いの馬車はどんどん遠ざかっていき・・・すぐに見えなくなった。
去りゆく商人達の馬車の中では・・・
「しかし、美しい姉妹だったな・・・」
「噂に聞いた異世界の少女とやらも、あれくらい綺麗なのかねぇ」
「いやいや、エレスナーデさん程の美女じゃないだろう」
「たしか黒髪の美少女って話だろ?マユミちゃんみたいな感じなんじゃないか?」
「それなら俺は断然マユミちゃんを選ぶな、声まで可愛いし」
「声ってならミーアちゃんの歌声聞いたか?あれは綺麗だった・・・」
「お前ミーアちゃん派かよ・・・」
「いいいや、あの子を見てると家に置いてきた娘を思い出すんだよ!」
「お前んとこの芋娘と比べちゃミーアちゃんに失礼だろ」
「誰が芋娘だ、うちの子だってなぁ・・・」
港町に着くまで、彼らはそんな会話に夢中になっていた・・・終始にぎやかな商人達だ。
一方、マユミ達はというと・・・
「ラ~ララ~♪ララ~ラララ~♪」
「ら~ららら~♪ら~ららら~♪」
「・・・マユミ、ぜんぜん違う」
「ふぇぇ・・・」
ミーアによる歌のレッスンが続いていた・・・
途中まで黙って聞いていたエレスナーデだが、ふいにその疑問を口にする。
「その歌だけど・・・歌詞はないの?」
その質問に、ミーアの表情が陰る。
「思い出せなくて・・・ごめんなさい」
「あ、いいのよ、ミーアちゃんは悪くないわ」
「昔の話だろうし・・・しょうがないよ」
泣き出すと思ったのか、慌ててフォローする二人だが・・・
「でも歌詞は、あった方が良いと思うから・・・」
ミーアはそのことで真面目に悩んでいるようだった。
・・・しかし、どうしても思い出せないのだ。
真剣に思い悩む彼女を見て、エレスナーデは決断する・・・
「・・・わかったわ、歌詞は私に任せなさい」
「ナーデ?」
「わ、私も何かしたいと思っていたのよ・・・だから二人は練習に専念なさい」
これまでマユミの仕事をただ見てるだけになっていて悔しい思いをしていたのは事実だ。
もう話の内容は頭に入っているし、歌詞を考えるくらいなら出来るのではないか・・・そう思ったのだ。
「ナーデ、ありがとう」
「うまく出来るかはわからないわよ、自信はないですからね」
「ナーデなら大丈夫だよ」
「うん、ナーデを信じてる・・・」
「しょ、しょうがないわね・・・なるべく早く仕上げるわ」
二人に真っ直ぐ見つめられて照れたのか、エレスナーデはそっぽを向いてしまった。
・・・色々と器用なエレスナーデの事だ、きっと良い歌詞を用意してくれるに違いない。
二人からそんなプレッシャーをひしひしと感じるエレスナーデだった。
「じゃあ私たちは練習がんばろう」
「うん、マユミ、歌はやく覚えて」
「ふぇぇ・・・」
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