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22 登校②
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自転車の荷台にまひるさんがちょこんと腰かけ、僕のワイシャツをきゅっと握る。
女の子との二人乗り――まひるさんとの二人乗り。
なんだか緊張してきた。
事故を起こすようなことがあってはいけないので、安全運転を心掛け、学校へと向かっていく。
しばらくの間言葉を交わさなかったが、不意にまひるさんから質問された。
「りょーすけって、いつもこのくらいの時間に家出るの?」
「うん。寝坊しなければね」
「へぇー、そーなんだ……。うん、わかった」
…………。
わかったというのはどういうことなのだろうか。これからも同じようなことがあるということなのだろうか。
もしそうなら嬉しいけれど、それだとまひるさんが遠回りすることになってしまう……。
「良かったらなんだけど……明日から朝まひるさんの家に迎えに行くから、一緒に登校しない?」
「えっ……」
背中から驚きを内包した声。そして訪れる沈黙。
二人乗りしているこの状況では、まひるさんがどんな表情をしているのか確認できない。
二人の間に漂う、なんとなく気まずい雰囲気。
このお誘いはまずかったかな……。
今からでも誤魔化すか?
茶化して有耶無耶に――などと考えていると。
「そんなこと言ってくれるなんて……うれしいな……」
背後から聞こえた呟き。
それは、風に消えてしまいそうなほど小さな声。
だけど、なんだかいつもと違う色を帯びているように感じて。
思わず自転車を止めた。
「いいの?」
そう聞き返しながら、まひるさんの方へと振り返る。
まひるさんはお菓子を食べているときのように、ニコニコしていた。
そして……。
「うん。一緒に行こうねー」
先程の呟きとは違う、普段通りののんびりとした口調でまひるさんが答えた。
その返事に安心し、再び自転車をこぎ始める。
そして、まひるさんと他愛のない会話をしながら学校へと向かった。
女の子との二人乗り――まひるさんとの二人乗り。
なんだか緊張してきた。
事故を起こすようなことがあってはいけないので、安全運転を心掛け、学校へと向かっていく。
しばらくの間言葉を交わさなかったが、不意にまひるさんから質問された。
「りょーすけって、いつもこのくらいの時間に家出るの?」
「うん。寝坊しなければね」
「へぇー、そーなんだ……。うん、わかった」
…………。
わかったというのはどういうことなのだろうか。これからも同じようなことがあるということなのだろうか。
もしそうなら嬉しいけれど、それだとまひるさんが遠回りすることになってしまう……。
「良かったらなんだけど……明日から朝まひるさんの家に迎えに行くから、一緒に登校しない?」
「えっ……」
背中から驚きを内包した声。そして訪れる沈黙。
二人乗りしているこの状況では、まひるさんがどんな表情をしているのか確認できない。
二人の間に漂う、なんとなく気まずい雰囲気。
このお誘いはまずかったかな……。
今からでも誤魔化すか?
茶化して有耶無耶に――などと考えていると。
「そんなこと言ってくれるなんて……うれしいな……」
背後から聞こえた呟き。
それは、風に消えてしまいそうなほど小さな声。
だけど、なんだかいつもと違う色を帯びているように感じて。
思わず自転車を止めた。
「いいの?」
そう聞き返しながら、まひるさんの方へと振り返る。
まひるさんはお菓子を食べているときのように、ニコニコしていた。
そして……。
「うん。一緒に行こうねー」
先程の呟きとは違う、普段通りののんびりとした口調でまひるさんが答えた。
その返事に安心し、再び自転車をこぎ始める。
そして、まひるさんと他愛のない会話をしながら学校へと向かった。
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