[完結]すりーぴーがーる

深山ナオ

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23 勇気との会話

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 僕が転校してきてから――まひるさんと出会ってから、もうすぐ一か月が経つ。
 一か月。
 学校になれるのには充分な時間。
 人間関係を築くのにも、まあ、充分な時間。
 でも。
 人を好きになるのには――。

 なんて、変な考え事をしてしまうのは、やっぱり授業が退屈だからだろう。
 うん。きっとそう。
 
 ちらりと隣の席を見る。
 机に枕を置いて、そこに頬をうずめてぐっすり。
 まひるさんは今日もマイペースだ。
 
 ♢ 
 
「お前、大空と付き合ってるのか?」

 体育の前、更衣室で着替えている最中に、勇気が質問してきた。

「いや、付き合ってないよ」
「なんだ、まだなのか」

 呆れたという風にため息をつく勇気。

「何でそんなこと聞くんだ?」
「いや、縁日の日にお前らが二人で歩いてるのを見たって聞いてさ」
「あの日は熊谷さんも入れた三人で回る予定だったんだ」
「かー! 両手に花かよ。羨ましいね!」

 勇気がおでこに片手を当てて、大げさにリアクションを取る。
 
「まあ、それはいいや。それよりも」
 勇気がにやけ顔になる。
「いつ告白するんだ?」
「こ、告白って……」

 突然言われて、言葉に詰まる。

「好きなんだろ? 大空のこと」
「好き……なのかな」
「好きでもない女子と、一緒に昼飯食ったり、縁日まわったりしてるのか?」
「そういうわけじゃないけど……」
「好きでもない女子のことを、授業中にチラチラ見てるのか?」
「なっ、僕そんなことしてるの⁉」
「ああ」

 勇気が頷く。
 マジかよ。自覚なかった……。
 まひるさんに気付かれてないといいな。
 …………。
 気付かれてないな。
 まひるさん、いつも寝てるもん。

「……でも、出会ってから、まだ一か月だよ?」
「いいんじゃねえか、別に」
 勇気がさらっと言ってのける。
「というか、早い方がいいんじゃないのか? もう高二の六月。来年は受験勉強で、ろくにデートもできないだろ。気持ちが決まってるんだったら、早めに告白しといたほうがいいんじゃないか?」
「……確かに」
「まあ、かそうとしてるわけじゃないんだけどな。恋人になる前の期間も大切だし」
「恋人になる前の期間、か……」
 どうだろうか。
 一か月――あっという間だったけれど、密度は濃かった。
 うーん……。
 というか、告白に成功する前提で話してるけど、失敗するかもしれないのでは?
 なんだか頭が痛くなってきた。
 この短い休み時間で答えが出るような問題じゃないし……。

「もし、告白するとしたら、どういう状況がいいかな?」

 ここまでアドバイスをくれた勇気に聞いておく。
 勇気は、思考するための間を取ってから、真剣な表情で口を開いた。

「やっぱり、学校行事のときにいい雰囲気になって、それで告白する、とか、定番なんじゃないか?」
「なるほど、確かに。次の学校行事ってなんだ?」
「期末試験だな」
「……」

 一気にテンションが下がったところで、始業のチャイムが鳴った。
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