26 / 39
26 避けられてる?
しおりを挟む
教室に入ってすぐ、祐一は視線を綾香の机に向ける。しかし、荷物はあるものの、そこに幼馴染みの姿は無い。それから教室中に視線を巡らせるが――。
「……いないな」
「いませんね」
祐一の呟きに、途中から一緒に登校してきた小糸が言葉を重ねる。
祐一はため息とともに言葉を漏らす。
「これは、避けられてるよな……」
「そうですね……今は祐一くんと顔を合わせたくない、ということだと思います」
「だよな……困った」
「とりあえず様子見もかねて、私が探してきますね」
「俺も……」
言いかけたところで、小糸が祐一の言葉を遮る。
「いえ、祐一くんはここにいてください。避けているということは、あやかぽんも心の整理をしたいということでしょうし、少し時間を置きましょう。大丈夫、私に任せて下さい! 二人がちゃんと話せるようにしますから!!」
そう言って、小糸は頼もしく胸を張る。ちっちゃい子みたいだと思うが口には出さない。見た目に反して、小糸は頼りになる。
「なら……有明さん、綾香のことよろしくお願いします」
「うんっ、任せて!!」
元気に言って、小糸は教室を出ていった。
綾香と小糸が戻ってきたのは、始業のチャイムが鳴るのと同時だった。
祐一がその様子を眺めていると、綾香が笑いかけてきた――少しぎこちないけれど、愛想はある。
それを受けて、祐一も表情を崩す。この様子なら、話しかけても逃げなさそうだ。休み時間になったら、声を掛けてみよう――。
♢
今日は三限目に体育が入っている。その前後の休み時間は着替えと移動でバタつくから、それより前、一限前の五分休みに少し綾香と話したい。
ホームルームが終わり、祐一は自分の席を立ち、綾香の席へ向かおうとするが……。
「なあ祐一」
ちょうどそのタイミングで、男友達に呼び止められた。
「数学の課題でわからないところがあるんだけど、教えてくれないか?」
正直、間の悪い相談だ。
けれど、数学は一限目。この休み時間に教えなければ、この友人は困ってしまうだろう――自分を頼ってきた友人を見捨てるような真似は祐一にはできなかった。
「ああ、わかった」
まあ、綾香と話すのは昼休みでもいい。むしろ、長く時間を使える昼休みの方がいいかもしれない、と思考を切り替える。
「で、どの問題だ?」
「これなんだけど……」
「ああ、これか。この問題は……」
理解しやすいように、一から丁寧に解説していく。
そうしているうちに、一限目の開始を知らせるチャイムが鳴った。
「……いないな」
「いませんね」
祐一の呟きに、途中から一緒に登校してきた小糸が言葉を重ねる。
祐一はため息とともに言葉を漏らす。
「これは、避けられてるよな……」
「そうですね……今は祐一くんと顔を合わせたくない、ということだと思います」
「だよな……困った」
「とりあえず様子見もかねて、私が探してきますね」
「俺も……」
言いかけたところで、小糸が祐一の言葉を遮る。
「いえ、祐一くんはここにいてください。避けているということは、あやかぽんも心の整理をしたいということでしょうし、少し時間を置きましょう。大丈夫、私に任せて下さい! 二人がちゃんと話せるようにしますから!!」
そう言って、小糸は頼もしく胸を張る。ちっちゃい子みたいだと思うが口には出さない。見た目に反して、小糸は頼りになる。
「なら……有明さん、綾香のことよろしくお願いします」
「うんっ、任せて!!」
元気に言って、小糸は教室を出ていった。
綾香と小糸が戻ってきたのは、始業のチャイムが鳴るのと同時だった。
祐一がその様子を眺めていると、綾香が笑いかけてきた――少しぎこちないけれど、愛想はある。
それを受けて、祐一も表情を崩す。この様子なら、話しかけても逃げなさそうだ。休み時間になったら、声を掛けてみよう――。
♢
今日は三限目に体育が入っている。その前後の休み時間は着替えと移動でバタつくから、それより前、一限前の五分休みに少し綾香と話したい。
ホームルームが終わり、祐一は自分の席を立ち、綾香の席へ向かおうとするが……。
「なあ祐一」
ちょうどそのタイミングで、男友達に呼び止められた。
「数学の課題でわからないところがあるんだけど、教えてくれないか?」
正直、間の悪い相談だ。
けれど、数学は一限目。この休み時間に教えなければ、この友人は困ってしまうだろう――自分を頼ってきた友人を見捨てるような真似は祐一にはできなかった。
「ああ、わかった」
まあ、綾香と話すのは昼休みでもいい。むしろ、長く時間を使える昼休みの方がいいかもしれない、と思考を切り替える。
「で、どの問題だ?」
「これなんだけど……」
「ああ、これか。この問題は……」
理解しやすいように、一から丁寧に解説していく。
そうしているうちに、一限目の開始を知らせるチャイムが鳴った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる