【完結】恋人代行サービス

山田森湖

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第28話「家族の絆」

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第28話「家族の絆」

健太が生まれて三ヶ月が過ぎた。最初は戸惑いの連続だったが、少しずつ育児のリズムに慣れてきた。

「美月、健太の笑顔、可愛いね」

健一が仕事から帰ってくると、いつも健太の様子を見に行く。

「今日初めて声を出して笑ったんです」

「本当?見たかったな」

「今度きっと、健一にも笑顔を見せてくれますよ」

育児は大変だったが、健太の成長を見ているのは何よりの喜びだった。

「健太、お父さんだよ」

健一が話しかけると、健太が手足をバタバタさせた。

「反応してる」

「パパの声が分かるのかもしれませんね」

私は翻訳の仕事を在宅でできるよう調整していた。健太が眠っている間に作業をする日々。

「美月、無理してない?」

健一が心配してくれた。

「大丈夫です。むしろ仕事があることで、気分転換になります」

「でも疲れたら遠慮なく言って」

「はい」

健一も育児に積極的に参加してくれた。おむつ替えも、夜中の授乳も。

「健一、ありがとう」

「当然だよ。健太は僕の子でもあるんだから」

そんな健一の姿を見ていると、改めて良い人と結婚したと思った。

健太が四ヶ月になった頃、初めて寝返りを打った。

「健一、見て!健太が寝返りした!」

「本当?すごいじゃないか、健太」

健一は仕事から帰るとすぐに健太の相手をしてくれた。

「健太、今度はお父さんに寝返りを見せてくれ」

健太はきょとんとした顔をしていたが、やがてまた寝返りを見せてくれた。

「やったね、健太」

健一の喜ぶ姿を見ていると、幸せな気持ちになった。

お宮参りには両家の両親も参加してくれた。

「健太君、立派になったわね」

健一のお母さんが健太を抱っこしていた。

「すくすく育ってます」

「美月さんの頑張りのおかげね」

「健一も手伝ってくれるので」

神社で健太の健康を祈願した。

「健やかに育ちますように」

私たち家族の祈りが、青空に向かって響いた。

お宮参りの写真を見ながら、健一が言った。

「いい家族写真だね」

「はい。健太も良い顔してます」

「僕たちも幸せそうに写ってる」

「本当に幸せですからね」

健太が六ヶ月になった頃、離乳食が始まった。

「健太、あーん」

最初はうまく食べられなくて、口の周りが汚れてしまう。

「可愛いね」

健一が写真を撮っていた。

「健太の成長記録ですね」

「そうだね。大きくなったら見せてあげよう」

健太は日に日に表情豊かになっていく。喜怒哀楽がはっきりしてきた。

「健太、ご機嫌だね」

「パパが帰ってきたから嬉しいのかも」

「そうだといいな」

健一は健太を高い高いで遊ばせた。健太は大喜びしている。

「気をつけて」

「大丈夫、大丈夫」

父親としての健一は、想像以上に自然だった。

「健一、いいお父さんですね」

「本当?」

「はい。健太も健一が大好きみたい」

「僕も健太が可愛くて仕方ない」

健太が八ヶ月になった頃、ハイハイを始めた。

「健太、すごいじゃない」

家中を探検するように動き回る健太。

「目が離せなくなったね」

「はい。事故防止の対策をしないと」

家具の角にクッションを付けたり、階段に柵を設けたり。健太の安全のための準備に追われた。

「美月、育児って本当に大変だね」

「でも楽しいです」

「そうだね。健太の成長を見てるのは楽しい」

その頃、健太に変化が現れた。人見知りが始まったのだ。

「あら、泣いちゃった」

知らない人に抱っこされると、健太は泣いてしまう。

「パパとママじゃないと嫌なのね」

健一のお母さんが苦笑いしていた。

「すみません」

「いえいえ、成長の証よ」

健太が私たちを特別な存在として認識してくれているのが嬉しかった。

「健太、パパとママが一番好きなのね」

健太は私の腕の中でほっとした表情を見せた。

健太が十ヶ月になった頃、つかまり立ちができるようになった。

「健太、立った!」

ソファにつかまって立ち上がった健太。

「もうすぐ歩けるようになるね」

「楽しみです」

健一は健太の前に手を広げて、歩く練習に付き合ってくれた。

「健太、おいで」

健太は必死にバランスを取りながら、健一に向かって歩こうとする。

「頑張れ、健太」

家族で健太を応援した。

そんな平和な日々の中で、私は時々過去を思い出していた。

恋人代行をしていた頃の自分。あの時は、こんな幸せな家庭を築くなんて夢にも思わなかった。

「美月、何考えてる?」

健一が気づいて聞いてくれた。

「昔のことを少し」

「恋人代行の頃?」

「はい」

健太が眠った夜、私たちはそんな話をすることがある。

「あの頃の僕は、本当の愛を知らなかった」

「私もです」

「でも君と出会って、愛することの意味が分かった」

「私も健一と出会って、愛されることの喜びを知りました」

健太の寝顔を見ながら、健一が言った。

「健太にも、いつか本当の愛に出会ってほしいね」

「きっと出会えますよ。こんなに愛情をかけて育ててるんですから」

「そうだね」

恋人代行から始まった関係が、今では三人家族になっている。過去のすべてが、この幸せに繋がっていたのだと思える。

「美月、ありがとう」

「どういたしまして」

「君と出会えて、健太を授かって、僕は本当に幸せだ」

「私も同じ気持ちです」

健太の寝息を聞きながら、私たちは静かに抱き合った。

家族の絆は、日々深まっていく。

第28話 完
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