【完結】恋人代行サービス

山田森湖

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第29話「新たな挑戦」

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第29話「新たな挑戦」

健太が一歳になった。記念すべき誕生日パーティーには、両家の家族が集まってくれた。

「健太君、一歳おめでとう」

みんなで健太の成長を祝った。健太は一歳とは思えないほどしっかりしていて、一人で立ったり、簡単な言葉を話したりする。

「パパ、ママ」

健太が私たちを呼ぶ声は、何度聞いても胸が熱くなる。

「健太、偉いね」

誕生日ケーキの前で、健太は嬉しそうに手を叩いていた。

「写真撮りましょう」

家族写真を何枚も撮った。健太の成長記録として、大切に保管するつもりだった。

パーティーが終わった後、健一と二人で話していた。

「健太、本当に大きくなったね」

「あっという間でした」

「美月、実は相談があるんだ」

健一の表情が少し真剣になった。

「どんなご相談ですか?」

「会社から、海外駐在の打診があったんだ」

驚いた。

「海外駐在?」

「うん。アメリカの支社で、新プロジェクトのマネージャーをやってほしいと」

「それは大きな話ですね」

「期間は三年。家族同伴可能だ」

私は少し混乱していた。

「どうしたいですか、健一は?」

「正直、迷ってる」

健一はソファに座った。

「キャリアアップには絶好の機会だ。でも健太のことを考えると」

「健太のこと?」

「言葉もまだ覚え始めたばかり。環境を変えるのはどうかと思って」

私も同じことを考えていた。

「でも健一のキャリアも大切です」

「美月はどう思う?」

「私は健一の決断に従います」

「でも君の翻訳の仕事は?」

「アメリカでもできると思います。むしろ英語圏にいることで、スキルアップできるかもしれません」

健一は少し安心したような表情を見せた。

「本当にいいの?」

「はい。家族なんですから、一緒に新しい挑戦をしましょう」

「ありがとう、美月」

翌日、健一は会社に駐在を受ける旨を伝えた。

「出発は半年後の予定です」

「分かりました。準備を始めましょう」

アメリカ駐在の準備は想像以上に大変だった。ビザの申請、住居の手配、健太の予防接種など、やることが山積みだった。

「美月、疲れてない?」

「大丈夫です。でも健太のパスポート申請、可愛く写真が撮れなくて」

「一歳児の証明写真は難しいらしいね」

私たちは忙しい中でも、健太との時間を大切にした。アメリカに行けば、しばらくは両親に会えなくなるから。

「健太、アメリカに行くのよ」

健太にはまだ理解できないが、いつも話しかけていた。

「飛行機に乗って、遠いところに行くの」

健太は「ひこーき」という言葉を覚えて、嬉しそうに繰り返していた。

出発の一ヶ月前、両家の両親を招いて送別会を開いた。

「寂しくなりますね」

私の母が涙ぐんでいた。

「でも健一君の仕事のためですから」

「三年後には帰ってきますから」

「健太君も、アメリカで大きくなるのね」

健一のお母さんも寂しそうだった。

「写真やビデオ通話で、いつでも健太の様子をお伝えします」

「お願いします」

その夜、健一と話した。

「美月、後悔してない?」

「どうしてですか?」

「慣れ親しんだ環境を離れることになる」

「大丈夫です。健一と健太と一緒なら、どこでも幸せです」

「ありがとう」

健一は私を抱きしめた。

「アメリカでも、幸せな家庭を築こう」

「はい」

出発の日がやってきた。

「いよいよですね」

空港で、私たちは最後の日本の風景を見つめていた。

「健太、日本とお別れよ」

健太は空港の賑やかさに興味深そうにしていた。

搭乗前、由香が見送りに来てくれた。

「美月、元気でね」

「由香も元気で」

「健太君も、アメリカで大きくなってね」

健太は由香に手を振った。

「バイバイ」

飛行機の中で、健太は最初は興味深そうにしていたが、やがて疲れて眠ってしまった。

「健太、よく眠ってる」

「明日からは、アメリカでの生活が始まりますね」

「そうだね。新しい人生の始まり」

窓の外に雲海が広がっていた。

恋人代行から始まった関係が、結婚し、子供ができ、そして今度は海外駐在。

人生は予測できない展開を見せる。

でも健一と健太と一緒なら、どんな困難も乗り越えられる。

「美月、愛してる」

「私も愛してます」

新大陸に向かう飛行機の中で、私たちは未来への希望を胸に抱いていた。

アメリカでの三年間は、私たちにとってどんな意味を持つのだろう。

きっと新しい発見と成長がある。

家族一緒に。

第29話 完
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