【完結】恋人代行サービス

山田森湖

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第30話「アメリカでの新生活」

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第30話「アメリカでの新生活」

ロサンゼルス国際空港に降り立った時、まず感じたのは乾燥した空気と強い日差しだった。

「ついに着いたね」

健一が荷物を運びながら言った。

「はい。でも健太、大丈夫かしら」

長時間のフライトで疲れた健太は、私の腕の中でぐずっていた。

「きっと時差ぼけですね」

空港で会社の現地スタッフが出迎えてくれた。

「ようこそアメリカへ。私はマイケルです」

流暢な日本語で挨拶してくれた。

「よろしくお願いします」

車でアパートまで向かう道中、窓の外に広がるのは日本とは全く違う風景だった。

「すごく広いですね」

「そうですね。スケールが違います」

健太は車の中で眠っていた。

会社が用意してくれたアパートは、郊外の静かな住宅街にあった。二階建ての一軒家で、日本のマンションよりもずっと広い。

「素敵なお家ですね」

「ファミリー向けの物件を選んでもらいました」

庭もあって、健太が大きくなったら遊べそうだった。

「健太、新しいおうちよ」

健太は新しい環境に戸惑っているようだった。

最初の一週間は時差ぼけとの戦いだった。

「健太、夜中に起きちゃダメよ」

昼夜逆転してしまった健太の生活リズムを整えるのに苦労した。

「美月も疲れてる?」

「少し。でも健太が慣れるまでの辛抱ですね」

健一は新しい職場での業務に慣れるのに忙しかった。

「アメリカの会社は、やっぱり文化が違うね」

「どんな風に?」

「もっとオープンで、議論も活発。でも家族の時間を大切にする雰囲気もある」

「それはいいですね」

二週間目から、私は英語の勉強を始めた。日常会話には困らないが、翻訳の仕事をするには更なるスキルアップが必要だった。

「Hello, how are you today?」

近所の人たちは皆フレンドリーで、健太を可愛がってくれた。

「He's so cute!」

健太も少しずつ新しい環境に慣れてきているようだった。

一ヶ月が過ぎて、生活のリズムが整ってきた。

「美月、アメリカの生活はどう?」

「思ったより楽しいです」

「そう?」

「健太も元気だし、近所の人たちも親切で」

スーパーマーケットでの買い物も慣れた。商品の種類の多さに最初は圧倒されたが、今では楽しみの一つになっている。

「アメリカの食材、面白いですね」

「日本にはない物がたくさんある」

健太のために離乳食を作る時も、現地の食材を使って工夫していた。

「健太、アメリカのにんじん美味しい?」

健太は嬉しそうに食べていた。

三ヶ月目に入った頃、私は現地の翻訳会社とコンタクトを取り始めた。

「フリーランスの翻訳者として働きたいのですが」

「どのような経験をお持ちですか?」

これまでの実績を説明すると、興味を持ってくれた。

「では試しに、短い文書の翻訳をお願いできますか?」

初めての仕事は技術文書の翻訳だった。専門用語が多くて苦労したが、なんとか完成させることができた。

「美月、お疲れさま」

健一が仕事から帰ってくると、私は翻訳作業をしていることが多かった。

「健太は?」

「お昼寝してます」

「アメリカでも仕事が見つかってよかったね」

「はい。新しい挑戦です」

健太が一歳半になった頃、現地の保育園に通わせることにした。

「ママ、バイバイ」

健太は意外にもあっさりと保育園に慣れた。

「He's adapting well」

保育士の先生が褒めてくれた。

保育園に通い始めてから、健太は簡単な英単語も覚え始めた。

「Apple, banana」

「健太、すごいじゃない」

バイリンガルになっていく健太を見ていると、アメリカに来てよかったと思えた。

半年が過ぎた頃、日本の家族とのビデオ通話が日課になっていた。

「健太君、大きくなったわね」

健一のお母さんが嬉しそうに話していた。

「もうこんなに英語が話せるの?」

「少しずつですが」

健太は画面の向こうのおばあちゃんに手を振っていた。

「早く会いたいわ」

「来年の夏には一時帰国する予定です」

その夜、健一と二人で話していた。

「美月、アメリカでの生活、順調だね」

「はい。最初は不安でしたが、今は充実してます」

「僕も仕事が面白い。日本では経験できないようなプロジェクトに携われてる」

「それはよかった」

「でも時々、日本が恋しくなる」

「私もです。特に家族に会いたくなります」

「健太も、おじいちゃんおばあちゃんに会いたがってるね」

窓の外を見ると、アメリカの夜空に星が輝いていた。

「でも私たち、成長してますよね」

「そうだね。家族として、一回り大きくなった気がする」

健太の寝顔を見ながら、私は思った。

恋人代行から始まった関係が、今では国境を越えて新しい挑戦をする家族になっている。

人生は本当に予測がつかない。

でもこの三人でいる限り、どこに行っても幸せでいられる。

「美月、愛してる」

「私も愛してます」

アメリカの空の下で、私たちの愛は更に深まっていく。

残りの駐在期間も、きっと素晴らしい経験になるだろう。

第30話 完
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