【完結】恋人代行サービス

山田森湖

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第39話「多文化都市での新たな発見」

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第39話「多文化都市での新たな発見」

シンガポールでの生活が始まって三ヶ月が過ぎた。この国の多様性は、これまで経験したどの国よりも豊かだった。

「ママ、今日学校で中国語を習ったよ」

健太が嬉しそうに報告してくれた。

「你好」(ニーハオ)

「上手ね。美咲も覚える?」

「ニーハオ」

美咲も真似をして言った。

シンガポールの学校システムは独特で、健太は現地のインターナショナルスクールで英語をベースに学びながら、第二言語として中国語を学んでいた。

「友達はどんな子たち?」

「シンガポール人、中国人、インド人、マレーシア人...みんなバラバラの国出身」

「すごいわね」

「でもみんな英語で話すから、すぐに仲良くなれた」

美咲も現地の幼稚園で、多文化環境に囲まれていた。

「先生がいっぱいいる」

「どんな先生?」

「中国のせんせい、インドのせんせい、シンガポールのせんせい」

四歳の美咲にとって、多様性は当たり前のことになっていた。

私の翻訳業務も、新しい展開を見せていた。

「東南アジア市場向けの翻訳需要が高いですね」

現地の翻訳エージェンシーから多くの依頼が来るようになった。

「日本語、英語、中国語の翻訳をお願いできますか?」

「中国語はまだ勉強中ですが、簡単なものなら」

シンガポールでは中国語も重要なスキルだった。

健一の仕事は、これまで以上にダイナミックだった。

「アジア全体を統括するプロジェクトは、ヨーロッパとはスケールが違うね」

「どんな風に?」

「成長スピードが速い。新しいビジネスチャンスが次々と出てくる」

「やりがいがありそうですね」

「そうなんだ。でも文化の違いを理解するのに時間がかかる」

シンガポールの食文化も、私たちには新鮮だった。

「今日はホーカーセンターに行きましょう」

地元の屋台街で、様々な民族料理を味わった。

「これは中華料理?」

「チキンライスね。シンガポール名物よ」

「おいしい!」

健太が夢中で食べている。

「これは何?」

美咲がカレー風の料理を指差した。

「インド系のカレーよ」

「からい?」

「ちょっと辛いかも」

でも美咲は平気で食べていた。子供の適応力は本当に素晴らしい。

半年が過ぎる頃、私たちの中国語も上達していた。

「谢谢」(シェイシェイ)

お店での買い物も、中国語でできるようになった。

「您好,我想买这个」(こんにちは、これを買いたいです)

「好的」(いいですよ)

現地の人との会話も楽しくなってきた。

健太は学校で中国系の親友ができた。

「ママ、リンくんが家に遊びに来たいって」

「もちろんよ。お友達を招待しましょう」

リンくんが来た日、子供たちは三つの言語を混ぜながら遊んでいた。

「Let's play soccer」

「好的,踢足球」(よし、サッカーしよう)

「サッカー大好き」

言語の壁など、子供たちには存在しなかった。

美咲も幼稚園で、マレー系の友達ができた。

「アイシャちゃんと遊んだ」

「どんな遊びをしたの?」

「Selamat pagi って教えてもらった」

「それはマレー語で『おはよう』ね」

「セラマッパギ」

美咲は新しい言葉を覚えるのが本当に早い。

一年が過ぎた頃、私たちは東南アジア各国を旅行するようになった。

「今度はマレーシアに行ってみない?」

「いいですね。車で行けるんでしょう?」

「そう、橋を渡るだけ」

クアラルンプールでは、さらに多様な文化に触れた。

「ここも多民族国家なのね」

「シンガポールと似てるけど、もっと大きい」

子供たちは新しい環境にも、すぐに適応した。

タイのバンコクも訪れた。

「こんにちは」がタイ語で「サワディーカー」

「サワディーカー」

美咲が現地の人に挨拶している。

「どこの国でも愛されるのね、美咲は」

「笑顔が万国共通語だからでしょう」

インドネシアのバリ島では、バリ舞踊を見学した。

「きれい」

健太が感動していた。

「きれいー」

美咲も目を輝かせていた。

「世界には、本当に色んな文化があるのね」

「はい。子供たちには貴重な経験になっています」

シンガポールに戻ってから、健太が言った。

「ママ、僕たちって本当に恵まれてるね」

「どうして?」

「色んな国を見ることができて、色んな人と友達になれて」

「そうね」

「美咲ちゃんなんて、もう五つの言語が分かるでしょう?」

確かに美咲は、日本語、英語、ドイツ語、中国語、そして簡単なマレー語を理解していた。

「みーちゃん、おりこうさん?」

「とてもお利口さんよ」

その夜、健一と話した。

「美月、シンガポールでの生活はどう?」

「最高です。多様性の中で、子供たちが自然に国際感覚を身につけてる」

「そうだね。ここまで来ると、もう国境なんて関係ない気がする」

「家族がいれば、どこでも家になりますね」

「恋人代行で出会った僕たちが、こんなグローバルな家族になるなんて」

窓の外を見ると、シンガポールの夜景が煌々と輝いていた。

多民族、多文化、多言語の国で、私たちもまた新しい発見をしていた。

愛する家族と一緒なら、世界中が私たちの故郷になる。

そのことを、改めて実感していた。

第39話 完
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