【完結】恋人代行サービス

山田森湖

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第54話「家族の絆」

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第54話「家族の絆」

健太が国連で平和構築プロジェクトのリーダーに昇進し、美咲のワールドハート学園が開校から三年を迎えた頃、私たちの家族に特別な出来事が起こった。

「ママ、パパ、提案があります」

健太からのビデオ通話で、珍しく真剣な表情をしていた。

「どんな提案?」

「今度の夏、家族全員でヨーロッパ旅行はいかがですか?」

「家族全員?」

「はい。僕とエミリーと健一郎、美咲と田中さんと美穂、そしてママとパパ」

「素敵なアイデアね」

美咲も賛成してくれた。

「みーちゃんも行きたい!美穂にヨーロッパの文化を見せてあげたいし」

「でも健一郎と美穂、大丈夫かしら?」

「健一郎はもう八歳だし、美穂も七歳。きっと楽しめますよ」

こうして、三世代でのヨーロッパ家族旅行が決まった。

最初の目的地は、私たちが三年間暮らしたドイツのフランクフルトだった。

「わあ、これがママとパパが住んでた町なの?」

美穂が興奮していた。

「そうよ。美穂が生まれる前に住んでいたのよ」

健一郎は既にアメリカで国際経験を積んでいるが、ヨーロッパは初めてだった。

「Guten Tag」

現地の人にドイツ語で挨拶する健一郎。

「すごいね、健一郎」

「パパとママが教えてくれたの」

私たちが住んでいたアパートの前で記念写真を撮った。

「ここで美咲が生まれたのよ」

「本当に?」

美咲が感慨深そうに建物を見上げた。

「みーちゃんはドイツ生まれなのね」

次に向かったのは、フランスのパリ。

エッフェル塔を見た孫たちの反応は、昔の健太と美咲そっくりだった。

「すごく高い!」

「たかーい」

健一郎と美穂が同じように興奮している。

「パパとママも小さい時、同じことを言ったのよ」

「本当?」

「本当よ」

ルーブル美術館では、美術に興味を示す孫たち。

「この絵、なんか悲しそう」

美穂がモナリザを見て言った。

「悲しいかな?私には微笑んでいるように見えるけど」

「うーん、ちょっと寂しそう」

美穂の感性に、みんなが感心した。

健一郎はナポレオンの絵に興味を示した。

「この人、誰?」

「ナポレオンという有名な人よ」

「何をした人?」

「フランスの皇帝で、ヨーロッパ中で戦争をした人」

「戦争?」

健一郎の表情が真剣になった。

「戦争は良くないことでしょう?」

「そうよ。だから健太パパは、平和のお仕事をしているの」

「僕も大きくなったら、平和のお仕事をしたい」

八歳の健一郎の言葉に、健太が感動していた。

「ありがとう、健一郎」

イタリアのローマでは、古代の遺跡に興味深々の子供たち。

「昔の人が作ったの?」

「そうよ。二千年も前に」

「二千年!」

美穂には想像もつかない昔のことだった。

「すごいね、昔の人も今の人も、同じ人間なんだね」

健一郎の言葉に、大人たちが感心した。

「そうよ。みんな同じ人間で、同じように愛し合っているの」

最後の目的地は、イギリスのロンドン。

大英博物館では、世界各地の文化に触れた。

「この展示、エジプトの物だって」

「これは中国の物」

「これは日本の物よ」

健一郎と美穂は、世界の多様性を肌で感じていた。

「世界には、いろんな文化があるのね」

美穂が言った。

「そうよ。でもみんな同じ人間」

「みんな違うけど、みんな同じ」

健一郎が深い言葉を口にした。

「素晴らしい表現ね」

夜、ホテルで三世代が集まった時、健太が提案した。

「みんなで今回の旅行の感想を言いませんか?」

健一郎が最初に発表した。

「僕、世界はとても大きいと思った。でも家族がいれば、どこでも楽しい」

美穂も続けた。

「みーちゃんは、いろんな国の人がいるけど、みんな優しいと思った」

美咲が涙ぐんでいた。

「子供たちの感性が素晴らしすぎて」

田中さんも頷いた。

「この旅行は、子供たちにとって一生の宝物になりますね」

エミリーも感動していた。

「Kenichiro has grown so much during this trip」

健太も嬉しそうだった。

「僕自身、子供の頃に同じような体験をして、今の仕事に繋がっている」

「そうね。経験は人を育てる」

健一が言った。

「美月、この旅行を提案してくれた健太に感謝だね」

「本当にありがとう、健太」

その夜、私は健一と二人でロンドンの夜景を眺めていた。

「健一、素晴らしい旅行でしたね」

「そうだね。三世代で旅行できるなんて、幸せなことだ」

「孫たちの成長ぶりも見られて」

「健一郎と美穂、本当に立派に育ってる」

「健太と美咲の子育てが素晴らしいからですね」

「君の子育てが素晴らしかったから、健太と美咲が良い親になれたんだ」

窓の外には、テムズ川が静かに流れていた。

「美月、僕たちの人生、本当に豊かになったね」

「そうですね。恋人代行から始まって、こんな大家族になるなんて」

「愛の力は偉大だ」

「そして愛は世代を超えて受け継がれていく」

翌日、帰国の途に就く前、健一郎が言った。

「おじいちゃん、おばあちゃん、僕たちの家族って特別だよね」

「どうして?」

「だって、こんなにいろんな国を一緒に旅行できる家族って、あまりいないでしょう?」

「そうかもしれないわね」

「でも一番特別なのは」

健一郎は少し考えてから続けた。

「みんなでお互いを愛し合っているところ」

その言葉に、全員が涙ぐんだ。

「ありがとう、健一郎」

「僕たちは愛の家族なんだね」

美穂も手を挙げた。

「みーちゃんも愛の家族の一員」

「そうよ、美穂」

空港に向かうバスの中で、私は窓の外の景色を見つめながら考えていた。

恋人代行から始まった小さな愛が、今では三世代にわたる大きな愛の輪になっている。

そして孫たちが、その愛をさらに次の世代に伝えていくのだろう。

愛は永遠に続いていく。

それが私たちの物語の真髄だった。

第54話 完
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