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「お姉様が悪役令嬢ですって? そんな馬鹿げた話、私は信じません!」
エルメラルド公爵家の邸宅。その広い応接室で、シャーロット・エルメラルドは憤慨のあまり声を荒らげていた。
「ですが、お嬢様。世間ではそういう噂が流れており、王太子殿下も婚約破棄を……」
家令が遠慮がちに言いかけるが、シャーロットは拳を握り締めて言葉をさえぎる。
「お姉様がそんな人間ではないことは、私が一番知っています。家族として黙っていられませんわ」
シャーロットは公爵家の次女として、愛らしい容姿と芯の強さを併せ持っていた。グレイスを慕っており、姉が突然追われる身になったことに疑念を抱いている。
「とにかくお姉様を探さなくては。城の護衛が捜しているのに見つからないということは……森にでも逃げ込んだのでしょうか」
シャーロットは素早く周囲に目を配る。父親の公爵は王都の政務で忙殺されており、今は家の中も混乱気味だ。だが、彼女の決心は揺るがない。
「お嬢様、森は危険です。何かございましたら、公爵家としても大問題に……」
「放っておけばお姉様はもっと危険よ! それを助けるのが家族の役目でしょう?」
シャーロットは勢いよく立ち上がる。ドレスの裾を翻しながら、侍女たちに身支度を手早く整えさせる。
「私はお姉様の潔白を証明したいの。それに、王太子殿下にも一度問いただしたいことがあるわ」
確かにグレイスが不在のままでは、エルメラルド公爵家への風評は広がる一方だ。しかしシャーロットにとっては、そんな世間体など二の次だった。彼女は姉が無実であると信じている。
「さあ、すぐに手配を。少数で構わないから、私に仕える従者を集めて。森へ向かいます」
家令は半ば呆れつつも、シャーロットの行動力に感心する。早速、信頼のおける従者たち数名を選び、馬車の準備を進める。
「お嬢様、本当にご自身で行かれますか?」
侍女が心配そうに尋ねると、シャーロットはきっぱりと頷いた。
「ええ。お姉様のことを救えるのは私しかいないもの。あの方は誰よりも優しく、繊細な心を持っている。悪者扱いされるなんて絶対におかしいわ」
エルメラルド家の馬車に乗り込み、シャーロットは窓の外を睨むように見つめる。目指すは王都の外れ、そして夜の森。危険と言われる場所だが、彼女の決意は固い。
「お姉様、一刻も早く会いに行きますから。待っていてください」
内心の誓いを胸に、馬車は石畳を滑るように走り出した。エルメラルド家の次女シャーロット、その行動は姉を救う手がかりを探すための第一歩となるだろう。
一方、王宮の噂話に流される多くの貴族たちは、シャーロットの動きを知らず、自分たちの保身に精一杯の様子。グレイスの汚名が事実なのか否か、真相を確かめようとする者はほとんどいなかった。
「シャーロットお嬢様、そろそろ城の外へ出ます。ここからは道が悪くなりますから、お気をつけを」
「ありがとう。森の手前まで急ぎましょう」
シャーロットの瞳には強い決意の炎が宿っている。姉妹愛と真実を求める気持ちが、彼女を行動へと駆り立てるのだった。
エルメラルド公爵家の邸宅。その広い応接室で、シャーロット・エルメラルドは憤慨のあまり声を荒らげていた。
「ですが、お嬢様。世間ではそういう噂が流れており、王太子殿下も婚約破棄を……」
家令が遠慮がちに言いかけるが、シャーロットは拳を握り締めて言葉をさえぎる。
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「お嬢様、森は危険です。何かございましたら、公爵家としても大問題に……」
「放っておけばお姉様はもっと危険よ! それを助けるのが家族の役目でしょう?」
シャーロットは勢いよく立ち上がる。ドレスの裾を翻しながら、侍女たちに身支度を手早く整えさせる。
「私はお姉様の潔白を証明したいの。それに、王太子殿下にも一度問いただしたいことがあるわ」
確かにグレイスが不在のままでは、エルメラルド公爵家への風評は広がる一方だ。しかしシャーロットにとっては、そんな世間体など二の次だった。彼女は姉が無実であると信じている。
「さあ、すぐに手配を。少数で構わないから、私に仕える従者を集めて。森へ向かいます」
家令は半ば呆れつつも、シャーロットの行動力に感心する。早速、信頼のおける従者たち数名を選び、馬車の準備を進める。
「お嬢様、本当にご自身で行かれますか?」
侍女が心配そうに尋ねると、シャーロットはきっぱりと頷いた。
「ええ。お姉様のことを救えるのは私しかいないもの。あの方は誰よりも優しく、繊細な心を持っている。悪者扱いされるなんて絶対におかしいわ」
エルメラルド家の馬車に乗り込み、シャーロットは窓の外を睨むように見つめる。目指すは王都の外れ、そして夜の森。危険と言われる場所だが、彼女の決意は固い。
「お姉様、一刻も早く会いに行きますから。待っていてください」
内心の誓いを胸に、馬車は石畳を滑るように走り出した。エルメラルド家の次女シャーロット、その行動は姉を救う手がかりを探すための第一歩となるだろう。
一方、王宮の噂話に流される多くの貴族たちは、シャーロットの動きを知らず、自分たちの保身に精一杯の様子。グレイスの汚名が事実なのか否か、真相を確かめようとする者はほとんどいなかった。
「シャーロットお嬢様、そろそろ城の外へ出ます。ここからは道が悪くなりますから、お気をつけを」
「ありがとう。森の手前まで急ぎましょう」
シャーロットの瞳には強い決意の炎が宿っている。姉妹愛と真実を求める気持ちが、彼女を行動へと駆り立てるのだった。
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