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倉庫で証拠らしきものを得られなかったココナたちは、ひとまず街中に戻り、落ち着いて話し合うために小さなカフェに立ち寄ることにした。普段の華やかな社交界とは対照的に、庶民の憩いの場に座るのは新鮮な感覚だ。
「ココナ様、あの倉庫を見た限り、やはり誰かが証拠を隠しているとしか思えません」
ローレライはカップに手を添えながら、声をひそめる。周囲に余計な耳がないことを確かめつつ、慎重に言葉を選ぶ姿が印象的だ。
「ええ、私もそう思います。あの商会の旧経営者と王宮か貴族の誰かがつながっていて、ケーキに毒を紛れ込ませた——そう考えると筋は通りそう」
「でも、目的が何なのかがわからないわ。あなたを陥れるためなのか、それとも私が作るケーキを使いたかったのか。いずれにしても、犯人は私たち二人に濡れ衣を着せようとしているように見える」
ローレライの声には焦りと怒りが混じっている。騒動の矢面に立たされるのはいつも自分たちだからこそ、感情が昂ぶるのも当然だろう。
「いずれにせよ、私たちだけではもう限界かもしれませんね」
「え……」
ローレライが目を丸くする。ココナは周囲をそっと見回しながら言葉を続ける。
「父もこれ以上は動きづらいでしょうし、ローレライ様のお父様も王宮から何やら要請を受けている。王室関係者が関わっている可能性があるなら、私たちが独力で動くには限度があるわ」
「そうね。王妃陛下の意向もあるし……」
ローレライは口ごもりながら、伏し目がちになる。王太子アルトワーズの母という強大な存在が背後にいるだけでも、簡単に探りを入れられる相手ではない。
「だけど、諦めるわけにはいかない。何か突破口を見つけましょう」
「そうね。私もあなたと一緒に立ち止まるつもりはないわ」
二人は意気込みを再確認し合い、カフェの扉を出る。午後の日差しが石畳に反射し、まばゆい光が広がっていた。まだ先は見えないが、少なくとも共に行動できる仲間がいる。それがココナにとっては大きな支えだ。
そして、公爵家へ戻るローレライに別れを告げたあと、ココナは伯爵邸へと帰還する。待ち構えていた執事が、心配そうに声をかけてきた。
「お嬢様、お加減はいかがですか。お父上もご心配されておりますが……」
「ええ、少し疲れましたが大丈夫です。それよりも、父は今いらっしゃる?」
「申し訳ございません、王宮へ用事があるとかで出かけられました。今夜にはお戻りの予定です」
「そう……わかりました」
微かな落胆を抱えながら、ココナは部屋へ向かう。父の不在は仕方ないにしても、王宮で何が話し合われているのか気になって仕方がない。毒事件の調査結果が出るのか、それともココナに不利な新たな噂が流されるのか。
ローレライの協力を得られたことは大きい。しかし、敵の姿は未だ見えないまま。貴族の思惑や政治的駆け引きが渦巻く中で、二人の令嬢の力だけで真相に近づけるのか——不安が募る。
「でも、動かなければ何も変わらない」
そう自分を奮い立たせながら、ココナは部屋のドアを開ける。まだ見ぬ犯人や陰謀の手は、さらに深い闇へと消え去っているように思われた。
「ココナ様、あの倉庫を見た限り、やはり誰かが証拠を隠しているとしか思えません」
ローレライはカップに手を添えながら、声をひそめる。周囲に余計な耳がないことを確かめつつ、慎重に言葉を選ぶ姿が印象的だ。
「ええ、私もそう思います。あの商会の旧経営者と王宮か貴族の誰かがつながっていて、ケーキに毒を紛れ込ませた——そう考えると筋は通りそう」
「でも、目的が何なのかがわからないわ。あなたを陥れるためなのか、それとも私が作るケーキを使いたかったのか。いずれにしても、犯人は私たち二人に濡れ衣を着せようとしているように見える」
ローレライの声には焦りと怒りが混じっている。騒動の矢面に立たされるのはいつも自分たちだからこそ、感情が昂ぶるのも当然だろう。
「いずれにせよ、私たちだけではもう限界かもしれませんね」
「え……」
ローレライが目を丸くする。ココナは周囲をそっと見回しながら言葉を続ける。
「父もこれ以上は動きづらいでしょうし、ローレライ様のお父様も王宮から何やら要請を受けている。王室関係者が関わっている可能性があるなら、私たちが独力で動くには限度があるわ」
「そうね。王妃陛下の意向もあるし……」
ローレライは口ごもりながら、伏し目がちになる。王太子アルトワーズの母という強大な存在が背後にいるだけでも、簡単に探りを入れられる相手ではない。
「だけど、諦めるわけにはいかない。何か突破口を見つけましょう」
「そうね。私もあなたと一緒に立ち止まるつもりはないわ」
二人は意気込みを再確認し合い、カフェの扉を出る。午後の日差しが石畳に反射し、まばゆい光が広がっていた。まだ先は見えないが、少なくとも共に行動できる仲間がいる。それがココナにとっては大きな支えだ。
そして、公爵家へ戻るローレライに別れを告げたあと、ココナは伯爵邸へと帰還する。待ち構えていた執事が、心配そうに声をかけてきた。
「お嬢様、お加減はいかがですか。お父上もご心配されておりますが……」
「ええ、少し疲れましたが大丈夫です。それよりも、父は今いらっしゃる?」
「申し訳ございません、王宮へ用事があるとかで出かけられました。今夜にはお戻りの予定です」
「そう……わかりました」
微かな落胆を抱えながら、ココナは部屋へ向かう。父の不在は仕方ないにしても、王宮で何が話し合われているのか気になって仕方がない。毒事件の調査結果が出るのか、それともココナに不利な新たな噂が流されるのか。
ローレライの協力を得られたことは大きい。しかし、敵の姿は未だ見えないまま。貴族の思惑や政治的駆け引きが渦巻く中で、二人の令嬢の力だけで真相に近づけるのか——不安が募る。
「でも、動かなければ何も変わらない」
そう自分を奮い立たせながら、ココナは部屋のドアを開ける。まだ見ぬ犯人や陰謀の手は、さらに深い闇へと消え去っているように思われた。
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