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夜会の開催まであまり日がない中、ココナは少しでも事件の手がかりを集めようと必死だった。ローレライとも連絡を取り合い、公爵家の動向や資料の有無を再度確認する。しかし、目立った進展は得られない。
そんなある日の昼下がり、執事が珍しく落ち着きのない表情でココナのもとへ駆け込んできた。
「お嬢様、大変です。以前ローレライ様のケーキから採取された粉末サンプルが、何者かに持ち去られたようです」
「え……それって、あの怪しげな粉末のことですよね。王宮で検査中だったのでは?」
「はい。王家の研究室というか、分析を行う部門が保管していたのですが、保管庫が荒らされ、粉末が消えてしまったとの報告が」
ココナは思わず顔を強張らせる。事件の真相を解明するうえで、あの粉末が毒かどうかを確認することは極めて重要だった。それが失われたとなれば、決定的な証拠が消えたも同然だ。
「どうして……王宮の厳戒態勢の中で、そんなことが可能なんでしょう」
「私も理解に苦しみます。何らかの内通者がいるとしか思えません。王宮内部の人間が故意に消したのか、それとも外部から侵入したのか」
状況はますます混迷を深めていた。もし王宮内部で粉末が消されたのだとしたら、それ相応の権力やコネがないと実行は難しい。つまり、かなり上位の存在がこれに関わっている可能性が高い。
「これでは、ケーキに混入されていたのが本当に毒だったのかどうかも、はっきりさせられないまま」
ココナは歯噛みするように唇を引き結ぶ。自分の失言から始まった“毒騒動”が、ここにきて核心部分を誰かの手に奪われた形だ。
「この報告は王妃陛下もご存知なのでしょうか」
「それはわかりませんが、おそらく既に情報は伝わっているはずです。王宮側も大きく動揺しているらしく、さらに厳しい捜査を進めるという話です」
捜査が進むと言っても、肝心の証拠が消えた今、王宮はどう動けばいいのか。ココナの心には嫌な予感が募る。もしかしたら、このまま事件は“闇に葬られる”形になるのではないだろうか。
「とはいえ、確固たる証拠がなくなってしまった以上、私たちにできることは限られてしまいますね」
「はい。申し訳ございません、お嬢様」
「あなたのせいではありません。ありがとう」
執事を労いながらも、ココナの胸は苦悶でいっぱいだった。王太子との婚約破棄以来、どれだけ自分が踏ん張っても、常に誰かが先回りして妨害してくる。隠された権力の存在を思うと、身震いが止まらない。
しかし、ここで諦めるつもりはない。粉末という直接的な証拠こそ失われたが、まだ他にも探れるものはあるかもしれない。ローレライの協力を得て、ケーキの材料や商会の動きを掘り下げる余地は残っている。
ココナは一人、部屋の窓辺に立ち、澄んだ空を仰ぎ見た。
「証拠が消されたということは、やっぱり何か重大な秘密があったということ。だったら、その秘密を必ず暴いてみせるわ」
自分自身を鼓舞するように、その声ははっきりと響いた。今こそ、“悪役令嬢”というレッテルを覆すためにも、負けるわけにはいかない。婚約破棄の傷はまだ癒えていないが、それでもココナは立ち上がろうとしていた。
そんなある日の昼下がり、執事が珍しく落ち着きのない表情でココナのもとへ駆け込んできた。
「お嬢様、大変です。以前ローレライ様のケーキから採取された粉末サンプルが、何者かに持ち去られたようです」
「え……それって、あの怪しげな粉末のことですよね。王宮で検査中だったのでは?」
「はい。王家の研究室というか、分析を行う部門が保管していたのですが、保管庫が荒らされ、粉末が消えてしまったとの報告が」
ココナは思わず顔を強張らせる。事件の真相を解明するうえで、あの粉末が毒かどうかを確認することは極めて重要だった。それが失われたとなれば、決定的な証拠が消えたも同然だ。
「どうして……王宮の厳戒態勢の中で、そんなことが可能なんでしょう」
「私も理解に苦しみます。何らかの内通者がいるとしか思えません。王宮内部の人間が故意に消したのか、それとも外部から侵入したのか」
状況はますます混迷を深めていた。もし王宮内部で粉末が消されたのだとしたら、それ相応の権力やコネがないと実行は難しい。つまり、かなり上位の存在がこれに関わっている可能性が高い。
「これでは、ケーキに混入されていたのが本当に毒だったのかどうかも、はっきりさせられないまま」
ココナは歯噛みするように唇を引き結ぶ。自分の失言から始まった“毒騒動”が、ここにきて核心部分を誰かの手に奪われた形だ。
「この報告は王妃陛下もご存知なのでしょうか」
「それはわかりませんが、おそらく既に情報は伝わっているはずです。王宮側も大きく動揺しているらしく、さらに厳しい捜査を進めるという話です」
捜査が進むと言っても、肝心の証拠が消えた今、王宮はどう動けばいいのか。ココナの心には嫌な予感が募る。もしかしたら、このまま事件は“闇に葬られる”形になるのではないだろうか。
「とはいえ、確固たる証拠がなくなってしまった以上、私たちにできることは限られてしまいますね」
「はい。申し訳ございません、お嬢様」
「あなたのせいではありません。ありがとう」
執事を労いながらも、ココナの胸は苦悶でいっぱいだった。王太子との婚約破棄以来、どれだけ自分が踏ん張っても、常に誰かが先回りして妨害してくる。隠された権力の存在を思うと、身震いが止まらない。
しかし、ここで諦めるつもりはない。粉末という直接的な証拠こそ失われたが、まだ他にも探れるものはあるかもしれない。ローレライの協力を得て、ケーキの材料や商会の動きを掘り下げる余地は残っている。
ココナは一人、部屋の窓辺に立ち、澄んだ空を仰ぎ見た。
「証拠が消されたということは、やっぱり何か重大な秘密があったということ。だったら、その秘密を必ず暴いてみせるわ」
自分自身を鼓舞するように、その声ははっきりと響いた。今こそ、“悪役令嬢”というレッテルを覆すためにも、負けるわけにはいかない。婚約破棄の傷はまだ癒えていないが、それでもココナは立ち上がろうとしていた。
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