私との婚約、今日で終わりですか?

ともえなこ

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アルトワーズ王太子が帰った翌日、ココナはいつも以上に疲れを感じていた。婚約破棄された相手がわざわざ伯爵邸に訪れ、護衛を申し出てくれたことはありがたい反面、心が乱される要因でもある。

「私なんかを守る必要はあるのかしら……」

 そんな自嘲的な思いが渦巻く中、ローレライから一通の手紙が届いた。開封すると、先日の襲撃のことを心配する言葉がぎっしりと綴られている。

「大丈夫でしょうか。何かできることがあれば教えてください」

 そう記された文面を読んで、ココナは胸が熱くなった。自分が婚約破棄や毒騒動で世間の悪評を買う中でも、ローレライはいつも変わらず親身に接してくれる。

「……私もローレライ様には、ちゃんと感謝を伝えなくては」

 今はそれが、一番の救いだと感じた。何より、毒騒動の解明に向けて動く中で、ローレライの協力は不可欠。そこでココナは彼女をフォルティア伯爵邸へ招き、改めて情報を共有し合うことにした。

 やがて迎えた午後、ローレライが到着し、二人は応接室で顔を合わせる。ローレライの表情には明らかな安堵が浮かび、開口一番こう言った。

「ココナ様、ご無事で本当によかった。もう心配で眠れなかったんです」

「ごめんなさい、こんな騒ぎにまで巻き込んでしまって。でも、あなたの気持ちが私には本当に支えになっています」

 ローレライは切なげに微笑み、ココナの手をそっと握った。その手はわずかに冷えていたが、逆にその冷たさが真実の思いを伝えてくれるように感じる。

「私だって、ココナ様がいなければ、この毒騒動に立ち向かう勇気は出せなかったと思うわ。だから、お互いを支え合いましょう。怖いことがあっても、二人ならなんとか乗り越えられる」

 その言葉に、ココナの目から思わず涙がこぼれそうになる。婚約破棄や悪役令嬢の噂で孤立していた彼女にとって、ローレライの献身はかけがえのない光だった。

「……ありがとう。私もあなたがいてくれて心強いわ」

「それから、ひとつだけ報告があるの。父が、商会関係の書類をさらに調べてくれて、やはり明確に王家に近い人物の名前が隠されている可能性が強いとわかったの。確証はまだないけれど、これは何かあるとしか思えない」

 ローレライの話を聞いて、ココナは深く頷く。襲撃まで起こった以上、黒幕はかなり大規模な権力を動かせる立場にいると見て間違いない。王宮で行われる夜会に、その真相が隠されているかもしれないと思うと、緊張が高まる。

「夜会までもう日がないけれど、そこで何らかの動きがあるはず。私たちはそれに備えて情報を集め続けましょう」

「もちろん。私は、お菓子作りの腕くらいしか取り柄がないけれど、できる限りお手伝いします。あなたが真実を掴むまで、ずっと協力させて」

 二人は顔を見合わせ、自然に笑みがこぼれる。外の世界は暗く、陰謀が渦巻き、危険も絶えない。それでも、お互いを理解して支え合う絆こそが、今の彼女たちを突き動かす大きな原動力だった。
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