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そして迎えた夜会当日。王宮の大広間は、夜が訪れる前から慌ただしい人々の往来で賑わっていた。煌びやかなシャンデリア、磨き抜かれた大理石の床、花々が飾られた長テーブルには上質な飲み物や料理が並ぶ。貴族や要人たちが集まり、華やかさを競い合っている。
そんな中、ココナ・フォルティアは伯爵家の従者と騎士を伴い、予定より少し早く宮殿の門をくぐった。婚約破棄の件で注目を集める存在だけに、会場入りする彼女へ向ける視線は冷ややかというより好奇の色が強い。
「噂の伯爵令嬢が来たわね……」
「ケーキ事件の犯人、と言われているけれど本当はどうなのかしら」
耳に飛び込むささやきを気にしないよう、ココナは背筋を伸ばして歩く。その姿を見かけたローレライがすぐに駆け寄り、控えめに声をかけた。
「ココナ様、よくいらしてくれました。大丈夫?」
「ええ、大丈夫。あなたは?」
「私も正直緊張でいっぱいよ。でも、一緒なら心強いわ」
二人は軽く微笑みを交わし合い、大広間の一角に身を寄せた。そこから見渡す限り、王妃フィリアの姿はまだ見えない。アルトワーズ王太子も他の要人たちと挨拶を交わしているらしく、すぐには近づけない雰囲気だ。
やがて、見覚えのある重厚な衣装を身にまとった人物が現れる。グレンダール公爵だ。ゆったりとした足取りで会場を回り、一部の貴族と軽く挨拶を交わしている。ココナやローレライの方へは目を向けないが、まるで全体を監視しているかのようだ。
「……やっぱりあの人が公爵本人ね。あの冷たい眼差し、どこか狩り場の獲物を見るようにも感じるわ」
ローレライが小声で言う。その言葉にココナもうなずく。もし、この人物こそがケーキ事件を仕組んだ犯人ならば、今宵ここで何らかの行動を起こす可能性は高い。
「気を抜かないようにしましょう。何かおかしな動きがあればすぐに知らせ合うのよ」
「ええ。アルトワーズ殿下の動向も見逃せないわ。もし彼がグレンダール公爵と接触するような場面があれば、何か掴めるかもしれない」
ちょうどそのとき、ファンファーレのような音楽が響き、会場の注目が一斉に入り口へと向く。王妃フィリアの登場だ。優雅にドレスをまとい、その背後には侍女や近衛騎士が付き従う。視線を巡らせる王妃と目が合い、ココナは軽く礼をする。フィリアもわずかにうなずいたが、その表情は読み取りづらい。
「本日は皆様、ご参集いただき誠にありがとうございます」
王妃フィリアの声が広間に響き渡る。形ばかりの挨拶とともに、夜会の開幕が宣言される。色とりどりの衣装をまとった貴族たちは、早速談笑を始めたり、音楽に合わせて踊ったりと、華やかな宴の空気に浸っていく。
しかし、その華やかさとは裏腹に、ココナは息苦しさを感じていた。視線の端では、グレンダール公爵が誰かと低声で何かを話している。王太子の姿はまだ人の波に隠れてよく見えない。王妃がどのように“決着”をつけようとしているのかも、未知数だ。
「ココナ様、今夜が正念場ね」
「ええ。覚悟はできてる。私も、もう逃げたりしない」
二人は互いを見つめ合い、小さくうなずいた。毒騒動の真犯人を暴くか、それとも逆に陥れられてしまうのか。王宮の夜会は、華麗な音楽と煌めくシャンデリアの下、危険な駆け引きの舞台として幕を開けたのだった。
そんな中、ココナ・フォルティアは伯爵家の従者と騎士を伴い、予定より少し早く宮殿の門をくぐった。婚約破棄の件で注目を集める存在だけに、会場入りする彼女へ向ける視線は冷ややかというより好奇の色が強い。
「噂の伯爵令嬢が来たわね……」
「ケーキ事件の犯人、と言われているけれど本当はどうなのかしら」
耳に飛び込むささやきを気にしないよう、ココナは背筋を伸ばして歩く。その姿を見かけたローレライがすぐに駆け寄り、控えめに声をかけた。
「ココナ様、よくいらしてくれました。大丈夫?」
「ええ、大丈夫。あなたは?」
「私も正直緊張でいっぱいよ。でも、一緒なら心強いわ」
二人は軽く微笑みを交わし合い、大広間の一角に身を寄せた。そこから見渡す限り、王妃フィリアの姿はまだ見えない。アルトワーズ王太子も他の要人たちと挨拶を交わしているらしく、すぐには近づけない雰囲気だ。
やがて、見覚えのある重厚な衣装を身にまとった人物が現れる。グレンダール公爵だ。ゆったりとした足取りで会場を回り、一部の貴族と軽く挨拶を交わしている。ココナやローレライの方へは目を向けないが、まるで全体を監視しているかのようだ。
「……やっぱりあの人が公爵本人ね。あの冷たい眼差し、どこか狩り場の獲物を見るようにも感じるわ」
ローレライが小声で言う。その言葉にココナもうなずく。もし、この人物こそがケーキ事件を仕組んだ犯人ならば、今宵ここで何らかの行動を起こす可能性は高い。
「気を抜かないようにしましょう。何かおかしな動きがあればすぐに知らせ合うのよ」
「ええ。アルトワーズ殿下の動向も見逃せないわ。もし彼がグレンダール公爵と接触するような場面があれば、何か掴めるかもしれない」
ちょうどそのとき、ファンファーレのような音楽が響き、会場の注目が一斉に入り口へと向く。王妃フィリアの登場だ。優雅にドレスをまとい、その背後には侍女や近衛騎士が付き従う。視線を巡らせる王妃と目が合い、ココナは軽く礼をする。フィリアもわずかにうなずいたが、その表情は読み取りづらい。
「本日は皆様、ご参集いただき誠にありがとうございます」
王妃フィリアの声が広間に響き渡る。形ばかりの挨拶とともに、夜会の開幕が宣言される。色とりどりの衣装をまとった貴族たちは、早速談笑を始めたり、音楽に合わせて踊ったりと、華やかな宴の空気に浸っていく。
しかし、その華やかさとは裏腹に、ココナは息苦しさを感じていた。視線の端では、グレンダール公爵が誰かと低声で何かを話している。王太子の姿はまだ人の波に隠れてよく見えない。王妃がどのように“決着”をつけようとしているのかも、未知数だ。
「ココナ様、今夜が正念場ね」
「ええ。覚悟はできてる。私も、もう逃げたりしない」
二人は互いを見つめ合い、小さくうなずいた。毒騒動の真犯人を暴くか、それとも逆に陥れられてしまうのか。王宮の夜会は、華麗な音楽と煌めくシャンデリアの下、危険な駆け引きの舞台として幕を開けたのだった。
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