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王妃フィリアがケーキ事件について話し始めると、大広間の視線は一瞬で彼女へと集中した。フィリアはその注目を受け止めながら、ゆっくりと口を開く。
「まずは、ケーキから見つかった粉末に関して。正式な検査結果は既に得ておりますが、あれは実際に有害物質の一種と判明しました」
ざわめきが会場を駆け巡る。やはりあれは毒だったのか、と人々は声をひそめ合う。ココナは胸を締めつけられるような感覚を覚えた。もしあのケーキが誰かの口に入っていたら、一体どうなっていたのだろう。
「当初、ケーキを作ったのはグランディア公爵令嬢、そしてそれを落としたのがフォルティア伯爵令嬢。多くの噂が飛び交いましたが、私としては彼女たちが毒を仕込んだとは思っておりません」
フィリアは厳かな口調で言い放つ。ローレライやココナに向けられていた“悪役”の目線が、少しずつ困惑に変わっていくのがわかった。彼女たちの無実を王妃が認める形となれば、世論も黙るだろう。
「では、一体誰が毒を入れたのか。それについて、調べが進められてきました。……アルトワーズ、あなたから皆様に説明してちょうだい」
促されるように、王妃の隣に立つアルトワーズ王太子がうなずく。やや険しい表情を浮かべたまま、会場をぐるりと見渡したあと、はっきりとした声で言葉を告げる。
「今回の毒混入は、王宮に出入りするある貴族の手によって行われた可能性が極めて高いと判明した。その人物は、ケーキが私のもとへ渡ることを狙い、混乱を引き起こそうとしたのだ」
その告白に、さらなるどよめきが広がる。王太子を狙った毒殺未遂とも取れる話だ。ココナは思わず息を止める。やはり、王族を狙う陰謀が背景にあったのか。
「……その名をここで公表する前に、私は一つ決断をしたい。王国を揺るがす重大な犯罪に対して、私自らの立場をはっきりさせる必要がある」
アルトワーズはまっすぐ前を向く。かつての柔和な笑みはどこにもなく、ひとりの王子としての厳粛な覚悟がうかがえた。
「私はこれまで、婚約破棄という形でフォルティア伯爵令嬢を遠ざけてきた。政治的な思惑もあったが、今はその決断を後悔している。王太子として、彼女の名誉を取り戻す義務があると考えた」
唐突なアルトワーズの宣言に、会場は騒然となる。婚約破棄を自ら撤回するのか。王太子がここまで強い言葉で後悔を述べるのは異例だ。
その様子を見て、ココナは胸がいっぱいになる。まさか、こんな形でアルトワーズが本心を口にするとは思っていなかった。あの日、冷たく突き放された痛みが蘇りながらも、言葉にならない感情が湧き上がる。
「……そして、改めて王家の権威を守るためにも、毒を仕掛けた者には厳正なる処罰を下す。いかに高位貴族であろうと容赦はしない。それが、私の義務だ」
アルトワーズがそう言い切ると、フィリア王妃もうなずくように視線を落とす。グレンダール公爵の周囲にいる取り巻きたちは、露骨に顔を引きつらせていた。明らかに動揺しているが、公爵本人は微笑を崩さない。
「おお、それは頼もしい。さすがガルシア王家の王太子殿下だ」
公爵の声が、どこか嘲笑じみて響く。アルトワーズはその声に振り返り、会場の目が二人に注がれる中、視線が火花を散らす。グレンダール公爵が黒幕だと確証が得られれば、この場で名指しされることになるかもしれない。そうなれば、大逆転とともに大混乱が起きるだろう。
ココナは胸を押さえ、成り行きを見守るしかない。王太子アルトワーズが決断を下した以上、次に事態が動くのは“真犯人の名”が公表される瞬間だ。果たして、その矛先はどこへ向かうのか。夜会はますます緊張の度合いを高めていった。
「まずは、ケーキから見つかった粉末に関して。正式な検査結果は既に得ておりますが、あれは実際に有害物質の一種と判明しました」
ざわめきが会場を駆け巡る。やはりあれは毒だったのか、と人々は声をひそめ合う。ココナは胸を締めつけられるような感覚を覚えた。もしあのケーキが誰かの口に入っていたら、一体どうなっていたのだろう。
「当初、ケーキを作ったのはグランディア公爵令嬢、そしてそれを落としたのがフォルティア伯爵令嬢。多くの噂が飛び交いましたが、私としては彼女たちが毒を仕込んだとは思っておりません」
フィリアは厳かな口調で言い放つ。ローレライやココナに向けられていた“悪役”の目線が、少しずつ困惑に変わっていくのがわかった。彼女たちの無実を王妃が認める形となれば、世論も黙るだろう。
「では、一体誰が毒を入れたのか。それについて、調べが進められてきました。……アルトワーズ、あなたから皆様に説明してちょうだい」
促されるように、王妃の隣に立つアルトワーズ王太子がうなずく。やや険しい表情を浮かべたまま、会場をぐるりと見渡したあと、はっきりとした声で言葉を告げる。
「今回の毒混入は、王宮に出入りするある貴族の手によって行われた可能性が極めて高いと判明した。その人物は、ケーキが私のもとへ渡ることを狙い、混乱を引き起こそうとしたのだ」
その告白に、さらなるどよめきが広がる。王太子を狙った毒殺未遂とも取れる話だ。ココナは思わず息を止める。やはり、王族を狙う陰謀が背景にあったのか。
「……その名をここで公表する前に、私は一つ決断をしたい。王国を揺るがす重大な犯罪に対して、私自らの立場をはっきりさせる必要がある」
アルトワーズはまっすぐ前を向く。かつての柔和な笑みはどこにもなく、ひとりの王子としての厳粛な覚悟がうかがえた。
「私はこれまで、婚約破棄という形でフォルティア伯爵令嬢を遠ざけてきた。政治的な思惑もあったが、今はその決断を後悔している。王太子として、彼女の名誉を取り戻す義務があると考えた」
唐突なアルトワーズの宣言に、会場は騒然となる。婚約破棄を自ら撤回するのか。王太子がここまで強い言葉で後悔を述べるのは異例だ。
その様子を見て、ココナは胸がいっぱいになる。まさか、こんな形でアルトワーズが本心を口にするとは思っていなかった。あの日、冷たく突き放された痛みが蘇りながらも、言葉にならない感情が湧き上がる。
「……そして、改めて王家の権威を守るためにも、毒を仕掛けた者には厳正なる処罰を下す。いかに高位貴族であろうと容赦はしない。それが、私の義務だ」
アルトワーズがそう言い切ると、フィリア王妃もうなずくように視線を落とす。グレンダール公爵の周囲にいる取り巻きたちは、露骨に顔を引きつらせていた。明らかに動揺しているが、公爵本人は微笑を崩さない。
「おお、それは頼もしい。さすがガルシア王家の王太子殿下だ」
公爵の声が、どこか嘲笑じみて響く。アルトワーズはその声に振り返り、会場の目が二人に注がれる中、視線が火花を散らす。グレンダール公爵が黒幕だと確証が得られれば、この場で名指しされることになるかもしれない。そうなれば、大逆転とともに大混乱が起きるだろう。
ココナは胸を押さえ、成り行きを見守るしかない。王太子アルトワーズが決断を下した以上、次に事態が動くのは“真犯人の名”が公表される瞬間だ。果たして、その矛先はどこへ向かうのか。夜会はますます緊張の度合いを高めていった。
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