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ココナがアルトワーズと会話を終え、少し離れた場所でローレライと合流した直後、王妃フィリアが悠然と歩み寄ってきた。周囲の貴族たちが身を引き、彼女の進路を開ける。威厳と気品を漂わせる佇まいに、ココナは背筋を伸ばした。
「フォルティア伯爵令嬢、先ほどの殿下とのやり取り、拝見していたわ」
「王妃様……」
フィリアはわずかに微笑んでいるように見えるが、その視線は依然として鋭い。ローレライも隣で緊張した面持ちを崩せない。
「あなたはずいぶん変わったわね。以前のあなたなら、ただ殿下の言葉に甘え、流されるだけだったでしょうに」
「……はい。いろいろな経験をして、自分で道を切り開くしかないと思ったんです」
ココナの答えに、フィリアは満足げに頷いた。そして、少し視線を外し、大広間の中央を見渡すように目を巡らせる。
「グレンダール公爵との話が続いているのは知っているでしょう。私もあちらも、一歩も引かない構えなの。けれど、あなたやローレライを追い込んだ者を野放しにする気もない」
その言葉からは、王妃としての覚悟がうかがえる。もしグレンダール公爵を真正面から追及すれば、国内の派閥争いが激化するのは必至。だが王妃はそれでも、公爵を黙認するつもりはないようだ。
「……それは、私たちの名誉を守るためということでしょうか」
ローレライが控えめに尋ねると、フィリアはふっと笑みを浮かべる。冷ややかとも温かいともつかない不思議な笑みだった。
「もちろん、それもあるわ。毒騒動を許せば、王家の威信に傷がつく。あなた方二人が生贄になるような真似は、私の美学に反するのよ」
「美学……」
ココナは胸がざわつく。王妃フィリアが求めるのは、王宮の秩序と美しさだろう。そこに反する行為は決して見逃さないという強い意志が感じられる。
「それから、殿下がかつて婚約を決めた相手を、無残な形で潰すなどあってはならない。私は王妃として、フォルティア伯爵令嬢がただ犠牲になるのを看過するつもりはないわ」
そう言うフィリアの表情には、かすかな優しさすら宿っていた。ココナが思い描いていた“恐ろしげな王妃”というイメージが、少しずつ変化していく。
するとフィリアは、最後に小さく耳打ちするような声で告げる。
「今夜の最後に、ある場が設けられる予定よ。もし真実を暴きたいなら、その場を逃さないこと。……私から言えるのはこれだけ」
「わ、わかりました」
ココナは慌てて頭を下げるが、フィリアはそれには応えず、優雅に踵を返して歩み去ってしまった。残されたココナとローレライは顔を見合わせる。
「今夜の最後に、何が起こるのでしょう」
「わからない。でも、王妃様がわざわざ教えてくださったのよ。きっと大事な場面になるはず」
そう呟いたとき、大広間の一角で目が合ったグレンダール公爵が不気味な笑みを浮かべているのに気づいた。どこか挑戦的な、その目つき。公爵もまた、王妃の動きを察しているのだろう。
「決戦はこれから、ですね」
ローレライが不安げに声を震わせる。ココナは唇をぎゅっと噛み、うなずいた。王妃の微笑みは、嵐の前の静けさを示すものなのかもしれない。波乱の夜会は、最高潮の場面へと近づいていく。
「フォルティア伯爵令嬢、先ほどの殿下とのやり取り、拝見していたわ」
「王妃様……」
フィリアはわずかに微笑んでいるように見えるが、その視線は依然として鋭い。ローレライも隣で緊張した面持ちを崩せない。
「あなたはずいぶん変わったわね。以前のあなたなら、ただ殿下の言葉に甘え、流されるだけだったでしょうに」
「……はい。いろいろな経験をして、自分で道を切り開くしかないと思ったんです」
ココナの答えに、フィリアは満足げに頷いた。そして、少し視線を外し、大広間の中央を見渡すように目を巡らせる。
「グレンダール公爵との話が続いているのは知っているでしょう。私もあちらも、一歩も引かない構えなの。けれど、あなたやローレライを追い込んだ者を野放しにする気もない」
その言葉からは、王妃としての覚悟がうかがえる。もしグレンダール公爵を真正面から追及すれば、国内の派閥争いが激化するのは必至。だが王妃はそれでも、公爵を黙認するつもりはないようだ。
「……それは、私たちの名誉を守るためということでしょうか」
ローレライが控えめに尋ねると、フィリアはふっと笑みを浮かべる。冷ややかとも温かいともつかない不思議な笑みだった。
「もちろん、それもあるわ。毒騒動を許せば、王家の威信に傷がつく。あなた方二人が生贄になるような真似は、私の美学に反するのよ」
「美学……」
ココナは胸がざわつく。王妃フィリアが求めるのは、王宮の秩序と美しさだろう。そこに反する行為は決して見逃さないという強い意志が感じられる。
「それから、殿下がかつて婚約を決めた相手を、無残な形で潰すなどあってはならない。私は王妃として、フォルティア伯爵令嬢がただ犠牲になるのを看過するつもりはないわ」
そう言うフィリアの表情には、かすかな優しさすら宿っていた。ココナが思い描いていた“恐ろしげな王妃”というイメージが、少しずつ変化していく。
するとフィリアは、最後に小さく耳打ちするような声で告げる。
「今夜の最後に、ある場が設けられる予定よ。もし真実を暴きたいなら、その場を逃さないこと。……私から言えるのはこれだけ」
「わ、わかりました」
ココナは慌てて頭を下げるが、フィリアはそれには応えず、優雅に踵を返して歩み去ってしまった。残されたココナとローレライは顔を見合わせる。
「今夜の最後に、何が起こるのでしょう」
「わからない。でも、王妃様がわざわざ教えてくださったのよ。きっと大事な場面になるはず」
そう呟いたとき、大広間の一角で目が合ったグレンダール公爵が不気味な笑みを浮かべているのに気づいた。どこか挑戦的な、その目つき。公爵もまた、王妃の動きを察しているのだろう。
「決戦はこれから、ですね」
ローレライが不安げに声を震わせる。ココナは唇をぎゅっと噛み、うなずいた。王妃の微笑みは、嵐の前の静けさを示すものなのかもしれない。波乱の夜会は、最高潮の場面へと近づいていく。
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