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「エリアーヌ、ここにあった資料を見てくれ」
王宮の図書室。その片隅で、セスが大きな本を開きながら私を呼んでいる。騎士団の訓練が休みということもあって、私たちは連日ここに通っていた。少しでも王妃さまや王家にまつわる情報を探り、婚約破棄に向けた糸口を見つけるためだ。
「こんな古い文献、まともに読めるのかしら」
「ところどころ破れてて判別しにくいんだけど、王妃さまの出自に関する手掛かりになりそうなんだ」
セスが指差すページには、王妃さまが若い頃に名乗っていたらしい名前や、当時の宮廷内での出来事が断片的に記されていた。
「『王妃候補だった公女ミラは、謎の病から国王に救われ……』って書いてあるわね。何かの暗示かしら」
「さあ。でも、王妃さまが国王陛下と結婚する前に色々あったみたいだな。これは今も誰かが隠しているのかもしれない」
セスがページをめくるたび、古い紙がかすかに音を立てる。私も興味をそそられて覗き込むが、記述の多くがかすれて消えている。はっきりと理解できる部分は少ないものの、“王妃さまが公女の立場で苦労した”というニュアンスは感じ取れた。
「やっぱり、王妃さまは強い人なんだろうな。自分を守るために、そして国を守るために、ああやって冷たい仮面を被っているのかもしれない」
「そうだろうな。少なくとも、エリアーヌやアリアーナ様の話を聞く限り、表裏のある人物じゃないと思う」
セスが本を閉じ、ほっと息をつく。私も少し肩の力が抜けた気がする。
「それにしても、これだけ探しても王太子殿下との婚約破棄に関わるような手掛かりはないわね」
「だな。王宮の権力関係は複雑で、たとえ破棄できたとしてもエリアーヌが今以上に苦しい立場に追い込まれる可能性はある」
セスの言葉に胸が痛む。婚約破棄に走るなら、王家を敵に回すだけでなく、多くの貴族から非難を浴びるのは確実だ。そんな中で私が生きていける保証などどこにもない。
「でも、王妃さまは『本気なら止めない』って仰った。私はその意志を貫くだけよ」
決意を口にすると、セスは真面目な顔で頷く。
「わかった。俺はいつでも力になる。エリアーヌがどんな選択をしても、俺は君を守りたい」
「ありがとう、セス」
その言葉に救われる気がした。私はもう一度、本を手に取り、かすれた文字を丹念に追う。すると、ページの端からちらりと一枚の古いメモが落ちた。
「これ、何かしら」
広げてみると、王家にまつわる印章らしきものがうっすらと押されている。しかし文字はほとんど見えない。ただ、最後の行に「王家を崩す鍵は」とだけ記されていた。それが何を意味するのか見当もつかない。
「王家を崩す鍵って……まさか、反逆か何かかな」
「可能性はあるな。前に殿下が言ってた舞踏会での不審者騒動も、こういう裏があるのかもしれない」
何者かが王家を狙っているとしたら、私の婚約破棄騒動も利用されているのではないか。そんな不安が頭をよぎり、背筋が寒くなる。
「王家を崩す……それを実行しようとしている勢力があるの?」
「わからない。だけど、もう時間がない。エリアーヌが安心して婚約を破棄できるようにするには、この陰謀とやらを解明する必要があるかもしれない」
セスと視線を交わした。何やら大きなことに巻き込まれつつある予感がする。けれど、逃げるわけにはいかない。私は心を落ち着かせるように息を吐き、ページを静かに閉じた。
王宮の図書室。その片隅で、セスが大きな本を開きながら私を呼んでいる。騎士団の訓練が休みということもあって、私たちは連日ここに通っていた。少しでも王妃さまや王家にまつわる情報を探り、婚約破棄に向けた糸口を見つけるためだ。
「こんな古い文献、まともに読めるのかしら」
「ところどころ破れてて判別しにくいんだけど、王妃さまの出自に関する手掛かりになりそうなんだ」
セスが指差すページには、王妃さまが若い頃に名乗っていたらしい名前や、当時の宮廷内での出来事が断片的に記されていた。
「『王妃候補だった公女ミラは、謎の病から国王に救われ……』って書いてあるわね。何かの暗示かしら」
「さあ。でも、王妃さまが国王陛下と結婚する前に色々あったみたいだな。これは今も誰かが隠しているのかもしれない」
セスがページをめくるたび、古い紙がかすかに音を立てる。私も興味をそそられて覗き込むが、記述の多くがかすれて消えている。はっきりと理解できる部分は少ないものの、“王妃さまが公女の立場で苦労した”というニュアンスは感じ取れた。
「やっぱり、王妃さまは強い人なんだろうな。自分を守るために、そして国を守るために、ああやって冷たい仮面を被っているのかもしれない」
「そうだろうな。少なくとも、エリアーヌやアリアーナ様の話を聞く限り、表裏のある人物じゃないと思う」
セスが本を閉じ、ほっと息をつく。私も少し肩の力が抜けた気がする。
「それにしても、これだけ探しても王太子殿下との婚約破棄に関わるような手掛かりはないわね」
「だな。王宮の権力関係は複雑で、たとえ破棄できたとしてもエリアーヌが今以上に苦しい立場に追い込まれる可能性はある」
セスの言葉に胸が痛む。婚約破棄に走るなら、王家を敵に回すだけでなく、多くの貴族から非難を浴びるのは確実だ。そんな中で私が生きていける保証などどこにもない。
「でも、王妃さまは『本気なら止めない』って仰った。私はその意志を貫くだけよ」
決意を口にすると、セスは真面目な顔で頷く。
「わかった。俺はいつでも力になる。エリアーヌがどんな選択をしても、俺は君を守りたい」
「ありがとう、セス」
その言葉に救われる気がした。私はもう一度、本を手に取り、かすれた文字を丹念に追う。すると、ページの端からちらりと一枚の古いメモが落ちた。
「これ、何かしら」
広げてみると、王家にまつわる印章らしきものがうっすらと押されている。しかし文字はほとんど見えない。ただ、最後の行に「王家を崩す鍵は」とだけ記されていた。それが何を意味するのか見当もつかない。
「王家を崩す鍵って……まさか、反逆か何かかな」
「可能性はあるな。前に殿下が言ってた舞踏会での不審者騒動も、こういう裏があるのかもしれない」
何者かが王家を狙っているとしたら、私の婚約破棄騒動も利用されているのではないか。そんな不安が頭をよぎり、背筋が寒くなる。
「王家を崩す……それを実行しようとしている勢力があるの?」
「わからない。だけど、もう時間がない。エリアーヌが安心して婚約を破棄できるようにするには、この陰謀とやらを解明する必要があるかもしれない」
セスと視線を交わした。何やら大きなことに巻き込まれつつある予感がする。けれど、逃げるわけにはいかない。私は心を落ち着かせるように息を吐き、ページを静かに閉じた。
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