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リリアナ・ベルンシュタインは、幸せの絶頂にいた。
あの恐ろしい悪役令嬢、ウピエル様はいなくなった。
そして、愛するアルベルト殿下は、自分こそが真実の愛の相手だと、皆の前で宣言してくれたのだ。
これからは、自分が王太子殿下の隣に立つ。
自分が、未来の王妃になる。
その甘い夢に、リリアナは胸をときめかせていた。
「聞いてちょうだい、アンナ。殿下が、私のことを『未来の国母にふさわしい』って……!」
リリアナは、自分の侍女であるアンナに、夜会の出来事を興奮気味に語っていた。
しかし、アンナの反応は、なぜか鈍い。
「……そうでございますか。おめでとうございます、リリアナ様」
その声には、少しも喜びの色が感じられなかった。
「なあに、その言い方。嬉しくないの?」
「いえ、そのようなことは……。ただ……」
アンナは、何かを言い淀んでいる。
その時、部屋の外の廊下から、他の侍女たちのひそひそ話が聞こえてきた。
「聞いた? クライフォルト公爵家、王家からの使者を門前払いしたんですって」
「当然よ。あんな侮辱を受けたのだもの。むしろ、戦争にならなかっただけマシよ」
「でも、ウピエル様がいなくなって、この国、本当に大丈夫なのかしら……」
「大丈夫なわけないじゃない。私の実家、北部の領地なんだけど、ウピエル様が考案された新しい農法のおかげで、やっと食べるのに困らなくなったのよ。その計画も、今回の件で頓挫するかもしれないって……」
「私の恋人も、騎士団にいるけど、ウピエル様が開発した魔法具がなかったら、前の戦で死んでたって言ってたわ。騎士団の人たち、みんな殿下のこと、ものすごく怒ってるらしいわよ」
「リリアナ様……でしたっけ? あの方、殿下に取り入ったみたいだけど、ウピエル様の代わりなんて、とてもじゃないけど務まらないわよね……」
「ええ。可愛らしいだけで、国は守れないもの」
侍女たちの辛辣な言葉が、壁を通り抜けてリリアナの耳に突き刺さる。
リリアナの顔から、さっと血の気が引いた。
「な、なんですの……今の……」
「……リリアナ様。これが、現実でございます」
今まで黙っていたアンナが、静かに口を開いた。
「皆様、ウピエル様のことを、ただの公爵令嬢だとは思っておりません。あの方は、この国の……いえ、我々民の生活を、そのお力で守ってくださっていた、特別な方なのです」
「そ、そんな……」
「皆、口には出しませんが、思っております。なぜ、ウピエル様ではなく、あなた様が殿下の隣にいるのか、と」
アンナの目は、リリアナを責めているようだった。
リリアナは、自分が夢見ていた世界が、ガラガラと音を立てて崩れていくのを感じた。
自分は、ただアルベルト殿下に愛されれば、それで幸せになれると思っていた。
しかし、現実は違った。
王太子妃の座は、ただ愛されているだけでは務まらない。
その背後には、ウピエルが築き上げてきた、あまりにも巨大な功績と、人々の信頼があったのだ。
その日、お茶会に招かれたリリアナは、他の貴族令嬢たちから、あからさまに無視された。
遠巻きにされ、ひそひそと何かを噂されている。
その視線は、憧れや嫉妬ではなく、侮蔑と失望に満ちていた。
(私が……悪いの……?)
リリアナは、自分が信じてきた物語が、ただの幻想だったのではないかと、初めて疑い始めた。
自分がヒロインで、ウピエルが悪役令嬢。
その単純な構図は、実は、全くの逆だったのではないか。
その恐ろしい考えに、リリアナは身を震わせることしかできなかった。
あの恐ろしい悪役令嬢、ウピエル様はいなくなった。
そして、愛するアルベルト殿下は、自分こそが真実の愛の相手だと、皆の前で宣言してくれたのだ。
これからは、自分が王太子殿下の隣に立つ。
自分が、未来の王妃になる。
その甘い夢に、リリアナは胸をときめかせていた。
「聞いてちょうだい、アンナ。殿下が、私のことを『未来の国母にふさわしい』って……!」
リリアナは、自分の侍女であるアンナに、夜会の出来事を興奮気味に語っていた。
しかし、アンナの反応は、なぜか鈍い。
「……そうでございますか。おめでとうございます、リリアナ様」
その声には、少しも喜びの色が感じられなかった。
「なあに、その言い方。嬉しくないの?」
「いえ、そのようなことは……。ただ……」
アンナは、何かを言い淀んでいる。
その時、部屋の外の廊下から、他の侍女たちのひそひそ話が聞こえてきた。
「聞いた? クライフォルト公爵家、王家からの使者を門前払いしたんですって」
「当然よ。あんな侮辱を受けたのだもの。むしろ、戦争にならなかっただけマシよ」
「でも、ウピエル様がいなくなって、この国、本当に大丈夫なのかしら……」
「大丈夫なわけないじゃない。私の実家、北部の領地なんだけど、ウピエル様が考案された新しい農法のおかげで、やっと食べるのに困らなくなったのよ。その計画も、今回の件で頓挫するかもしれないって……」
「私の恋人も、騎士団にいるけど、ウピエル様が開発した魔法具がなかったら、前の戦で死んでたって言ってたわ。騎士団の人たち、みんな殿下のこと、ものすごく怒ってるらしいわよ」
「リリアナ様……でしたっけ? あの方、殿下に取り入ったみたいだけど、ウピエル様の代わりなんて、とてもじゃないけど務まらないわよね……」
「ええ。可愛らしいだけで、国は守れないもの」
侍女たちの辛辣な言葉が、壁を通り抜けてリリアナの耳に突き刺さる。
リリアナの顔から、さっと血の気が引いた。
「な、なんですの……今の……」
「……リリアナ様。これが、現実でございます」
今まで黙っていたアンナが、静かに口を開いた。
「皆様、ウピエル様のことを、ただの公爵令嬢だとは思っておりません。あの方は、この国の……いえ、我々民の生活を、そのお力で守ってくださっていた、特別な方なのです」
「そ、そんな……」
「皆、口には出しませんが、思っております。なぜ、ウピエル様ではなく、あなた様が殿下の隣にいるのか、と」
アンナの目は、リリアナを責めているようだった。
リリアナは、自分が夢見ていた世界が、ガラガラと音を立てて崩れていくのを感じた。
自分は、ただアルベルト殿下に愛されれば、それで幸せになれると思っていた。
しかし、現実は違った。
王太子妃の座は、ただ愛されているだけでは務まらない。
その背後には、ウピエルが築き上げてきた、あまりにも巨大な功績と、人々の信頼があったのだ。
その日、お茶会に招かれたリリアナは、他の貴族令嬢たちから、あからさまに無視された。
遠巻きにされ、ひそひそと何かを噂されている。
その視線は、憧れや嫉妬ではなく、侮蔑と失望に満ちていた。
(私が……悪いの……?)
リリアナは、自分が信じてきた物語が、ただの幻想だったのではないかと、初めて疑い始めた。
自分がヒロインで、ウピエルが悪役令嬢。
その単純な構図は、実は、全くの逆だったのではないか。
その恐ろしい考えに、リリアナは身を震わせることしかできなかった。
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