この悪役令嬢できる!

ともえなこ

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アルベルトの、魂からの叫びのような告白。
そして、彼のプライドが粉々に砕け散った、土下座という行為。
ウピエルは、ただ黙って、その全てを受け止めていた。

やがて、彼女の肩が、小さく震え始めた。
その瞳から、堰を切ったように、再び涙が溢れ出す。
しかし、それは、婚約破棄の夜に見せた、子供のような号泣ではなかった。

「……どうして」

ウピエルの声は、涙で濡れていたが、その響きには、確かな芯が通っていた。

「どうして、今になって、そんなことをおっしゃるのですか……」

アルベルトは、彼女の声に、はっと顔を上げた。
その目に映ったのは、泣きながらも、真っ直ぐに自分を見据える、ウピエルの強い瞳だった。

「わたくしは……! わたくしは、ずっと、あなたに愛されたかっただけなのです!」

彼女の叫びが、庭の空気を震わせた。

「あなたに好かれたくて、あなたに褒めてほしくて、あなたの役に立ちたくて……! その一心で、全てを我慢してきました!」

ウピエルは、自分の胸をぎゅっと掴んだ。

「苦手な刺繍も、夜中に指から血を流しながら練習しました! 大好きな甘いお菓子も、ずっと我慢しました! あなたが好きな歴史の本を、必死で読みました! あなたが退屈しないように、面白い話ができるようにと!」

「ウピエル……」

「わたくしの全ては、あなたのためにあったのです! この知識も、この力も、全部、あなたを支えるために磨いてきたものです! それなのに、あなたは……あなたは、そんなわたくしを、『心が通わない人形』だと、そうおっしゃった!」

その言葉は、アルベルトの胸に、鋭い刃のように突き刺さった。

「わたくしだって、笑いたかった! あなたと一緒に、心から笑い合いたかった! でも、どうすればあなたが喜んでくださるのか、分からなかった……! 完璧でいること以外に、あなたに愛される方法が、わたくしには分からなかったのです!」

涙が、次から次へと、彼女の頬を伝い落ちる。

「わたくしが、どれだけあなたのことを想っていたか、あなたは、何一つ、気づいてくださらなかった……!」

それは、今まで彼女が心の奥底に押し殺してきた、本当の気持ちだった。
悲しみ、怒り、そして、どうしようもないほどの、やるせない恋心。
その全てが、アルベルトにぶつけられていた。

「もう、遅いのです……」

ウピエルは、静かに言った。

「あなたのそのお言葉を、わたくしは、ずっと、ずっと待っていました。でも、あなたがそれを口にしたのは、わたくしの全てを否定し、踏みにじった後なのです。その言葉を、今のわたくしが、どうやって信じろと……?」

アルからアルベルトは、何も言い返せなかった。
彼女の言う通りだった。
自分は、彼女が差し出してくれていた、数えきれないほどの愛情のサインを、ことごとく見過ごし、踏みつけてきたのだ。
そして今、全てを失うという恐怖に駆られて、初めて愛を口にしている。
そんな自分を、彼女が信じられるはずがない。

「お帰りください、殿下」

ウピエルは、涙を拭うと、きっぱりと言った。

「あなたの土下座も、あなたの愛の言葉も、もう、今のわたくしの心には、響きません」

その声は、震えていたが、その中に含まれた拒絶の意思は、あまりにも明確で、揺るぎないものだった。
アルベルトは、その場で、全身の力が抜けていくのを感じた。
自分が、本当に、取り返しのつかないものを、失ってしまったのだということを、絶望的なまでに、理解した。
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