36 / 37
36
しおりを挟む
それから、数年の歳月が流れた。
ウピエル率いる『王国技術開発局』の活躍により、エルミート王国は、目覚ましい発展を遂げていた。
農業技術の革新は、国から飢餓を完全になくし、医療技術の進歩は、民の平均寿命を、十歳も延ばした。
ウピエルの開発した新素材や魔法具は、新たな産業を生み、国庫は、かつてないほどに潤っている。
かつては、軍事力だけが取り柄の、平凡な王国だったエルミートは、今や、大陸で最も豊かで、文化的な国の一つとして、その名を轟かせていた。
そして、王城にも、大きな変化があった。
国王レオポルトは、その座を息子に譲り、穏やかな隠居生活を送っている。
新たに、エルミート王国の玉座に就いたのは、若き国王、アルベルトだった。
彼は、かつての愚かで傲慢な王太子ではなかった。
父王の元で、死に物狂いで帝王学を学び、国政の隅々までを把握した。
ウピエルが築いた国の豊かさを、正しく民に分配し、公正な裁きで国を治める。
その聡明で、謙虚な統治は、国民から絶大な支持を得ていた。
人々は、彼を、父を超える「賢王」と呼んだ。
彼とウピエルの関係も、良好だった。
二人は、毎週、定例会議を開き、国の未来について、真剣に語り合う。
そこに、かつてのような男女の甘い空気はない。
あるのは、国を導く者同士の、深い信頼と、尊敬の念だけだ。
アルベルトは、ウピエルを、かけがえのない、最高のパートナーとして、心から頼りにしていた。
海の向こう、ヴァイス王国でも、サイラスが父の後を継ぎ、若き王として、辣腕を振るっていた。
彼の巧みな外交術と、技術革新により、ヴァイス王国もまた、エルミート王国と並び立つ、大陸の強国となっていた。
エルミートとヴァイス。
二つの国は、互いに競い合い、高め合う、良きライバル関係を築いていた。
特に、サイラスとウピエルの交流は、頻繁に続いていた。
最新の技術論文を、書簡で送り合っては、互いの見識を賞賛し、時には痛烈に批判し合う。
その知的な応酬は、二人にとって、何よりの楽しみとなっていた。
ある晴れた日の午後。
ウピエルは、自分の研究所のバルコニーで、心地よい風に吹かれていた。
彼女はもう、二十歳を過ぎていたが、その探究心と輝きは、少しも衰えていない。
眼下に広がる王都は、活気に満ち、平和そのものだった。
この景色を、自分の手で、仲間たちと共に、作り上げてきたのだ。
その事実に、彼女は、静かな満足感を覚えていた。
「(悪くない人生ね)」
ウピエルは、小さく呟いて、微笑んだ。
婚約破棄から始まった、波乱万丈の日々。
しかし、その全てが、今の自分に繋がっている。
そう思うと、過去の痛みすらも、愛おしいもののように感じられた。
彼女の物語は、一つの大きな円を描き、最高の形で、結実しようとしていた。
しかし、神様は、彼女にもう一つだけ、素敵なサプライズを用意してくれていたようだ。
ウピエル率いる『王国技術開発局』の活躍により、エルミート王国は、目覚ましい発展を遂げていた。
農業技術の革新は、国から飢餓を完全になくし、医療技術の進歩は、民の平均寿命を、十歳も延ばした。
ウピエルの開発した新素材や魔法具は、新たな産業を生み、国庫は、かつてないほどに潤っている。
かつては、軍事力だけが取り柄の、平凡な王国だったエルミートは、今や、大陸で最も豊かで、文化的な国の一つとして、その名を轟かせていた。
そして、王城にも、大きな変化があった。
国王レオポルトは、その座を息子に譲り、穏やかな隠居生活を送っている。
新たに、エルミート王国の玉座に就いたのは、若き国王、アルベルトだった。
彼は、かつての愚かで傲慢な王太子ではなかった。
父王の元で、死に物狂いで帝王学を学び、国政の隅々までを把握した。
ウピエルが築いた国の豊かさを、正しく民に分配し、公正な裁きで国を治める。
その聡明で、謙虚な統治は、国民から絶大な支持を得ていた。
人々は、彼を、父を超える「賢王」と呼んだ。
彼とウピエルの関係も、良好だった。
二人は、毎週、定例会議を開き、国の未来について、真剣に語り合う。
そこに、かつてのような男女の甘い空気はない。
あるのは、国を導く者同士の、深い信頼と、尊敬の念だけだ。
アルベルトは、ウピエルを、かけがえのない、最高のパートナーとして、心から頼りにしていた。
海の向こう、ヴァイス王国でも、サイラスが父の後を継ぎ、若き王として、辣腕を振るっていた。
彼の巧みな外交術と、技術革新により、ヴァイス王国もまた、エルミート王国と並び立つ、大陸の強国となっていた。
エルミートとヴァイス。
二つの国は、互いに競い合い、高め合う、良きライバル関係を築いていた。
特に、サイラスとウピエルの交流は、頻繁に続いていた。
最新の技術論文を、書簡で送り合っては、互いの見識を賞賛し、時には痛烈に批判し合う。
その知的な応酬は、二人にとって、何よりの楽しみとなっていた。
ある晴れた日の午後。
ウピエルは、自分の研究所のバルコニーで、心地よい風に吹かれていた。
彼女はもう、二十歳を過ぎていたが、その探究心と輝きは、少しも衰えていない。
眼下に広がる王都は、活気に満ち、平和そのものだった。
この景色を、自分の手で、仲間たちと共に、作り上げてきたのだ。
その事実に、彼女は、静かな満足感を覚えていた。
「(悪くない人生ね)」
ウピエルは、小さく呟いて、微笑んだ。
婚約破棄から始まった、波乱万丈の日々。
しかし、その全てが、今の自分に繋がっている。
そう思うと、過去の痛みすらも、愛おしいもののように感じられた。
彼女の物語は、一つの大きな円を描き、最高の形で、結実しようとしていた。
しかし、神様は、彼女にもう一つだけ、素敵なサプライズを用意してくれていたようだ。
12
あなたにおすすめの小説
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。
嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
婚約破棄された辺境伯令嬢ノアは、冷血と呼ばれた帝国大提督に一瞬で溺愛されました〜政略結婚のはずが、なぜか甘やかされまくってます!?〜
夜桜
恋愛
辺境の地を治めるクレメンタイン辺境伯家の令嬢ノアは、帝国元老院から突然の召喚を受ける。
帝都で待っていたのは、婚約者である若きエリート議員、マグヌス・ローレンス。――しかし彼は、帝国中枢の面前でノアとの婚約を一方的に破棄する。
「君のような“辺境育ち”では、帝国の未来にふさわしくない」
誰もがノアを笑い、見下し、軽んじる中、ひとりの男が静かに立ち上がった。
「その令嬢が不要なら、私がもらおう」
そう言ったのは、“冷血の大提督”と恐れられる帝国軍最高司令官――レックス・エヴァンス。
冷たく厳しい眼差しの奥に宿る、深い誠実さとあたたかさ。
彼の隣で、ノアは帝都の陰謀に立ち向かい、誇りと未来を取り戻していく。
これは、婚約破棄された辺境伯令嬢が、帝国最強の大提督に“一瞬で”溺愛され、
やがて帝国そのものを揺るがす人生逆転の物語。
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる