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しおりを挟む数時間後、王宮の玉座の間には、全ての主要な貴族たちが、緊急の呼び出しを受けて集まっていた。
広間は、緊張と困惑の空気で満たされている。
その中央、玉座へと続く階段の下に、オルデンブルク宰相が、手足を拘束された無様な姿で引き据えられていた。
「これは罠だ! 私を陥れるための、王太子とラジエル家の陰謀に違いない!」
宰相は、最後まで往生際悪く、そう喚き散らしていた。
その時、広間の大きな扉が開かれ、カフカ殿下が、私の手をエスコートしながら、ゆっくりと姿を現した。
彼は、まだ顔に病み上がりの色を残してはいたが、王太子の正装を完璧に着こなし、その背筋は、まっすぐに伸びていた。
その、あまりにも威厳に満ちた姿に、ざわついていた広間は、水を打ったように静まり返る。
カフカ殿下は、玉座の前に立つと、冷徹な声で、宰相の罪状を一つ一つ、読み上げ始めた。
「オルデンブルク公爵、及び前宰相。汝の罪は、第一に、王太子である私への暗殺未遂。第二に、国王陛下、王妃殿下への不当な監禁。そして第三に、国家の転覆を狙った、大逆罪である」
その言葉に、貴族たちが息を呑む。
宰相は、顔を真っ赤にして反論しようとした。
「証拠でもあるのか! 全ては、貴様の妄想だ!」
「証拠なら、ここにある」
カフカ殿下は、合図を送った。
すると、衛兵に連れられて、アナクシス・ヴァリエール嬢と、彼女の祖父が遺した日記が、玉座の前へと運ばれた。
「これは、ヴァリエール子爵家に伝わる日記。ここには、数十年前、汝がヴァリエール家とラジエル家を争わせ、その利権を奪おうとした、全ての陰謀が記されている」
カフカ殿下は、日記の内容を朗々と読み上げた。
それは、宰相の長年にわたる悪行の、動かぬ証拠だった。
全てが白日の下に晒され、宰相は、ついに言葉を失い、その場にがっくりと膝をついた。
「オルデンブルク宰相を、地下牢へ」
カフカ殿下の冷たい命令で、宰相は兵士たちに引きずられていく。
次に、カフカ殿下は、アナクシス嬢に向き直った。
彼女は、リルティアとカフカ殿下の前に進み出ると、深く、深く、頭を下げた。
「この度は、私の早計により、取り返しのつかないことを……。誠に、申し訳ございませんでした」
その肩は、小さく震えている。
カフカ殿下は、優しい声で言った。
「顔を上げよ、アナクシス嬢。そなたもまた、宰相が作り出した嘘の、被害者の一人だ」
そして、カフカ殿下は、集まった全ての貴族たちに向かって、宣言した。
「よって、彼女の罪は大幅に減刑する。そして、ここに、ヴァリエール子爵家の、完全なる名誉回復を約束しよう!」
その言葉に、アナクシス嬢は、顔を覆い、静かに涙を流した。
長きにわたる、悲しい一族の歴史が、ようやく、終わりを告げた瞬間だった。
事件の全てが、解決した。
私は、王太子として、毅然と、そして慈悲深く裁きを下すカフカ殿下の横顔を、深い尊敬と、そして、溢れんばかりの愛情をもって、見つめていた。
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