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最終話 薔薇に囲まれた結婚式
しおりを挟むあの激動の日から、数ヶ月が過ぎた。
季節は、長く厳しい冬を越え、生命力に満ちた春を迎えていた。
そして今日、私は、人生で最も幸せな日を迎えようとしていた。
「まあ、リルティア様……なんて、お美しい」
鏡の前に立つ私の姿を見て、侍女のエマが、涙ぐみながら感嘆の声を漏らした。
純白のウェディングドレスは、最高級のシルクとレースで仕立てられ、無数の真珠が、朝の光を浴びて、上品にきらめいている。
「ありがとう、エマ。あなたがいなければ、今日の私は、ここにはいなかったわ」
これまでの出来事を思い出し、私の胸にも、熱いものがこみ上げてくる。
全てが終わり、ようやく、私は、カフカ殿下と、心穏やかな日々を過ごせるようになったのだ。
準備が整い、私は、お父様のエスコートで、王都の大聖堂へと向かった。
重厚な扉が開かれた瞬間、私は、息を呑んだ。
聖堂の中は、カフカ殿下が約束してくれた通り、この世のものとは思えないほど、多種多様な薔薇の花で、完全に埋め尽くされていた。
赤、白、ピンク、黄色、そして、見たこともないような青い薔薇まで。
甘く、そして芳醇な薔薇の香りが、聖堂全体を満たしている。
バージンロードの両脇には、フブカ王女や、傷の癒えたレオノーラ様、そしてアナクシス嬢も、優しい笑顔で座っている。
皆が、私たちを祝福してくれていた。
私は、お父様の手を離れ、祭壇で待つ、愛しい人の元へと、一歩、また一歩と進んでいく。
タキシードに身を包んだカフカ殿下は、今まで見たこともないくらい、幸せそうな、そして、少しだけ緊張した面持ちで、私を見つめていた。
彼の手を取り、二人で神父様の前へと進み出る。
厳かな雰囲気の中、誓いの儀式が始まった。
「汝、カフカ・ララフォートは、リルティア・ラジエルを妻とし、健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧しき時も、これを愛し、敬い、慈しむことを、神の前に誓いますか」
「はい、誓います」
カフカ殿下の、力強く、そして、迷いのない声が響く。
「汝、リルティア・ラジエルは、カフカ・ララフォートを夫とし……」
「はい、誓いますわ」
私もまた、ありったけの想いを込めて、そう答えた。
指輪の交換を終え、いよいよ、誓いの口づけの時。
カフカ殿下は、私の顔を覆うヴェールを、そっと持ち上げた。
そして、集まった皆には聞こえないような、小さな声で、私だけに、囁いた。
「この世には、数えきれないほどの美しい薔薇がある。けれど、リルティア。君は、私のただ一輪の、特別な薔薇だ」
彼の翠色の瞳が、愛しさに、潤んでいる。
「これからは、私の全てで君を守り、愛し続けることを、改めて、君だけに誓うよ」
「……カフカ様」
私は、幸せに満たされて、彼の名前を呼ぶことしかできなかった。
そして、私たちの唇が、そっと重ねられる。
その瞬間、大聖堂の鐘が、高らかに鳴り響き、参列者からの、割れんばかりの拍手と歓声が、私たちを包み込んだ。
もう、クズ王太子なんて呼ばせない。
この人は、世界で一番素敵な、私だけの、愛しい王様。
私たちは、薔薇の香りに包まれながら、永遠の愛を誓い、幸せに、微笑み合った。
ーーー
おしまい!
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