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第2章
67話 怪しげな老婆とメテオノールくん
しおりを挟む「それじゃあ今日は買い物に行こうか」
「「わーい!」」
メモリーネとジブリールが、嬉しそうに手を上げた。
今日は朝から出かける準備をしていた。
宿の部屋の中で、身支度を整えて、腕輪の位置を調整すると、琥珀色のローブに身を包む。
この前の依頼で、報酬ががっぽりと手に入った。
懐にも余裕があるし、前々から考えていたコーネリスとメモリーネとジブリールの服を買っておきたい。
「「え~、服よりもおもちゃがいい!」」
「!」
「あ、ちょっと! せっかくご主人様が服を買ってくれるって言ってるのに、わがまま言わないの!」
「「あ! やっぱり今のなし!」」
慌ててコーネリスが注意すると、メモリーネとジブリールが床に正座して、俺の前に並んだ。
「ご、ご主人様? 私はおもちゃよりも、服の方が欲しいって思ってるわ。本当よ?」
……なんだか気を使われている気配がした。
「ふふっ。テオ、お父さんみたい」
そう言ったのは、楽しそうにベッドに腰掛けているテトラだった。
みんな腕輪の宝石から出ていて、部屋の中は賑やかだ。
でも……。
「メモリーネとジブリールは服よりもおもちゃが欲しいのかな?」
「「あ、いえ、おもちゃも欲しいけど、服が欲しいです!」」
「……別に気を使わなくてもいいのに」
「「ああ……! ご主人様が落ち込んでる!」」
あわあわとするメモリーネとジブリール。
でも、別に、落ち込んでいるわけじゃない。
そうなのか、と思っただけだ。
そもそも、今回俺がメモリーネたちの服を買いに行こうと言ったのは、この前みんなが頑張ってくれたことのお返しを含めて、何着か着れる服を用意しておいた方がいいと思ったからだ。
好きなものを買ってあげたい。
女の子だし、服とか好きかも、と思ったから、服を買いに行こうと言っただけで、別に気を使われることじゃない。
それなのに……。
「あ、ご主人様。あのね、メモ、服も欲しいよ?」
「ジルも、服がいいと思うよ?」
「ほ、ほら、二人もこう言ってるし、ご主人様の考えは間違ってないと思うわ」
……やっぱり気を使われている。
どうしてか、気を使っている様子のコーネリスたち。
まるで、プレゼント選びを間違ってしまったお父さんを慰めるかのように……。
「い、いや、おもちゃも買ってあげるし、服も買うつもりだから、別にそんな気を使わなくても……」
「「「あ、いえ、別にそんなつもりじゃーー」」」
「ふふっ。やっぱりテオ、不器用なお父さんみたい」
あわあわとする三人と俺を見て、テトラがくすりと笑っていた。
でも、プレゼント選びは、なかなか難しかったりする。
あれは、村にいた時、何かお祝いをしたいと思って、テトラに初めてのプレゼントをしようとした時のことだーー。
「「「あ、回想が始まった」」」
あ……いや、別にこれはいいか。
とにかく、今日は買い物に行こうと思う。
準備をすませると、みんなが腕輪の宝石の中に宿り、俺は部屋を後にして外に出る。
本当はみんなも外に出して歩きたいけど、迷子とかになるといけないからと、メモリーネとジブリールは腕輪に宿ると言ってくれて、俺の腕輪を通じて店の商品を選ぶとのことだった。
「どの店がいいかな」
『『ん~、じゃあ、あっち~!』』
人混みの中を歩きながら、二人が腕輪の中で方向を指し示してくれる。
俺はその通りに歩き、しばらくして辿り着いたのは、街の中でも端の方。比較的薄暗い路地に構える、一軒の店だった。
『「こ、ここは……」』
その店には見覚えがあった。
……ここは、あのおばあさんの店だ……。
俺と、腕輪の中のテトラは、その店を見ると思わず身構えた。
目の前にあるのは、あの老婆が経営する店だ。
忘れもしない。俺とテトラがローブを買った時のこと。
あの時の、なんとも言えない気持ちになったことは、体に染み付いている。
「……本当にここがいいのかな?」
『『あ、いえ、ダメなら、別のお店でもーー』』
『そうよ。ご主人様。ご主人様の赴くままに、選んで欲しいわ』
何かを感じ取ったのだろう。
再び気を使ってくれるコーネリスたち。
でも、それなら……ここにしよう。
彼女たちがここがいいというのなら、それを拒む理由はない。
ガチャ……。
俺は静かにドアを開けて、その店に入った。
すると、その時だった。
「ヒッヒッヒ……。メテオノールくん、いらっしゃい。よく来たね……。待ってたよ?」
「!」
背後から聞こえて来た笑い声。
見てみると、気づいた時にはそこには老婆の姿があった。
なぜか背後を取られている……。
いつの間に……。
「今日はテトラちゃんの他に、コーネリスちゃん、メモリーネちゃん、ジブリールちゃんも連れて来てくれたんだのぉ。こりゃ、嬉しいわい」
『『『……!?』』』
……さ、三人の名前が知られている。
そして、勝手に俺の腕にある腕輪が全て光り、次の瞬間にはテトラたちの姿が自動的に現れていた。
「「「「……腕輪から弾かれた!?」」」」
「ヒッヒッヒ……。のんびりしていくといい。洋服も、おもちゃも、この店にはあるからのぉ。なあ、メテオノールくん、もしよかったらワシのことも買っていっていいのじゃよ? ヒーヒヒヒ!」
バチィ……ッ!
「痛いッッ!?」
老婆が俺の肩に手を置くと、俺の体にバチィッと弾けるような痛みが襲った。
「ヒッヒッヒ……ッ」
俺たちの今日の目的も、何もかも知られているようで……やっぱりこのおばあさんは只者ではないようだった……。
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