112 / 132
第3章
第110話 これからの予知
しおりを挟む……やってしまった、と思った。
シムルグの背には巫女ティナさんが乗っている。
「本当に連れてきてもよかったのだろうか……」
……だめだったかもしれないと、思う気持ちもある。
「そんなことないわよ。ご主人様はもう少し女心を分かってあげた方がいいわね」
「彼女は囚われていましたから」
コーネリスとヒリスが俺の腕を抱きしめて、「分かってないな~」というような顔をしていた。俺はそんな二人の頭をそっと撫でた。二人にはさっき、かなり力を借りていた。
「私……塔の外に出ています……」
呆然と、どこまでも広がる空と地平に目をやるティナさん。
やがてその目には眩い輝きが宿り、彼女は鼻を啜って、少し涙ぐんでいるようでもあった。
……かと思ったら、ハッとしてこちらを見ると、慌てて土下座をしてきた。
「め、メテオノールさん。この度は本当に申し訳ございませんでした!」
『星灯りの塔』を後にした俺たちは、シムルグの背に乗って空を移動中だ。
塔はもう見えない。当たり前だ。さっき破壊したのだから。これは言い訳する余地もなく、俺がやってしまったことだ。
そしてティナさんは、そんな俺たちに対し、逆に謝っていた。
「私はあなたたちを裏切ってしまいました……」
「あ、いや……」
深々と頭を下げる彼女を俺は止めようとする。彼女にも事情があるというのは、なんとなく察した。あの塔を後にする直前、ティナさんには何か縛りのようなものがかかっていた気がする。それはすでに解除済みだ。
「恐らく制約だったのでしょう」
と、解析してくれたヒリス。
巫女ティナさん。彼女にも彼女で事情があるのだ。
だから、謝る必要なんてない。
そう思って、彼女の謝罪を止めようとしたのだが……。
ーー違う。
俺がしないといけないのは、多分、止めることじゃない。……こうだ。
「……別に謝罪は必要ない」
「メテオノールさん……」
「俺もあの塔を破壊したことを謝罪するつもりはないからな……」
俺は彼女の方を見ずにそう言った。
「そ、それは別にメテオノールさんが謝ることではありません。だって私はあなたたちのーー」
「それ以上、言わなくていい」
そうする方が多分、互いにとってもいいはずだと思う。
俺たちはなんのしがらみのない関係にはなれない。
彼女が悪いんじゃない。近い将来、俺は彼女に恨まれることになるかもしれない。このまま教会とのあれこれが続けば、そうなる可能性がある。
その時が来ても、俺は彼女に謝らないと思う。
だからーー。
「……っ。ごめんなさいメテオノールさん」
「こ、こちらこそ……すみません」
「「「結局謝ってる……二人とも」」」
みんなが苦笑いをしていた。
「とりあえず私は、これから先、巫女の予知は使わないと約束します」
ティナさんは後悔するようにそう宣言した。
「この力は人を不幸にする力です……。だから使わない方が、みんなのためです」
「いえ、それは使ってもらいます」
「そうよ! せっかく巫女様がこっちにいるんだもの! 使わない手はないわ!」
「うう……、どうすれば……」
即時に却下するヒリスとコーネリス。
ティナさんの決意虚しく、その宣言は破棄されることになる。
「とりあえずメモの未来を予知してください!」
「ジルもぉ~」
「わ、分かりました……。……お二人の未来はですね……」
メモリーネとジブリールが上目遣いでお願いすると、ティナさんは目を閉じて予知をしてくれた。
「見えました。お二人は……いずれ家出をすることになってしまうようです……」
「「なんでぇ~~!?」」
驚く二人。
二人には家出をしてしまう未来が待っているようだ。
「でも、家出か。初めて出てきた時のコーネリスみたいだな」
「そうだね……。あの時のコーネリスちゃん、一人で飛んで行ったもんね……」
俺とテトラは懐かしい気持ちになってしまった。
「も、もう言わないでよ! あの時のことは、ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」
あれは、コーネリスが初めて眷属として出てきてくれた時のことだったな……。
コーネリスは俺たちの元から、飛んで逃げてしまったんだ。
あれも家出といえば、家出だ。
そんなコーネリスとも一緒に、俺たちはシムルグの背に乗っている。
そう考えると、何か感慨深いものがあった。
「なーんだ。コーネリスお姉ちゃんと一緒か」
「なっとくー」
「あんたたち失礼ね!」
「「きゃきゃきゃっ!」」
脇腹をくすぐられて、キャピキャピと嬉しそうにする二人。コーネリスもどことなく嬉しそうだった。
「では次はコーネリスさんの未来を予知させていただきたいと思います。コーネリスさんは本当は優しい人です……。進んで嫌われ者の役をかって出たり、思いやりのある方です」
「「「「確かに……」」」」
「ねえ、私だけ、性格診断になっているんだけど!」
コーネリスはいつもそうだ。
さっきのあの塔でも、そうだった。
「コーネリス、毎回、本当にごめん……」
「べ、別にいいわよ……。私が進んでやってることだもの。ま、まあ、でもご褒美をくれるっていうのなら、後で頭を撫でてよね……?」
俺の耳元でコーネリスがそんなお願いをする。
その頬は赤く染まって、甘えるような瞳をこちらに向けていた。
俺は頷く。してほしいことがあるのなら、なんだってしてあげたい。
「ん~、じゃあ今、月光龍おばあちゃんたちがどこにいるのかは分かりますか?」
「アイリスさんもぉ~」
「う、うーん……。……ごめんなさい。それは予知できなさそうです」
予知の能力。
分からないこともあるとのことだった。
ちなみに月光龍さんたちは、俺たちとは別行動することになっていて、各地を見て回った後安全な場所にいてもらうことになっている。
「では巫女ティナ様。私も予知していただきたいことがあります」
「はい。ヒリスさん。何を予知すればいいでしょうか」
「今後のことです。今後、ご主人様がどうなるのか、先のことは何か予知できないでしょうか」
「分かりました……」
そうして目を瞑るティナさんが、未来を予知してくれる。
「見えました……」
目を見開くと、彼女はこれからのことを教えてくれた。
「ほどなくして、メテオノールさんが追いかけられている光景が見えます。エルフの四人組の冒険者です。我々は逃げております」
「また逃げるのか……」
最近、逃げてばっかりだ……。
申し訳なさそうなティナさんの言葉に、俺は苦笑いをした。
このまま逃げ続ければ、どこかに辿り着けるのだろうか。これが正解なのか。
その答えは、まだ分からなかった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~
名無し
ファンタジー
主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
追放された最強ヒーラーは、美少女令嬢たちとハーレム生活を送る ~公爵令嬢も義妹も幼馴染も俺のことを大好きらしいので一緒の風呂に入ります~
軽井広@北欧美少女 書籍化!
ファンタジー
白魔道師のクリスは、宮廷魔導師団の副団長として、王国の戦争での勝利に貢献してきた。だが、国王の非道な行いに批判的なクリスは、反逆の疑いをかけられ宮廷を追放されてしまう。
そんなクリスに与えられた国からの新たな命令は、逃亡した美少女公爵令嬢を捕らえ、処刑することだった。彼女は敵国との内通を疑われ、王太子との婚約を破棄されていた。だが、無実を訴える公爵令嬢のことを信じ、彼女を助けることに決めるクリス。
クリスは国のためではなく、自分のため、そして自分を頼る少女のために、自らの力を使うことにした。やがて、同じような境遇の少女たちを助け、クリスは彼女たちと暮らすことになる。
一方、クリスのいなくなった王国軍は、隣国との戦争に負けはじめた……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる