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病弱令息は溺愛される
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朝が来ても僕はベットの住人。レオン様が来るのは明日。本を読むには目が疲れてしまうし、お喋り相手は公務の合間に顔を出してくれる両親だけ。お兄様は領地の方で外せない視察があるらしい。
普通の貴族であれば、専属の使用人や乳兄弟がお喋り相手になってくれるんだろう。でも僕の場合は病弱体質のせいで例外だ。もちろん、侍従やメイドはいるし世話もしてくれる。けれど彼らは掃除や洗濯をしたり外に買い出しにも行くし、調理場に入ったり、客人の案内をしたり…と、とにかく色々な場に顔を出す。菌やウイルスが命取りとなる僕と近距離で話すのは……と自重してくれているのだ。良好な関係であるからこそ寂しく感じる。元気になったら彼らともっと話して、お礼をしたい。いつも隅々まで清潔に保ってくれて、僕が体調を崩す度にすぐに気づいてお医者様を呼んでくれて、料理や室温にも気を使ってくれて。
だからこの時は思いもしなかった。まさか数日後に、僕にメイドの友達ができるだなんて……。
「そういえば、シェルの身の回りのお世話をするメイドが1人増えたのよ」
いつものように看病されながらお母様の話を聞いていると、伝えるのを忘れていたわとお母様がつぶやいた。
「メイドですか?」
「えぇ、シェルが寝てる間に来たからまだ顔は合わせてないと思うわ。元気になったら挨拶しましょうね」
「はい! 最近は誰も辞めていませんよね、? もしかして僕の身の回りの世話が大変すぎるんでしょうか……主に衛生管理とかで……」
「そんなことないわ、このご時世働き方改革が大切なのよ」
若干冗談めかした言葉のあとにコロコロと可愛らしい笑い声がひびく。
「どんな方なんですか? 仲良くなれるでしょうか」
「リリーといって、シェルと同じくらいの歳の女の子よ。ちょっと独特だけれどピュアでいい子でお母様は気に入ったわ」
歳が近いと聞いてテンションが上がる。侯爵邸にいる使用人たちは、若くてもお兄様と同じ歳だ。貴族だと大抵、生まれた子供と同じ年頃の使用人を新しく雇うものだが、僕の場合は子供の使用人からのウイルス感染が危ぶまれたためその慣習は廃止。お兄様の時に雇われた使用人たちが1番若い層になるのだ。
「シェル、お父様だよ」
話に夢中になっていると、お父様の声がして扉が開かれる。手には何やら機材を持っていた。新しい薬の類いだろうか?
「少しの間部屋を暗くするからね。」
そう言うと魔法で部屋を暗くする。お父様は機材を僕のベットの上におき、あーでもないこーでもないと弄る。カチッと音が鳴った瞬間……
「わぁっ……!」
暖かな光が漏れだし、天蓋の内側一面にキラキラと星が輝いた。いつも窓から遠目に見ていた煌めきが、手に届きそうなほど近くにある。
「お父様、星を捕まえてきたんですか!?」
「そうだ、シェルに見せたくて星を捕まえたんだ。と言いたいところだが、これは"ぷらねたりうむ"というらしい。新しい使用人が提案してくれたんだよ」
「ぷらねたりうむ?」
「ほら、この機会には穴があけてあるだろう。機会の内側に魔法石をセットして光らせることで、光が漏れ出て星になるらしい」
「すごいです! まるでお星様がここにあるみたいです!」
お父様が説明のために機械に触ると、天蓋の夜空がゆらゆらと動く。
「ジェルが目を覚ましたら、この星空がお前を迎えてくれるし、眠りにつく瞬間も星々が見守ってくれるんだ。」
「まぁ素敵! 星にはそれぞれに神様が住んでいるからきっとシェルを守ってくれるわね」
お母様も天蓋の夜空に感嘆の声をあげた。
星々の神。僕たちの国で信仰されているルミナス教の聖典に載っている逸話で、夜空に輝く数億の星々に宿る神々が我々を守ってくれるから安心して眠ることができるといった内容だ。
お父様は熱で一日中眠り続ける僕を見て、昼間でも星の神に守って貰えるように、その使用人の話を聞くなりすぐに職人に作らせたらしい。
「ありがとうございます!お父様!」
僕がお父様の片腕にハグすると、お父様は少し涙目になりながらとても喜んでくれた。
普通の貴族であれば、専属の使用人や乳兄弟がお喋り相手になってくれるんだろう。でも僕の場合は病弱体質のせいで例外だ。もちろん、侍従やメイドはいるし世話もしてくれる。けれど彼らは掃除や洗濯をしたり外に買い出しにも行くし、調理場に入ったり、客人の案内をしたり…と、とにかく色々な場に顔を出す。菌やウイルスが命取りとなる僕と近距離で話すのは……と自重してくれているのだ。良好な関係であるからこそ寂しく感じる。元気になったら彼らともっと話して、お礼をしたい。いつも隅々まで清潔に保ってくれて、僕が体調を崩す度にすぐに気づいてお医者様を呼んでくれて、料理や室温にも気を使ってくれて。
だからこの時は思いもしなかった。まさか数日後に、僕にメイドの友達ができるだなんて……。
「そういえば、シェルの身の回りのお世話をするメイドが1人増えたのよ」
いつものように看病されながらお母様の話を聞いていると、伝えるのを忘れていたわとお母様がつぶやいた。
「メイドですか?」
「えぇ、シェルが寝てる間に来たからまだ顔は合わせてないと思うわ。元気になったら挨拶しましょうね」
「はい! 最近は誰も辞めていませんよね、? もしかして僕の身の回りの世話が大変すぎるんでしょうか……主に衛生管理とかで……」
「そんなことないわ、このご時世働き方改革が大切なのよ」
若干冗談めかした言葉のあとにコロコロと可愛らしい笑い声がひびく。
「どんな方なんですか? 仲良くなれるでしょうか」
「リリーといって、シェルと同じくらいの歳の女の子よ。ちょっと独特だけれどピュアでいい子でお母様は気に入ったわ」
歳が近いと聞いてテンションが上がる。侯爵邸にいる使用人たちは、若くてもお兄様と同じ歳だ。貴族だと大抵、生まれた子供と同じ年頃の使用人を新しく雇うものだが、僕の場合は子供の使用人からのウイルス感染が危ぶまれたためその慣習は廃止。お兄様の時に雇われた使用人たちが1番若い層になるのだ。
「シェル、お父様だよ」
話に夢中になっていると、お父様の声がして扉が開かれる。手には何やら機材を持っていた。新しい薬の類いだろうか?
「少しの間部屋を暗くするからね。」
そう言うと魔法で部屋を暗くする。お父様は機材を僕のベットの上におき、あーでもないこーでもないと弄る。カチッと音が鳴った瞬間……
「わぁっ……!」
暖かな光が漏れだし、天蓋の内側一面にキラキラと星が輝いた。いつも窓から遠目に見ていた煌めきが、手に届きそうなほど近くにある。
「お父様、星を捕まえてきたんですか!?」
「そうだ、シェルに見せたくて星を捕まえたんだ。と言いたいところだが、これは"ぷらねたりうむ"というらしい。新しい使用人が提案してくれたんだよ」
「ぷらねたりうむ?」
「ほら、この機会には穴があけてあるだろう。機会の内側に魔法石をセットして光らせることで、光が漏れ出て星になるらしい」
「すごいです! まるでお星様がここにあるみたいです!」
お父様が説明のために機械に触ると、天蓋の夜空がゆらゆらと動く。
「ジェルが目を覚ましたら、この星空がお前を迎えてくれるし、眠りにつく瞬間も星々が見守ってくれるんだ。」
「まぁ素敵! 星にはそれぞれに神様が住んでいるからきっとシェルを守ってくれるわね」
お母様も天蓋の夜空に感嘆の声をあげた。
星々の神。僕たちの国で信仰されているルミナス教の聖典に載っている逸話で、夜空に輝く数億の星々に宿る神々が我々を守ってくれるから安心して眠ることができるといった内容だ。
お父様は熱で一日中眠り続ける僕を見て、昼間でも星の神に守って貰えるように、その使用人の話を聞くなりすぐに職人に作らせたらしい。
「ありがとうございます!お父様!」
僕がお父様の片腕にハグすると、お父様は少し涙目になりながらとても喜んでくれた。
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