【完結】病弱令息は物語の悪役の次期公爵に溺愛される

月野アリス

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婚約者を溺愛したい次期公爵

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 私の腕の中で眠るシェルを抱きしめる。シェルは昔から世間体を気にするところがある。病弱な自分が婚約者でいいのか、私の評判が下がらないか、と健気に考えている。私はシェルさえいればそんなことどうだっていいのだが、好きな子の気持ちにはこたえたい。
 魔石の代わりにオリーブ色の宝飾類を新調しよう。それに、ダークネイビーのものも揃いで作ってシェルにプレゼントしよう。それならシェルの気持ちを尊重できる。

「んっ……」
「お目覚めかな?」
「レオン様……」
「私と仲直りしてくれる? 君の目が開くのを待ってた、早く仲直りしてイチャイチャしたいな」
「うん、僕も……」

 少し寝ぼけながら甘くはにかむ表情に、私の顔の筋肉が緩む。目元にうっすらとついた水滴を拭ってやりながら口付ける。

「私たちの仲を自慢したい気持ちは本当だから、シェルの瞳の色の宝飾品を作ることにするよ、それなら許してくれる?」
「もちろんです、ありがとうございますレオン様! きっと誰よりもかっこよくて目立ってしまいますね、ふふ」

 ふわふわと笑うシェルの銀髪を、窓から差し込むサンセットが照らす。

「ねぇ、今の体調はどう?」
「レオン様がそばにいるから、すっごく元気です!」
「それじゃあ、少し私の練習に付き合って欲しいな」

 ブランケットでシェルを包んで、その上から私のマントをかけて横抱きにしてバルコニーに出る。空は一面の茜色。世界中が私たちを祝福してあたたかく照らしてくれているようだ。

「綺麗……」


 空を見上げる最愛の横顔を見つめる。きらめくオリーブに赤がうつる。
 シェルを抱いたままワルツのステップをふむと、突然の事に驚いたのか、シェルの腕が私の首にまわる。

「レ、レオン様! 練習って舞踏会のですか?」
「うん、いつか一緒に舞踏会に出てふたりでデビュタントをしよう。私もまだ舞踏会で踊った経験はないしね」

 キスしながら2人きりの舞踏会をはじめる。

「なんだか、世界に2人きりになったみたいですね」
「あぁ、そうだな」
「僕、ダンスのステップははじめてです」
「シェルのはじめてはなんだって私がいいんだ」
「ぜんぶ、僕のはじめてはぜんぶレオン様のものですよ」

 私の首元に顔を埋めて、照れた顔を隠すシェル。ワルツのステップに喜んで声を上げて笑うシェル。私の顔を愛おしそうに見上げるシェル。全てが愛おしい。

「必ず花を見つけて元気にしてあげるからね、そうしたら私と一緒にデビュタントへ行こうね」
「はい……! レオン様、愛してます」
「私も愛してるよ」



 この日を境にシェルがベットから出ることは無くなった。
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