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溺愛し合う二人
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今日ほど誇らしい気持ちで学園の門をくぐった日はない。右腕に愛おしい重みを感じる。"初めての登校"をするシェルは、緊張か人見知りか、おそらくその両方に気圧されて私の腕にしがみつくようにして半歩後ろを歩いている。本人はプレッシャーに負けて聞こえていないようだが、ざわざわとうるさい学園の連中の話題は、専らシェルへの賞賛だ。美しい、可愛らしい、品がある、透き通っている……。そうだろう、私の婚約者は世界一なんだ! と優越感に浸る。
「レオン様……緊張します……」
生徒は貴族ばかりなのであからさまでは無いが、やはり視線は注がれている。公爵家嫡男の婚約者としてや、ずっと深窓の令息として噂されていた侯爵令息としてのものばかりではないだろう。シェルは私の贔屓目なしにも美しく可愛らしく、天使のような外見をしている。その瞳に見つめられれば思わずため息が出てしまうほどだ。
「大丈夫、一緒に教室まで行くからね。帰りも迎に行くから教室で待っていて」
「はい……」
あんなに楽しみにしていたから、正直、こんなに頼ってもらえると思っていなかった。シェルを取られてしまうんじゃないかと嫉妬もあったが、その心配は無いようだ。まぁ、シェルからしてみればこんなに多くの人を見るのも初めてなのだから、人見知りしても仕方ないだろう。街に行った時は事前に店を貸切にしていたし、店の店員は皆教育されているから無駄な噂話もしない。泣きそうになりながらこちらを見あげるシェルを見ると、不純な独占欲や執着心が浄化される。
「僕、本当に楽しみにしてたんですけど……上手くおしゃべり出来なそうです……」
「大丈夫、最初はみんなそうだよ。きっと仲良くしてくれる子がいるから、ゆっくりでいいんだよ」
左手でシェルの髪をゆっくりと撫でて唇に口付ける。驚いた顔のシェルは、花が綻ぶように笑った。
「ほら、大丈夫、こんなに可愛い笑顔なんだから」
「はい……! 頑張ります!」
廊下を歩く最中、キョロキョロと周りを見回しては、誰かと目が合ってしまって思わず逸らしてを繰り返すシェルがたまらなく愛おしい。シェルの教室につくと、名残惜しげに腕を解きながらも、希望に満ちた表情でこちらに手を振ってきた。
シェルは大切な婚約者であると同時に、ずっと私の後をついてまわってくる雛鳥のような存在だ。だからこそ、ひとり立ちしていくかのようなシェルの姿に成長を感じ、思わず口角があがる。私はもっと嫉妬深い人間だと思っていたが、シェルの無垢な心に接して、懐の広い人間になれたのだろうか。
心配な気持ちはありつつも、シェルの教室をあとにして自分の教室へ向かおうとしたところで、ラインハルトに声をかけられた。
「随分いつもと様子が違うじゃないか。あの視線の半分はお前の態度に驚いてのものだろ?」
「そうか? 私としてはいつも通りだが」
「シェル殿の前ではいつもあれなのか……まぁ気持ちも分からなくないよ」
「言っとくが、シェルが天使なのは見た目だけじゃないからな? シェルの全てが私の生きる理由なんだよ」
「くさいなぁ~あ、そうそう。今年はシェル殿の他にも、1人編入生がいるんだ」
「ああ、隣国の」
隣国から第3王子が留学してくると噂で聞いた。学年は確か私たちとおなじだったか。基本的に貴族学園には編入してくる生徒は少ないから、同じ歳に2人も編入してくるなんて珍しい。編入生同士、シェルと友達になってくれるような人だといいのだが。
「あぁ。昨日会ったんだけどね……うん、面白そうだったよ」
「面白そうとは?」
私たちが教室に着いたと同時にチャイムが鳴り、話はそこで終わった。
「まぁそれはおいおいね」
「レオン様……緊張します……」
生徒は貴族ばかりなのであからさまでは無いが、やはり視線は注がれている。公爵家嫡男の婚約者としてや、ずっと深窓の令息として噂されていた侯爵令息としてのものばかりではないだろう。シェルは私の贔屓目なしにも美しく可愛らしく、天使のような外見をしている。その瞳に見つめられれば思わずため息が出てしまうほどだ。
「大丈夫、一緒に教室まで行くからね。帰りも迎に行くから教室で待っていて」
「はい……」
あんなに楽しみにしていたから、正直、こんなに頼ってもらえると思っていなかった。シェルを取られてしまうんじゃないかと嫉妬もあったが、その心配は無いようだ。まぁ、シェルからしてみればこんなに多くの人を見るのも初めてなのだから、人見知りしても仕方ないだろう。街に行った時は事前に店を貸切にしていたし、店の店員は皆教育されているから無駄な噂話もしない。泣きそうになりながらこちらを見あげるシェルを見ると、不純な独占欲や執着心が浄化される。
「僕、本当に楽しみにしてたんですけど……上手くおしゃべり出来なそうです……」
「大丈夫、最初はみんなそうだよ。きっと仲良くしてくれる子がいるから、ゆっくりでいいんだよ」
左手でシェルの髪をゆっくりと撫でて唇に口付ける。驚いた顔のシェルは、花が綻ぶように笑った。
「ほら、大丈夫、こんなに可愛い笑顔なんだから」
「はい……! 頑張ります!」
廊下を歩く最中、キョロキョロと周りを見回しては、誰かと目が合ってしまって思わず逸らしてを繰り返すシェルがたまらなく愛おしい。シェルの教室につくと、名残惜しげに腕を解きながらも、希望に満ちた表情でこちらに手を振ってきた。
シェルは大切な婚約者であると同時に、ずっと私の後をついてまわってくる雛鳥のような存在だ。だからこそ、ひとり立ちしていくかのようなシェルの姿に成長を感じ、思わず口角があがる。私はもっと嫉妬深い人間だと思っていたが、シェルの無垢な心に接して、懐の広い人間になれたのだろうか。
心配な気持ちはありつつも、シェルの教室をあとにして自分の教室へ向かおうとしたところで、ラインハルトに声をかけられた。
「随分いつもと様子が違うじゃないか。あの視線の半分はお前の態度に驚いてのものだろ?」
「そうか? 私としてはいつも通りだが」
「シェル殿の前ではいつもあれなのか……まぁ気持ちも分からなくないよ」
「言っとくが、シェルが天使なのは見た目だけじゃないからな? シェルの全てが私の生きる理由なんだよ」
「くさいなぁ~あ、そうそう。今年はシェル殿の他にも、1人編入生がいるんだ」
「ああ、隣国の」
隣国から第3王子が留学してくると噂で聞いた。学年は確か私たちとおなじだったか。基本的に貴族学園には編入してくる生徒は少ないから、同じ歳に2人も編入してくるなんて珍しい。編入生同士、シェルと友達になってくれるような人だといいのだが。
「あぁ。昨日会ったんだけどね……うん、面白そうだったよ」
「面白そうとは?」
私たちが教室に着いたと同時にチャイムが鳴り、話はそこで終わった。
「まぁそれはおいおいね」
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