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溺愛し合う二人
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「シェル……! 探したんだよ、どうして教室から出てしまったの?」
「窓の外を見たらレオン様が居たから……早く会いたくて」
「はぁ~……シェルはずるい、反則だよ、可愛すぎる」
声を頼りにレオン様の元へ行くと、目が合うなりガバッと抱きしめられた。ぎゅうぎゅうと抱き締めたまま、僕の存在を確認するかのように何度も頭を撫でられる。
「迎えに行くのが遅くなってしまってごめんね。ラインハルトの手伝いをしていて」
「今夜のパーティーのですか?」
「あぁそうだよ」
新年度初日。毎年この日は授業が午前で終わるので、王宮で王太子殿下が小規模のパーティーを開いているんだそうだ。主に殿下のお友達や高位貴族が呼ばれ、今年度もみんなで頑張りましょうねと景気づけに行っているほとんど私的な集まりに近いものらしい。殿下のお友達のレオン様はもちろん、一応高位貴族で、レオン様の婚約者でもある僕も呼ばれている。大規模ではないが、これが僕たちのデビュタントになる。
「すごく楽しみです」
「そうだね、私も楽しみだ。早く帰って準備をしようか」
僕の手を握ると、レオン様はゆっくりと歩き出す。半歩後を歩くと、凛々しくて高潔なレオン様のお顔を盗み見る。僕もこんなふうに頼りがいのある、大人な男になれたらいいのに。愛おしいダークグレーを見つめながりぽつりと呟いた。
「僕、今日全然上手くいかなかったんです」
「ん?」
「たくさんの方が話しかけてくれましたけど、いつ僕が話したらいいのか分かりませんでした……」
僕の弱音を聞いて振り返った濃紺の瞳に見つめられる。その瞳は甘い色で埋め尽くされていた。
「そうか……ねぇシェル、シェルは私のことを人気者だと思っているだろう?」
「はい! レオン様を好きな人ばっかりだと思います」
「でもね、私も話すのがあんまり得意ではないから、友達は少ないんだ」
そう言って自嘲気味に笑うと、僕の眉間に人差し指を置く。そのままぐりぐりと、落ち込んで寄っていた眉を解される。
「でも、レオン様と僕はずっと話してても話がつきません」
「そうだね。もちろん、色んな人と話すことは大事だよ。でも、話していて楽しくて、頼れて、なんでも話したいと思えるような相手は、ほんの少しいればそれで幸せだと思うんだ」
「ほんの少し……?」
「あぁ、シェルは今まで、ものすごく心の距離が近い人ばかりが周りにいただろう? みんなとそのくらい仲良くなろうと考えなくていいんだ」
なんだか、ストンと胸の中にレオン様の言葉が落ちてきたように感じた。全員と仲良くなれるよう、気負いすぎていたのかもしれない。
「ゆっくり少しずつ話していけば、きっと良い友人ができるよ、シェルは頑張り屋さんだから少し頑張りすぎてしまったんじゃないかな?」
「明日も……自分のペースでお話してみることにします!」
「あぁ、それがいいよ」
レオン様は僕のおでこにちゅっとキスを落とすと、校門の前に待たせている馬車に向かって歩き出す。僕の叶えたかったこと。正直、叶わないと思っていたこと。それをひとつひとつ、一緒に叶えてくれる。今夜のデビュタントでまたひとつ夢を叶える。暗かった気持ちが、一気に晴れていった。
「窓の外を見たらレオン様が居たから……早く会いたくて」
「はぁ~……シェルはずるい、反則だよ、可愛すぎる」
声を頼りにレオン様の元へ行くと、目が合うなりガバッと抱きしめられた。ぎゅうぎゅうと抱き締めたまま、僕の存在を確認するかのように何度も頭を撫でられる。
「迎えに行くのが遅くなってしまってごめんね。ラインハルトの手伝いをしていて」
「今夜のパーティーのですか?」
「あぁそうだよ」
新年度初日。毎年この日は授業が午前で終わるので、王宮で王太子殿下が小規模のパーティーを開いているんだそうだ。主に殿下のお友達や高位貴族が呼ばれ、今年度もみんなで頑張りましょうねと景気づけに行っているほとんど私的な集まりに近いものらしい。殿下のお友達のレオン様はもちろん、一応高位貴族で、レオン様の婚約者でもある僕も呼ばれている。大規模ではないが、これが僕たちのデビュタントになる。
「すごく楽しみです」
「そうだね、私も楽しみだ。早く帰って準備をしようか」
僕の手を握ると、レオン様はゆっくりと歩き出す。半歩後を歩くと、凛々しくて高潔なレオン様のお顔を盗み見る。僕もこんなふうに頼りがいのある、大人な男になれたらいいのに。愛おしいダークグレーを見つめながりぽつりと呟いた。
「僕、今日全然上手くいかなかったんです」
「ん?」
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僕の弱音を聞いて振り返った濃紺の瞳に見つめられる。その瞳は甘い色で埋め尽くされていた。
「そうか……ねぇシェル、シェルは私のことを人気者だと思っているだろう?」
「はい! レオン様を好きな人ばっかりだと思います」
「でもね、私も話すのがあんまり得意ではないから、友達は少ないんだ」
そう言って自嘲気味に笑うと、僕の眉間に人差し指を置く。そのままぐりぐりと、落ち込んで寄っていた眉を解される。
「でも、レオン様と僕はずっと話してても話がつきません」
「そうだね。もちろん、色んな人と話すことは大事だよ。でも、話していて楽しくて、頼れて、なんでも話したいと思えるような相手は、ほんの少しいればそれで幸せだと思うんだ」
「ほんの少し……?」
「あぁ、シェルは今まで、ものすごく心の距離が近い人ばかりが周りにいただろう? みんなとそのくらい仲良くなろうと考えなくていいんだ」
なんだか、ストンと胸の中にレオン様の言葉が落ちてきたように感じた。全員と仲良くなれるよう、気負いすぎていたのかもしれない。
「ゆっくり少しずつ話していけば、きっと良い友人ができるよ、シェルは頑張り屋さんだから少し頑張りすぎてしまったんじゃないかな?」
「明日も……自分のペースでお話してみることにします!」
「あぁ、それがいいよ」
レオン様は僕のおでこにちゅっとキスを落とすと、校門の前に待たせている馬車に向かって歩き出す。僕の叶えたかったこと。正直、叶わないと思っていたこと。それをひとつひとつ、一緒に叶えてくれる。今夜のデビュタントでまたひとつ夢を叶える。暗かった気持ちが、一気に晴れていった。
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