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28話

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「はい。最初は定期的に会ってはいましたが、徐々に減っていったそうです。それでも我慢できると思っていたようですが、つい最近になって再会したと連絡が来て……」
ティナは辛そうに語り終えると、アルフレットに向かって手を伸ばす。そして――
「あの、お願いします! どうか彼女を説得する手伝いをしてもらえませんか!?」
真剣な眼差しを向けると必死に懇願してきた。その姿を見たアルフレッドは何も言えなかった。しばらく考え込むと、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「分かった。僕に任せて欲しい。だから君は少しだけ休んでくれ。話はまた明日にしよう。疲れたままじゃまともに話もできないだろうからね」
彼はそれだけ言うと立ち上がった。
そして部屋の外に出ようとした時、立ち止まると振り返って告げる。
「あっ、そうそう。君を狙うのをやめさせるつもりはないよ。だから今日みたいに危険なことはもうしないで欲しい。もちろん、ティナちゃんにも危ない真似はさせない」
「えっ……」
アルフレッドの言葉にティナは戸惑う。すると、アルフリードは優しい声で話しかけた。
「ティナちゃんが心配なんだよ。それにもし相手が強硬手段に出るようならこちらも容赦するつもりはない。まぁ、とりあえず今日のところはゆっくり休むといいよ」
そしてアルフレッドはその場から去って行った。残された少女はしばらくその場で固まっていたが、やがてハッとすると彼に言われた通り、眠ることにするのであった。
ティナが眠ったことを確認した後、アルフレッドは彼女の部屋を後にし、校舎内を探索することにした。理由は当然、相手について知るためだ。
まず最初に職員室へと向かった。そこで事情を説明し、相手の教師と話をしようとしたのだが、不在だったので仕方がなく諦めることにした。次に生徒達から情報収集をする。だが、特に新しい情報は得られなかった。
(これはやっぱり、直接接触する必要があるな……)
そう考えた後、彼は寮に戻ると再び少女の部屋を訪れた。
しかし、ティナはまだ眠っているようだ。起こすのも悪いと思い、彼はそっと部屋を出ると別の場所に向かうことにした。そして到着したのは自分の部屋だ。
部屋に戻ってきた彼は机の前に立つと引き出しを開けた。そして中に入っているものを確認していく。
そして――
(あった)
ある物を取り出す。それは銀色の懐中時計のようなものだ。一見すれば何の変哲もない代物である。しかし、その正体はこの世界にはない技術によって作られた通信機だ。
アルフレッドはその機能を確認すると早速、呼び出しを行う。
だが、何も起こらない。
彼は首を傾げるが、ここで一つの疑問が生じた。
(おかしいな。いつもならこれで反応があるはずなんだけど……もしかしたら壊れたのか?)
その可能性を考慮しつつ再度試してみる。しかし――
(やはり駄目か……どうしたものかな)
残念ながら変化はなかった。
その後、彼はしばらくの間悩んだが結論は出ない。すると、その時だ。コンッ、コンッという音が鳴り響いた。どうやらノックされたらしい。
扉を開けると、そこに立っていたのは一人の女子学生だった。名前はアリシア・フローレンスといって、アルフリードの友人の一人である。
彼女はこちらの顔を見ると微笑みを浮かべた。
「どうやら元気みたいですね。安心しました」
「うん。ところで何か用かい?」
アルフレッドの質問に対して彼女はこう答えた。
「実はあなたに伝えたいことがあってきたんです」
「伝えたいこと?」
「はい。ティナのことですよ」
「……? 一体どういうことだい?」
「あの子はあなたのことを信頼しています。だからこそ私もあなたを信じて話します。ですけどこのことは絶対に他言無用にしてください」
彼女はそう言うと真剣な表情で語り始めた。
「実は数日前、彼女にこんな相談を受けたんです。どうしても会わせたい人がいるって。最初は誰だろうと気になったのですが、よく考えてみればおかしな点がありました。何故ならこの学園の生徒には、彼女と接点がない人が何人かいるんです。それなのにどうして……」
アリシアの話を聞き終えたアルフリードは考え込む仕草を見せた。
(なるほど。確かに彼女の言い分が正しいとするなら……)
彼の頭の中には一つの仮説が生まれていた。それを見抜いたように彼女が告げる。
「おそらくですが……犯人の目的は彼女の恋人を奪った私達の方なのでしょう」
「つまり君は最初から僕が狙われていると考えていたわけか」
アルフリードが確認するように尋ねると彼女は首肯した。
「えぇ、もちろん確信があったわけではないですが……ティナの話を聞いて、私はそう感じました」
「そうか……ちなみに君はどうするんだい?」
「どうとは?」
「ティナちゃんを守るのかということだよ」
「…………」
「君は彼女を恨んでいるはずだ。それに恋人を奪おうとしている相手でもある。そんな相手を許せるのかい?」
アルフレッドは真っ直ぐに見つめると、こう尋ねた。
対する彼女はこう答える。
「私は……」
しばらく沈黙が続いた。
やがて彼女が口を開く。
「正直に言えば今でも憎いです。できることなら復讐したいとも思っています。ですが、ティナはとても苦しんでいました。本当は会いたいのに、それでも私達を優先してくれたんです。あの子のために私がすべきことはただ一つ。彼女を幸せにしてあげることです」
彼女の想いは真剣そのもので、とても演技とは思えない。そしてアルフレッドは何も言わずにじっと見つめると――
「わかった。僕は全力を尽くそう」
「ありがとうございます!」
少女の言葉にアルフレッドは力強く応えると決意を固めた。
(とにかく今はできる限り情報を集めるしかないな……まず手始めにティナちゃんの恋人について聞いてみるか)
彼はティナの元へ向かうため、その場から立ち去るのであった。
翌朝――
アルフレッドはティナの教室に向かった。
しかし、そこには誰もいない。
(そういえば今日から授業があるんだったな。とりあえず待っておこう)
彼はしばらく待つことにした。
だが、なかなか現れない。
(参ったな。さすがにここまで時間がかかるのは初めてだ)
このままではいつまで経っても始まらない。
そう考えたアルフレッドは、ティナを探すことにした。すると、すぐに目的の人物は見つかった。
しかし、様子がおかしい。
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