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本編
35.生徒会ライフ!4 Side 佐伯 伊織 その2
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ゲームが始まって一ヶ月。
見事に避けられまくった俺達は、全く光希ちゃんと接触できずにいた。
そろそろ次のイベントである夏休み明けの体育祭の準備で忙しくなる時期だけに、さすがに何かしらアクションを起こさないと、初の『本人と全く接触しないままでのノーゲーム』になってしまう可能性もある。
俺としてはそれもそれでひとつの経験ってことでいいと思うけど、清雅あたりは絶対認めないだろう。
その証拠に清雅の機嫌は日々下降の一途を辿っている。
今までは、清雅が望めば大抵のことは叶えられてきたため、思い通りに事が進まない今の状況にイライラが募っているようだ。
そんなんだったら自分からアクション起こせばいいのに、と俺は思うんだけどね~。
絶対王者は自分のほうから求めていくなんてこと、考えもつかないらしい。
朔人にしても、本人が望めばいつも周りが動いてくれる傾向にあるため、似たような感じかと思っていたのだが、どうやら清雅よりは臨機応変に対応できる性格らしく、光希ちゃんと接触を図るための案外まともな案を提示してきた。
「先程、顧問の東條先生に、光希を生徒会役員補佐につけていただけるようお願いしてきました。」
生徒会役員補佐というのは、生徒会の仕事の手伝いをしてくれる人間のことで、生徒会役員が一般の生徒の中から必要に応じて任命できることになっている。
生徒会役員は人気があるため、お近づきになれるチャンスである役員補佐になりたがる人間は山ほどいる。
しかし、今までは生徒会役員補佐を任命するということは、深刻な人手不足を補うメリットよりも、生徒会役員以外の人間がここに出入りする煩わしさからくるデメリットのほうが圧倒的に大きかったため、何度も見送られてきた案件だった。
その権限を今、膠着状態のゲームのために使おうというのだ。
「仕事も手伝ってもらえますし、こちらからわざわざ探さなくとも毎日ここに本人が来てくれるのです。一石二鳥だと思いませんか? それに極端な話、ここでしか会えないのなら全員条件は一緒ということになりますよね?」
「朔ちゃん、あったまいいー!さっすが副会長!!」
朔人の采配に壱琉センパイがベタ褒めしている。
しかし、清雅は難しい表情を崩さない。
「東條先生からの許可はでたのか?」
「先生の許可はいただきました。しかし、一応本人に話はしてみると仰って下さいましたが、無理強いはできないと言われまして……。」
苦笑いした朔人に、清雅はため息を吐いた。
「……まあ、当然だろうな。」
ただでさえ俺達のゲームのターゲットに選ばれて風当たりがキツくなっているらしいのに、役員補佐になんかなったりしたら今以上の反発は必至だ。
光希ちゃんがこの話を受ける可能性は低いかもしれない。
「えぇ~!?それって清ちゃんの権限でどうにかならないの~?……っていうか、どうにかしてよぉ!ねぇ、清ちゃんってば、聞いてんの~?」
不満そうに清雅になんとかしろと迫る壱琉センパイに、それまで傍観者に徹していた壬生センパイが珍しく口を挟んできた。
「桜庭、いい加減にしろ。そもそも本人の意思を無視して勝手に話を進めるんじゃない。」
「本人に聞いたらダメって言うに決まってるじゃん。だからどうにかしてほしいっていってんのにぃ~。翔ちゃんの意地悪ぅ~。」
「これ以上、中里に迷惑をかけるんじゃない。」
「なになに~?みっきぃのことそんなに気にかけるなんて、翔ちゃんもホントは参加したくなっちゃったんじゃなぁい?」
腹黒そうな笑顔を浮かべてそう揶揄した壱琉センパイ対し、壬生センパイはそれを一瞥しただけだった。
俺はそのやり取りを見て、ある可能性に気付いてしまう。
もしかして、壬生センパイはこのゲームが気に入らないだけなのではなく、俺達が光希ちゃんと関わるのが気に入らないんじゃないのかな~、なんて。
今まで何度かゲームをしてきたけど、参加しないのはいつものこととしても、こんな風に口出ししてくることはなかったし。
そういえばココ最近、な~んか壬生センパイの様子がおかしい気がするんだよね~。
前は孤高の侍って感じで、近寄りがたい雰囲気醸し出してたのに、ここ最近、随分と柔らかい表情をするようになった。
一気に現代人に近付いた感じ。
今もスマホとか弄ってるしね~。
ずっと画面と向き合ってるから、何やってんのかな~ってさりげなく覗いてみたら。
……なんと!ゲームとかしてるし!!
こんなわかりやすく変わっちゃった壬生センパイ見たら、一体何があったのか興味が湧くに決まってる。
──他人の秘密を覗くのは愉しいよね~。
そう思ったのはどうやら俺だけじゃなかったらしく。
「ねぇ、翔ちゃんっていっつもお昼何やってんの~?僕たちと一緒に学食行かないしー。前に聞いた時、弓道部に練習しに行ってるって言ってたよねぇ?」
「……ああ」
「そうなんだぁ。弓道部の子に聞いたら水曜日は全体ミーティングだから道場使えないってきいたよー?」
壱琉センパイは時々、こういう天然なのか、計算なのかよく分からない鋭い指摘をすることがある。
今日は水曜日。
一体誰とどこで何してたんだか。
な~んか、秘密の匂いがプンプンするんですけど~。
「……水曜日は別の場所に行ってる」
はっきりと『どこ』と言わないのが余計怪しい。
「それってもしかして旧図書館ですか?」
朔人の質問に壬生センパイは僅かに表情を変えた。
「時々あそこの鍵がなくなっているので、そうかなと思ったのですが」
「そっかぁ!翔ちゃん本好きだもんね~。いっつも読んでるしー!納得~!!」
朔人はさりげなく、壱琉センパイは無邪気さを装ってるが、否定できないよう逃げ道を塞いでるようにしか思えない。
さすが腹黒二人。
壬生センパイは否定も肯定もしないけど、コレたぶんアタリだろ。
ふ~ん。旧図書館ね~。
確かあそこって校舎から離れたとこにあるし建物も古いから、誰も行かないし使わないんじゃなかったっけ~?
……隠れる場所としては最適だよね。
◇◆◇◆
──次の日。
俺は昼休みを待たずに旧図書館へと向かった。
一般の生徒がいないうちに移動しとかないと、誰かに見つかる可能性が高いからだ。
付いてこられても面倒だし、何より俺があそこに行くことがバレちゃ元も子もない。
俺は周りに他人がいないのを確認してから、中へと入っていった。
随分レトロな建物だが、結構手入れが行き届いているらしく、中に入ってもそれほど古ぼけた印象を受けない。
どこか適当な場所で目的の人物が来るのを待つことに決めた俺は、早速入り口からすぐのところにあるラウンジの椅子に座ることにした。
ところが。
俺が座ろうとした隣のテーブルに、無造作にスマホが置いてあるのを発見したのだ。
ここを利用している誰かの忘れ物であると確信した俺は、迷うことなくそれを手にとり、画面を確認した。
他人のスマホを勝手に見るのはいけないことだってわかってるけど、俺の知りたい秘密が目の前にあるかもしれないという誘惑には勝てなかった。
すぐにメッセージアプリを立ちあげて、表示されている相手の名前を確認する。
表示された名前と内容を見た途端、自然と口の端が上がっていった。
──ビンゴ!
思わずそう叫びたくなる。
まさに大当たりといっても過言じゃない。
今、俺の手の中にあるこれは、光希ちゃんのスマホで間違いなさそうだった。
そこには親密そうな壬生センパイとのやり取りのほかに、寮の部屋で同室だという話の、神崎颯真らしき人物とのやり取りも残されていた。
神崎は高等部に上がったばかりの一年生ながら、俺達と同等規模の親衛隊を持ち、10月の学園祭の際に行われる予定の生徒会役員を決める人気投票で、確実に上位にくるだろうと噂されている人物だ。
次の生徒会入りは確実だろう。
俺はこの二人とのやり取りを全て目で追っていく。
これらを見る限り、光希ちゃんは壬生センパイのことも神崎のことも、この学園でどういう存在かまだよく理解できていないように感じた。
わかっていたら生徒会役員で親衛隊持ちの壬生センパイに手作り弁当を渡したりしないだろうし、神崎をパシリ扱いすることもないだろう。
これって親衛隊にバレたらかなりヤバいんじゃないのかな~?
愉しいことが起こりそうな予感を感じながら、次にアドレス一覧に登録されている連絡先を確認する。
──登録件数16件。
……少なっ!!
あまりの少なさに俺は思わず二度見してしまった。
少ない上に、ほとんどが家族、親戚関係にグループ分けされているもので、その中にはこの学園の理事長である、御堂圭吾という名前もあった。
やっぱりコネ入学だという話は本当だったようだ。
友達関係のグループは全員名前に見覚えがあることから、この学園の生徒だということがわかった。
勝手に見ちゃったついでに俺のアドレスも登録しておくことにする。
全ての登録を済ませたところで、ふと引っかかるものを感じて手を止めた。
……よく考えると、なんかコレおかしくない?
俺はもう一度、メッセージアプリを立ち上げる。
連絡先に登録されている数人とやり取りをした形跡があるが、それらは全て5月に入ってからのもので、それ以前のものは全く見当たらないのだ。
この学園に来る前に新規契約したのだとすれば、以前のやり取りがないことも頷けるのだが、それにしても以前の光希ちゃんを窺わせるようなものが、不自然なほどに消えている気がする。
この学園生徒以外の友達や知り合いが全く登録されていないって、どういうことだ……?
その時、突然入り口の扉が開いた。
スマホを手に持ったまま顔を上げてそちらを見ると、驚いた様子で固まっている光希ちゃんの姿があった。
待ちわびた人物の登場に、俺は自然と笑顔になってしまう。
──さあ、ゲーム再開だ。
正直、キミ自身にあんまり興味はないけど、これを見る限り色々と愉しませてもらえそうで嬉しいよ。
「光希ちゃん、みーつけた~!」
俺は内心ほくそ笑みながらも、いつもどおりの軽い口調でそう言ったのだった。
見事に避けられまくった俺達は、全く光希ちゃんと接触できずにいた。
そろそろ次のイベントである夏休み明けの体育祭の準備で忙しくなる時期だけに、さすがに何かしらアクションを起こさないと、初の『本人と全く接触しないままでのノーゲーム』になってしまう可能性もある。
俺としてはそれもそれでひとつの経験ってことでいいと思うけど、清雅あたりは絶対認めないだろう。
その証拠に清雅の機嫌は日々下降の一途を辿っている。
今までは、清雅が望めば大抵のことは叶えられてきたため、思い通りに事が進まない今の状況にイライラが募っているようだ。
そんなんだったら自分からアクション起こせばいいのに、と俺は思うんだけどね~。
絶対王者は自分のほうから求めていくなんてこと、考えもつかないらしい。
朔人にしても、本人が望めばいつも周りが動いてくれる傾向にあるため、似たような感じかと思っていたのだが、どうやら清雅よりは臨機応変に対応できる性格らしく、光希ちゃんと接触を図るための案外まともな案を提示してきた。
「先程、顧問の東條先生に、光希を生徒会役員補佐につけていただけるようお願いしてきました。」
生徒会役員補佐というのは、生徒会の仕事の手伝いをしてくれる人間のことで、生徒会役員が一般の生徒の中から必要に応じて任命できることになっている。
生徒会役員は人気があるため、お近づきになれるチャンスである役員補佐になりたがる人間は山ほどいる。
しかし、今までは生徒会役員補佐を任命するということは、深刻な人手不足を補うメリットよりも、生徒会役員以外の人間がここに出入りする煩わしさからくるデメリットのほうが圧倒的に大きかったため、何度も見送られてきた案件だった。
その権限を今、膠着状態のゲームのために使おうというのだ。
「仕事も手伝ってもらえますし、こちらからわざわざ探さなくとも毎日ここに本人が来てくれるのです。一石二鳥だと思いませんか? それに極端な話、ここでしか会えないのなら全員条件は一緒ということになりますよね?」
「朔ちゃん、あったまいいー!さっすが副会長!!」
朔人の采配に壱琉センパイがベタ褒めしている。
しかし、清雅は難しい表情を崩さない。
「東條先生からの許可はでたのか?」
「先生の許可はいただきました。しかし、一応本人に話はしてみると仰って下さいましたが、無理強いはできないと言われまして……。」
苦笑いした朔人に、清雅はため息を吐いた。
「……まあ、当然だろうな。」
ただでさえ俺達のゲームのターゲットに選ばれて風当たりがキツくなっているらしいのに、役員補佐になんかなったりしたら今以上の反発は必至だ。
光希ちゃんがこの話を受ける可能性は低いかもしれない。
「えぇ~!?それって清ちゃんの権限でどうにかならないの~?……っていうか、どうにかしてよぉ!ねぇ、清ちゃんってば、聞いてんの~?」
不満そうに清雅になんとかしろと迫る壱琉センパイに、それまで傍観者に徹していた壬生センパイが珍しく口を挟んできた。
「桜庭、いい加減にしろ。そもそも本人の意思を無視して勝手に話を進めるんじゃない。」
「本人に聞いたらダメって言うに決まってるじゃん。だからどうにかしてほしいっていってんのにぃ~。翔ちゃんの意地悪ぅ~。」
「これ以上、中里に迷惑をかけるんじゃない。」
「なになに~?みっきぃのことそんなに気にかけるなんて、翔ちゃんもホントは参加したくなっちゃったんじゃなぁい?」
腹黒そうな笑顔を浮かべてそう揶揄した壱琉センパイ対し、壬生センパイはそれを一瞥しただけだった。
俺はそのやり取りを見て、ある可能性に気付いてしまう。
もしかして、壬生センパイはこのゲームが気に入らないだけなのではなく、俺達が光希ちゃんと関わるのが気に入らないんじゃないのかな~、なんて。
今まで何度かゲームをしてきたけど、参加しないのはいつものこととしても、こんな風に口出ししてくることはなかったし。
そういえばココ最近、な~んか壬生センパイの様子がおかしい気がするんだよね~。
前は孤高の侍って感じで、近寄りがたい雰囲気醸し出してたのに、ここ最近、随分と柔らかい表情をするようになった。
一気に現代人に近付いた感じ。
今もスマホとか弄ってるしね~。
ずっと画面と向き合ってるから、何やってんのかな~ってさりげなく覗いてみたら。
……なんと!ゲームとかしてるし!!
こんなわかりやすく変わっちゃった壬生センパイ見たら、一体何があったのか興味が湧くに決まってる。
──他人の秘密を覗くのは愉しいよね~。
そう思ったのはどうやら俺だけじゃなかったらしく。
「ねぇ、翔ちゃんっていっつもお昼何やってんの~?僕たちと一緒に学食行かないしー。前に聞いた時、弓道部に練習しに行ってるって言ってたよねぇ?」
「……ああ」
「そうなんだぁ。弓道部の子に聞いたら水曜日は全体ミーティングだから道場使えないってきいたよー?」
壱琉センパイは時々、こういう天然なのか、計算なのかよく分からない鋭い指摘をすることがある。
今日は水曜日。
一体誰とどこで何してたんだか。
な~んか、秘密の匂いがプンプンするんですけど~。
「……水曜日は別の場所に行ってる」
はっきりと『どこ』と言わないのが余計怪しい。
「それってもしかして旧図書館ですか?」
朔人の質問に壬生センパイは僅かに表情を変えた。
「時々あそこの鍵がなくなっているので、そうかなと思ったのですが」
「そっかぁ!翔ちゃん本好きだもんね~。いっつも読んでるしー!納得~!!」
朔人はさりげなく、壱琉センパイは無邪気さを装ってるが、否定できないよう逃げ道を塞いでるようにしか思えない。
さすが腹黒二人。
壬生センパイは否定も肯定もしないけど、コレたぶんアタリだろ。
ふ~ん。旧図書館ね~。
確かあそこって校舎から離れたとこにあるし建物も古いから、誰も行かないし使わないんじゃなかったっけ~?
……隠れる場所としては最適だよね。
◇◆◇◆
──次の日。
俺は昼休みを待たずに旧図書館へと向かった。
一般の生徒がいないうちに移動しとかないと、誰かに見つかる可能性が高いからだ。
付いてこられても面倒だし、何より俺があそこに行くことがバレちゃ元も子もない。
俺は周りに他人がいないのを確認してから、中へと入っていった。
随分レトロな建物だが、結構手入れが行き届いているらしく、中に入ってもそれほど古ぼけた印象を受けない。
どこか適当な場所で目的の人物が来るのを待つことに決めた俺は、早速入り口からすぐのところにあるラウンジの椅子に座ることにした。
ところが。
俺が座ろうとした隣のテーブルに、無造作にスマホが置いてあるのを発見したのだ。
ここを利用している誰かの忘れ物であると確信した俺は、迷うことなくそれを手にとり、画面を確認した。
他人のスマホを勝手に見るのはいけないことだってわかってるけど、俺の知りたい秘密が目の前にあるかもしれないという誘惑には勝てなかった。
すぐにメッセージアプリを立ちあげて、表示されている相手の名前を確認する。
表示された名前と内容を見た途端、自然と口の端が上がっていった。
──ビンゴ!
思わずそう叫びたくなる。
まさに大当たりといっても過言じゃない。
今、俺の手の中にあるこれは、光希ちゃんのスマホで間違いなさそうだった。
そこには親密そうな壬生センパイとのやり取りのほかに、寮の部屋で同室だという話の、神崎颯真らしき人物とのやり取りも残されていた。
神崎は高等部に上がったばかりの一年生ながら、俺達と同等規模の親衛隊を持ち、10月の学園祭の際に行われる予定の生徒会役員を決める人気投票で、確実に上位にくるだろうと噂されている人物だ。
次の生徒会入りは確実だろう。
俺はこの二人とのやり取りを全て目で追っていく。
これらを見る限り、光希ちゃんは壬生センパイのことも神崎のことも、この学園でどういう存在かまだよく理解できていないように感じた。
わかっていたら生徒会役員で親衛隊持ちの壬生センパイに手作り弁当を渡したりしないだろうし、神崎をパシリ扱いすることもないだろう。
これって親衛隊にバレたらかなりヤバいんじゃないのかな~?
愉しいことが起こりそうな予感を感じながら、次にアドレス一覧に登録されている連絡先を確認する。
──登録件数16件。
……少なっ!!
あまりの少なさに俺は思わず二度見してしまった。
少ない上に、ほとんどが家族、親戚関係にグループ分けされているもので、その中にはこの学園の理事長である、御堂圭吾という名前もあった。
やっぱりコネ入学だという話は本当だったようだ。
友達関係のグループは全員名前に見覚えがあることから、この学園の生徒だということがわかった。
勝手に見ちゃったついでに俺のアドレスも登録しておくことにする。
全ての登録を済ませたところで、ふと引っかかるものを感じて手を止めた。
……よく考えると、なんかコレおかしくない?
俺はもう一度、メッセージアプリを立ち上げる。
連絡先に登録されている数人とやり取りをした形跡があるが、それらは全て5月に入ってからのもので、それ以前のものは全く見当たらないのだ。
この学園に来る前に新規契約したのだとすれば、以前のやり取りがないことも頷けるのだが、それにしても以前の光希ちゃんを窺わせるようなものが、不自然なほどに消えている気がする。
この学園生徒以外の友達や知り合いが全く登録されていないって、どういうことだ……?
その時、突然入り口の扉が開いた。
スマホを手に持ったまま顔を上げてそちらを見ると、驚いた様子で固まっている光希ちゃんの姿があった。
待ちわびた人物の登場に、俺は自然と笑顔になってしまう。
──さあ、ゲーム再開だ。
正直、キミ自身にあんまり興味はないけど、これを見る限り色々と愉しませてもらえそうで嬉しいよ。
「光希ちゃん、みーつけた~!」
俺は内心ほくそ笑みながらも、いつもどおりの軽い口調でそう言ったのだった。
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